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Manyさんの恋×シンアイ彼女の長文感想

ユーザー
Many
ゲーム
恋×シンアイ彼女
ブランド
Us:track
得点
70
参照数
3747

一言コメント

踏み込んで、踏み込まれること。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

それがこの作品のテーマだったんじゃないかと思います。



ネタバレを踏んでからプレイしました。
やり終えて、踏まなければ良かったと思いました。


プレイ前、炎上するのを見ながら「星奏って奴はなんて酷い女だ」と思いました。
この世で一番恐ろしい、作りものでない、
男を振り回すためだけに存在する真正の天然女に見えたからです。

-初恋にいつまでも固執し続けるテンプレ主人公と-
-中途半端な罪悪感で創作の源泉を手放したバカヒロインの話-

なんて結論を出して、一生積んどくか手放そうとも思いました。
けど何かが気になって、結局発売日から一週間後にやり始めました。

プレイ後、ネットが怖くなりました。
未プレイ擁護が大概だったのは知っている、でも未プレイ批判も随分なものだったんだなって。
プレイした人達が怒るのは分かります。
そしてこのゲームに何を期待していたかも。
そもそも、どんな事情があろうとヒロインと離別するのが許せない人だっています。
でも燃やしたかっただけの人達はなんだったのかなって。
それを純粋に面白がることを、悪意と呼ぶのかな、なんて思ったりもしました。



姫野星奏の気持ちは、森野精華がきちんと言葉にしてくれていた。

國見洸太郎はとにかく間違え続けていて、それでも最後にはちゃんと星奏の気持ちを思う事が出来た。



最後まで飛ばさずにプレイして、その辺を考えられる事が出来たら
もう少し楽しめたって言える人もいたんじゃないかなって。
少なくともプレイ後の俺は、星奏をただの天然とは言えなくなってます。
ただ分かりやすいハッピーエンドを求めてた人達にとっては、やっぱり地雷と呼べるのかも知れません。
星奏の心理描写を殺いだ結果、NTRの声が上がるのも分かりますし、
というかそれを考えられる余地のあるシナリオの時点で地雷でしょうしね。

それだけに惜しい。
音楽、原画、塗り、背景、声優(洸太郎除く)が高いクオリティなので余計に。
何から何まで惜しい作品でした。












以下、√・キャラ毎の感想等(攻略順)



凜香√

会長はかわいい!(CV:近藤隆)そして車の人に「ふぇぇ」と言わせた功績は大きい。
それだけの√です。

伝えたいことは解るんですが、色んなもの詰め込もうとして、どれもが中途半端になって、
読み物として壊滅的に平坦で面白くない。
掘り下げも甘いので、キャラゲーとも言えない。
でも凜香マジかわいい。何このいきもの。
そうそう共通の選択肢ですが「先輩がそういうなら」の後のやりとりは良かったですね。星奏と彩音の反応が。

ところでSOKと聞いてSlave Of Kajyabeさんを連想したのは俺だけでしょうか。




ゆい√

ゆいはかわいい。なるほど大天使と呼ばれるだけのことはある。あと三島。
正直CV見た時「そよそよにこの頭身のロリキャラは…無理が」なんて思った俺は死んで良い。
ドピュ姉さん素敵でした。
つーか背徳感やばい。この子ちいさすぎる。
絵柄のせいも相俟って、そこらのロリゲーより何かすごい。

この√は大して不満もない分、大して満たされることもなかった。




彩音√

彩音はかわいい。間違いなくかわいい。
ただ俺にとってこの子は、どうにも捉えづらいというか。
どうしても中学時代、再開直後、他√、個別の彼女が同じ人に思えなかった。違和感がずっと続く感じ。
なんでかな。たまにちぐはぐなものを感じるというか…説明が難しい。

確かに好きな音楽もずっと聴き続ければ飽きてしまうし、好きな人に対しても同じなのかもしれない。
洸太郎「それでも聴かずにはいられないじゃないか」→彩音「はい(////」

ちょれえええええええええええええええ

というシーンがいくつもあって、そこら辺は良かったですね。かわいい。
ただ4章から、特に初エッチ前辺りからシナリオの失速が凄まじいです。
ご都合主義どうこうという問題ではない気がします、最早。
ラブホ作戦会議とか、良い所もあったんですけどねぇ。

そしてエッチシーンのテキストはこの√が一番酷いです。
事前にエロ薄いとは言われていたし、多分文字数制限もあったんでしょうが、
AV鵜呑みにした男子高校生みたいな文章でした。こんなもんで昂れるか。

アレですかねラストで歌うのは合唱祭とかけてたんですかねって無ぇよ!
星奏√で星奏を歌わせるための穴埋めに用意されたラストにしか思えなかったです。
この√で一番好きな台詞は「うちにもすごい台風来てた!!!」




星奏√・終章

本当プレイ前はフルボッコにするはずだったんですがね…あ、星奏かわいいです。普通にイチイチかわいい。
まぁ、上で書いた事が全てです。精華ちゃんが全部言ってくれてると思います。
逆に言うと精華ちゃんはその為の装置だった訳ですが。

プレイ後の今では、星奏を嫌いになれないと言ってた人の気持ちが分かります。寧ろ俺も好きです。
成人後のエッチで洸太郎くんとだけしかしてないしたくない云々は
リアルに置き換えるとちょっとモヤっとするものがありますが、
まぁファンタジーなので都合よく飲み込みました。

しかし結局は似たものカップルが踏み込まず踏み込ませなかったから、離別したんですよねー。
と文字にしてしまうと別の物…くだらないものに見えてきそうですが。
良かったですよ、このシナリオ。
泣かなかったし、感動した!と言い切れはしないけれど、良かったです。
寧ろこの√がないと締りの悪いものになってたんじゃないでしょうか。
ただラストシーン、考え方によっては二人とも死んでんじゃねぇかって気がしなくも…いやこれはファンタジー。

星の音って、「星奏の音」ってだけでただのインスピレーションですよね?




洸太郎

お前は「じゃぁね」言うな気持ち悪いわ!

星奏と洸太郎は本当に似ていたんですね。
自分を冷たいと評して、それでも互いがいる限り、思える限りはそうではないものでいられた。
不器用で、間違え続けて、ままならなくて、だけどそれでも。
そんな人間でした。

「互いがぼんやりとした気持ちを共有し合って二人で一緒にいる。そういう形が、俺には大事に思えた」
そんな耳心地の良い言葉に甘えて、踏み込むことをしなかった。
それが二度目の離別をあんな形で迎えてしまった要因だと思います。

終章のボイスですが、読み手を第3者にしたかったんじゃないですかね。
洸太郎に、星奏に感情移入・自己投影するのではなく、一歩引いた位置から見える様に。
でも「このゲームの一番のクソは唐突な主人公ボイスだ!」という方の気持ちもわかります。
そりゃあ今まで自分=洸太郎だったのに他人の声付けられたら、
二次元への恋も醒めるし、第3者に成らざるを得ないと思います。

でもこれ、洸太郎を好きになれなかった人には、拷問でしかないんですよね。
自分の分身と思ってた人間が、
わざわざクソ女に振り回されに行くって図式を変えられない人にとっては、特に。

あと声優さんのモブ感が凄かったです。どっかでモブ演じてるの聞いたからかな。
エロは声出して笑った。




奈津子

妙なアプローチをせず、まっすぐ気持ちをぶつけた√が読みたいですねぇ。
大人奈津子さん素敵です。




愛美

正直しまりのさん出過ぎなんで食傷気味かと思いましたがアラこれは良いしまりのさん。
このトーンの声は聴き心地が良いなぁ。




志乃

ボール遊びでもしてたんですかねぇ。




菜子

かわいいおぶかわいい。とにかくかわいい。
俺は秋野花さんが大好きで、彼女がCVの妹キャラを何人か攻略したことがありますが、
その中でもトップクラスにかわいいです。
√があれば嬉しい。でも√なしで妹として愛でるだけに留めておきたい。
そんな気持ちが共存してしまうくらい好きです。
現実で近所のスーパーへ夕飯の食材を買い出しに行く時、
右隣に幻想が見えてしまうくらい好あぁこれ病気だわ俺。
でも時々私服がパジャマに見えちゃって、そんな格好で出かけるもんだから、お兄ちゃん心配。

雷の日に一緒の部屋で寝たがる妹。
初恋がお兄ちゃんの妹「そんな目で見んといて」。
短期留学中お兄ちゃんと会えなくて寂しがる妹。
(私だけ変な空気出してたと?)と赤らむ妹。

ホントかわいいなこいつ。
同時に花さんの作品毎の微妙な演じ分けには脱帽。




精華

みたかりんさんだと思ったら違ったよ。でも彼女も出演してた。わーい。どうでもいい。
星奏の為の装置だと思うとモヤっとしますが、この子もかわいいんですよねぇ。
立ち絵は指咥えてるように見えます。甘えんぼだなぁ。

彼女が國見せんせーを好きになったのも神秘的だからかなぁ。
√欲しいけど終章をBADENDにしないとできないよねぇ。






その他もろもろダラダラと


どこかで「このゲームには負け組しかいない」という言葉を見ましたが、その通りですね。
どうにもならないことは、結局どの√でもどうにもならなかった。
選挙には敗れるし、花壇は壊されるし、恋に敗れると夢は諦めるし。なっこは必ず食中毒。
実際、星奏は他√では転校せずに3年までいることもありますしね。
凜香・ゆい、彩音・星奏の随所の対比は良かったです。

一番みんなが幸せになれたのはどの√だったんでしょうか。




シナリオは、考える余地のあったことが良くも悪くもあって、
今回は悪い方に捉えやすかったのかもしれないですね。
でも酷さで言えば彩音・凜香√の方が上じゃないでしょうか。
星奏√・終章はまだ纏まってましたけど、あの2√はもう…。

まぁその2√についても、
・同人にも劣るマインの1作品
・とある派生の名前呼んでくれるだけのゲーム(コンプめんどい)
・ヤキモチを間違った方向に拗らせたゲーム
という俺にとって最高のクソゲーよりは随分マシでしたけども。

ただ全体通して言えるのは、掘り下げや描写が足りなさすぎます。
大事な所で濁したり端折ったりすることが多すぎた。
それは雰囲気を大事にするために削ったとも取れるし、ライターに描く力量がなかったとも思えます。
どちらにしろ中途半端で、やっぱり惜しいです。




本当にキャラは文句なしに良かったんですよね。
かわいさも水準以上だと思います。水準ってなんだろう。
だからこそ、もう少しイチャラブ度合いを上げても良かったのかなって。
あんまり濃くしても雰囲気崩れるし難しいなとは思うんですが。




「終章はリアルで良い」→「リアルでそんな女としか付き合ってねぇのかよwww」
って声を見ましたが、

 突然音信不通になる(居場所も解らない)
→しつこく連絡した結果「ごめんなさい、別れて」ってメールが来る
→風の噂だと遠い町で男と一緒らしい
→暫く経って「貴方のこと嫌いになれるわけないじゃない」(多分男と破局したから)とか言って擦り寄ってくる
という女が居ましてですね。

僕の場合、一旦受け入れたふりをして、後日「君じゃない人と結婚するんだ」って言ってやった結果
それ以来連絡が来なくなりまして。向こうにダメージがあったかは解らないので、
これを撃退と言っていいか微妙な所ですが。
世の中には、そんな女、結構いるんですよ。

後、よく見る文句で「彼女も作れない童貞エロゲマはこれだからwwww」みたいな煽り?がありますけど。
エロゲやってようが彼女できる奴はできるし、できない奴はできない。
そんだけのことだと思います。




新島夕だから察しろ~ってのは違うと思います。
エロゲやってる誰もが新島さんのことを知ってるわけではありません。
俺もエロゲ歴はそこそこですが、はつゆきも魔女こいも手を付けませんでした。
「ライターが誰か調べない方が悪い」 なるほど。知らないことは罪って奴ですかね。

では、それほど新島さんが好きなのに未プレイの皆さんは、なぜこの作品を買わなかったのでしょう。
・・・新島さんが参加してる事を知らなかったんですよね。
また、知ってて買わなかった方もいらっしゃいますよね。
後者は何故でしょう。
「複数ライターだし雰囲気ゲーもしくはキャラゲーっぽくて自分には合いそうにない」
と思ったからじゃないんですか。
コンセプトやその他前情報を見て購入しなかった人達が、
「コンセプト真に受けて買う方がおかしいwwww」と嗤う。
性格悪いですねー。

そういえば、シリアスを毛嫌う萌え豚のせいでシナリオが~って話がありますが。
俺みたいにリアルでクソ女にしか当たらないせいで、
ストレスのないエロゲを求めるってパターンもあるんですよ。それは悪い事なんですかね。
むしろ問題なのは、面白いシリアスを入れ込めないことなんじゃないでしょうか。
どちらかというと「シリアス全般が不快」ではなく、
「つまんないシリアス入れるくらいなら、もっとイチャラブしろよ」って事では。





若干飽き始めてる声優さんが何人かいたんですが、
新たな魅力を発見できるゲームでした。素晴らしいです。
配役もそうだし、ディレクションや擦り合わせ次第でこんなに変わるものなんですかね。
何にせよ、みなさん良い演技でした。




音楽NTRって言葉は面白いですけど、
この考察の場合、音楽が本命だったんだから寧ろただのうわry




ふむ、なんだか無駄に長く書いてしまった。
まぁそれだけ思う事があったという事で。

口でも文字でも上手く伝えられない、
こんな俺の言葉を最後まで読んでくれた方がもしもいたなら、ありがとう。