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KetTさんのスクイの小夜曲の長文感想

ユーザー
KetT
ゲーム
スクイの小夜曲
ブランド
バグシステム
得点
73
参照数
60

一言コメント

心情描写の巧みさは◎。ともすれば本当に胸糞悪くなるほど良く出来てるけれど、だからこそこのお話で何を見せたかったのかは少し疑問が残る。絵がキレイでエロシーンが嗜好に合致したのでそちらの満足度はなかなか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

バグシステムさんは初プレイとなりました。本作は『スクイの小夜曲』。
『にくにく』で有名なメーカーさんという印象もありますが、そちらもいずれプレイしたいと思っているので個人的には長いお付き合いになりそうです。
さて、本作の感想ですが。。。思ったよりしんどいプレイ感でした。
理不尽で執拗に追い込む凌辱描写が続く上に、キャラクターの心情描写が巧みなので入り込み過ぎると結構心理的ストレスがかかる。
更にそんな展開の割にヒロイン達の心の切り替えと割り切りがとても早く、決着もまたあっさりなので見てるこちらが逆にモヤモヤする始末…全体的にもう少しカタルシスがあればなというところ。
また、前半と後半で質が変わるストーリーを矛盾なく納めようとした結果、作品のスケール感が小さくなってしまったのは残念。どこの視点で描き切るのかはっきりさせ、もう少し思い切った舵取りをしていた方がこの作品は輝いたように思います。
絵がキレイで陰毛描写や排泄描写があるのは良点。プレイのきっかけがそれ目当てだったので、ここはとてもよかったです(意味深)。
総じてまずまずではあるものの、「作風の割には強烈に尖ったところがないのが短所」という惜しい作品。


・ストーリーについて
導入からは『理不尽な暴力にあった女の子が代償を得て復讐する話』。。。に見えるのですが、ストーリー一本を通して見ると「何を一番見せたかったのか」はふわっとしてしまっていた印象。
女の子の復讐劇ならそれぞれ決着があっさりし過ぎているし、小夜たちの事情に軸を置くなら彼女らの目的が小さ過ぎる。どこの事情にフォーカスしてお話を描きたいのかが掴みづらく、「この話どう着地するんだろう…?」という不安は最後まで付きまとった。
心情描写がかなり丁寧なのは◎。ヒロインが凌辱される描写は良く出来ているので、個人的にはもうちょっとカタルシスをつけてそこを膨らませてくれていたなら。
もしかしたら、思いっきり伝奇の不気味さに振り切って毒のある展開に終始した方が本作にとっては良かったかもしれない。歌音覚醒ルートラストの愛衣佳のように、トゥルーも次代女王候補は実は歌音として絶望の含みを持たせても面白かった。ヒロイン達に中途半端に救いを与えたことや元凶の存在意義の小ささが、結果的にお話をぼやけさせてしまったのではないかと思います。
人間ではない異質な存在や異能パワーが出てくるファンタジー展開ですが、小夜周りの疑問に一応矛盾なく一通り決着をつけている点は褒めるべきでしょうか。
それなりに良い部分はあるものの一本のパッケージとしては残念ながら力不足。おそらく、女の子がひどい目に遭うというテーマだけで進行した企画だったのではないかなという印象を受けました。

・キャラについて
お話が結構胸糞悪いので、しっかりと演技力のあるキャストを当てたのは◎。終始没入度は高かった。
個人的には律が好きでした。ちょっと男勝りな強気っ子はもう居るだけでえっちです。(偏見)
ストーリー的な分類では、詠と律が導入、それを受けて歌音と愛衣佳が巻き込まれていくという二段階の構成。前半二人と後半二人でお話の指向性も変わってくることから「なんか期待したのと違うな…」と感じたユーザーもいたのではないでしょうか。
凌辱展開において、前半二人がかなり執拗で丁寧だった割に後半二人は雑だったのも×。前項で書いたことにも通じますが、ただひどい目に遭わせればいいというのではなく、一貫したシチュエーションを大切にして欲しかった。それこそが本作を手に取るユーザーの最も望んだ展開だったのではないかと思います。

・エロについて
この絵柄で陰毛描いてトイレシーンまで用意してくれるとか神か?


ということで、なんかこじんまりとしてしまった作品という総評。
描写が丁寧で悪くないだけに作風をガッと振り切って欲しかった。キレイにまとめようとし過ぎて、結果小物凡作…という印象に着地した勿体ない作品。
冒頭書いたように、本メーカー作の別タイトルにも興味があり、いつになるかはわかりませんがプレイを予定しています。
しばらく足跡を追っていくメーカーさんとなりそうですが、、、本原画家さんでもう一本作ってもらえないでしょうか?お願いしますバグシステムさん!