2017年kotye大賞。「絵の酷さ」というたった一つの要素を武器に並み居るクソゲーを抑え優勝した本作だが、実際にプレイしてみると、ある意味独自路線の可能性を感じさせる作品でもあった。
パッケ、サンプルCGを見るだけでも分かるが2017年に商業メーカーが発売したものとは思えないような異次元の画力を誇る。いわゆる地雷エロゲーに認定される作品は、シナリオがつまらなかったり、システムが酷かったり、大量のバグがあったり、様々な理由があるが絵が酷い作品というのはあまりない。何故なら一番擬態しやすい部分であるから。絵の部分に金をかけて広報活動に精を出せば他がおざなりでもそれなりに売れるのがエロゲー業界。現実においても第一印象というものは重要であり、外見が良くなければ手に取ってもらえることすら少ない。
だから普通は中身が酷くても「絵」という要素においては妥協しない、それがエロゲーの商業戦略だ。
だがこの作品は違う。もう見ただけでやばいと分かる。そんな物を平然と流通に卸すこのメーカーは本気で凄いと思う。魔法少女アイ参みたいな詐欺まがいの売り方を敢行するメーカーも多い中、この男らしい販売戦略は賞賛に値するだろう。
当然、こんな凄い見た目の作品をkotyeが見逃すはずも無く、絵の酷さという一点特化で大賞獲得に至ったわけだ。
この作品の評判は前から聞いていたし、酷いCGの一部も事前に見ていたのでやる前からクソゲーとしての期待大だった。
というか催眠モノ、義母モノは自分の中でも苦手なジャンルの上位に入るので、クソゲー要素以外は微塵も期待していなかった。
あらすじ
幼い頃に母を亡くし数年後に父親が再婚したが、新しい母を嫌いなわけではないものの複雑な感情から「ママ」と呼べない主人公。そんなある日、テレビで催眠術特集の番組を見て興味を持つ主人公と義母。
この催眠術が2人の関係を変えることになるのか?
ヒロインは「義母」と「催眠術の講師」の2人。
義母のルートが4つ、催眠術の講師のルートは一つ。
義母はバスト98、催眠術の講師はバスト95だが義母が巨乳扱いで催眠術の講師は「テレビのアイドルみたいに胸はあまり大きくないけど」って主人公が言う場面があるが、どんだけ巨乳だらけの世界なんだろうか。
義母のルートは自分が催眠術をかけるか、義母にかけてもらうかで分岐しそこから更に細かい分岐がある。
パターンとしては主人公が責めるルートや、元々欲求不満の義母が覚醒し逆に責められるルートなど。
催眠術の講師は、サド性癖の元彼に耐えきれず主人公とHを交わすようになるが、主人公にサドプレイをやってもらうことで自分のマゾ性癖を自覚し、最終的に元彼のところに戻ることになる少し切ないエンド。
まあゲームとしては特筆する部分がない普通の催眠義母モノというところだろうか?他にこのジャンルの作品をやったことが無いし、そもそも専門外の分野なのでこれが普通なのか自分はよく分からないが少なくてもわけのわからない展開とかは無い。
強いて言えばボリュームがフルコンで2~3時間程度しか無いことだが、同じくらいの容量であるSEX戦争がフルプラであるのに対してこちらはミドルプライスだから容量の点でkotye選出となるレベルでも無い。
あとは義母の年齢が32歳で、主人公は10歳も年が違わないと公式サイトで言っていることから23歳以上のはずだが父親の長引く出張に対して「僕はまだ子供なのにずっと帰ってこないのはどうなの?」とか言っているのが笑いを誘うくらいか。わざわざ年齢表記ぼかしてるんだから10歳も違わないとか余計な表現入れなければ良いと思うのだがまあこれもそこまで強烈な要素でも無い。
上記の通り他の部分はまあ普通。
そして、問題の絵だが実際にプレイしてみるとこちらも意外と受け入れられた。
いや、確かに2017年の商業のレベルとしては全く標準に達していないし、クソ認定を受けるのは分かる。
だが視点を変えてプレイしてみると「個性的な絵」とも取れるのだ。
例えばこの絵が「よい子のための保健体育」みたいな題名の子供向けの性教育の本の挿絵だったら意外と違和感が無いと思う。
その手の教材本は当然エロさなど考慮していないわけだが、逆にそれがエロいと思う層もいるだろう。
実際、同人なんかでは「性教育」っぽい絵とシチュエーションを武器にしているサークルも存在する。
そっちの視点に立って考えるとこの作品は「性教育教材」的な雰囲気を前面に押し出していけばカルト的な人気を誇ったんじゃ無いかと思う。実際、性に無知な少年とHに積極的なお姉さんが登場しているわけだから催眠を別要素に置き換えれば独自の路線を走れるのではないだろうか?
まあエロゲー業界のグラフィックのレベルが高いからあえて絵の下手さを売りにするためには色々と工夫が必要なわけだが。
総評
最初見たときはこれはやばいとしか思わなかったけど実際にやってみるとこの絵は逆に生かせるのでは無いか?と可能性を感じた。
もちろん自分で言ってておかしい自覚はあるけどたまに出る掘り出し物を見つけるために毎日同人エロゲーをチェックしていることで許容範囲が広がったのかもしれない。同人業界ならこの作品の絵も平均レベルだし。
と、好意的に解釈してみたものの、義母と主人公が斜めに傾いているCGとか主人公の身体がペットボトルみたいにのっぺりしてるCGは流石に擁護できないレベルなのでkotye大賞を取るのは必然。
クソゲーとしては十分及第点。