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KYさんのAngelRing ~エンジェルリング~の長文感想

ユーザー
KY
ゲーム
AngelRing ~エンジェルリング~
ブランド
MOONSTONE
得点
82
参照数
2898

一言コメント

たまにはオーソドックスな萌えゲーがやりたいと思っている貴方にオススメ。ただ、一部人によっては地雷なルートもあるので注意

長文感想

純粋な萌えゲーの中でも久々に高評価に出来る作品です。
シナリオが特に凄い!って訳でも無いのですが、
展開がハッキリとしている上に重い場面はできるだけ短くして纏めています。
そういう所で萎えること無く進められたのが高評価。
これが萌える場面の多い理由になっているのでしょうね。


少し話が逸れますが、最近はオリジナリティを出す為なのか背伸びしているだけなのか
無駄に設定を掘り進めてシナリオを良くしようとしてる萌えゲーが多いように思います。
萌えゲーなのだからプレイヤーを萌えさせる事を念頭に置いて話を作るべきなのに、
わざわざ重い展開を持ってくるから萌えられないんじゃないかなぁ…

もちろんシリアスの中に萌える場面を入れる事の出来る展開もあるけど、
萌えに繋がらないシリアスをやけに長引かせるのはいかがなものか。

やっぱ萌えゲーなんだから萌えないとね。


さて、話を元に戻して共通について。

基本的にヒロインを選んで進めて行くタイプのため、純粋な共通ってのは少なかったかな。
それにしたって短いのですが、そのおかげでダレる事なく進めた、とも言えます。
加えてスキップが早い為、2周目以降も退屈な作業は少なくて済みました。

共通ではあまり力が無いと言っている主人公がお姫様抱っこしながら追手から逃げたり
ヒロインが一度行った事ある場所で「初めて来ました」と言ったりと矛盾がかなり目立つので、
それらを慈愛の精神で受け流すスキルは持っている方が良いかもしれません(笑
またパロディネタが多いので苦手な人は敬遠するべきかな。


主人公はモテモテタイプ、ルートによって微妙にヘタれたりカッコ良かったり。
多少作られた「やる時はやる」感を感じますが、まぁ許容範囲かな。
問題は愛天使で、呉氏の担当したルートでは酷い扱われ様です。
佐奈ルートのミカには殺意すら抱く人もいるんじゃ…
内容はともかくキャラが不快という一点において明らかに地雷なルートなので、
初めにやってGiveUpしている方は是非他のルートをやって頂ければと思います…


以下、個別感想。
多少ネタバレが入っているので、完全にまっさらな状態でプレイしたい人は回避推奨です。

基本的に王道から大きく外れた展開は少なく、それ故に
先の分かる展開は嫌だ、という方には向いていないかもしれません。

エロは佐奈6、美鶴・澄佳・ミカ4、ルキア・梓2となっています。

評価はA~E、Cが可も不可も無く、という所。
ただ、今作は重すぎないシナリオが逆に良い、という思いも含めて
ちゃんと纏まってさえいればBという評価を付ける事も多かったですね。


☆美鶴ルート シナリオB+(前半A、後半C+) キャラB+

二人の恋愛観念の違い→お嬢様との恋に付きものの障害と
大きく2つに分かれた構成。

前半はエロゲで中々お目にかかる事のないテーマで新鮮でした。
主人公が美鶴に本音をぶつけるシーンは今作屈指の名場面。
主人公の「それ、俺じゃないよ」は一番の名言ではないでしょうか。

後半はありがちな展開に少しだけご都合主義な解決。
残念ながら前半ほどのインパクトはありませんが、締めは綺麗だったと思います。


☆澄佳ルート シナリオB+ キャラB

途中面白くない方向に行くんじゃないかとハラハラさせられましたが、
それも杞憂に終わり一安心。

主人公のオタク設定が深く関わる内容です。
澄佳と佐奈の想いが交錯する場面もまた今作の名場面だと思います。
それぞれの心情がきちんと描かれており高評価。

…というか、シナリオが良いルートから先に選んでしまった事が悔やまれますorz


☆梓ルート シナリオB(長さを考えるとC) キャラB+

梓とルキアのルートは尺が短めで、その分手堅く纏まっています。
こちらは特にシリアスも無く、単純に友人から恋人へ、という展開。

その過程が多少強引というか上手く描ききれていない感じはありますが、
友情発恋人行が好きな人には十分萌えられるのでは?


☆ルキアルート シナリオB+(長さを考えるとC+) キャラA

なんでこんなに萌えるの…?
ヒロイン視点で恋心を独白する手法の破壊力はどの作品でも抜群ですね。

これだけ萌えるなら他のキャラや作品でもじゃんじゃん使って欲しいのですが、
やはり使われすぎると慣れてしまって効果が無くなってしまうのかな。

シナリオのシリアスがそのままキャラの魅力に繋がるタイプの話です。
短さが+に働き、とにかく萌えて萌えて萌え尽きて終了。素晴らしい…
エピローグの纏めと爽やかな読了感も◎。


☆ミカルート シナリオC キャラC

呉氏のシナリオはどこかハラハラさせられる所があります。
澄佳ルートはそれが良い方向に働いていたのですが…

このルートはミカの行動が大げさ過ぎて納得行かない部分が多いかな。
他に担当した佐奈ルートでもミカに酷い役回りをさせているし、
氏は何かミカに恨みでもあるんでしょうか…

また、愛天使の設定はどのルートでも案外いい加減なので
そこはあまり深く考えないように(汗


☆佐奈ルート シナリオD キャラB+

兄妹での恋愛というタブーについてが一貫してのテーマですが、
互いに恋愛感情を伝える場面を境に前半、後半と分けられるでしょう。

問題はやはり前半のミカの思想と行動ですね。
道ならぬ恋に悩む主人公がミカの暴走を黙認していたのはまだ理解できますが、
ミカの「道ならぬ恋でなければ誰でもいい」的思想はそりゃ誰もがムカつくでしょう(汗

基本的に兄妹での恋愛を真剣に描くと重くなるので、
その時点で好き嫌いの分かれるルートだと思われます。

ただ佐奈の魅力については「ガチ。」と言わざるを得ないので、
そこらへんお勧めと言えるのか言えないのか悩む所…
少なくとも最初や最後にするのは避けるべきでしょうね。


という訳で、呉氏のルートは人によっては面白くない展開が多いのではないでしょうか。
その辺りを良く吟味したうえで攻略順を考える事をお勧めします。
しかし、それを考慮しても萌えゲーとしてはかなり成功している作品だと思います。
純粋な「萌え(られる)ゲー」を求める方、是非手に取ってみては如何でしょうか?