ErogameScape -エロゲー批評空間-

Fatmanさんの共有妻、美乃利 ~隣の部屋で抱かれている愛する妻~の長文感想

ユーザー
Fatman
ゲーム
共有妻、美乃利 ~隣の部屋で抱かれている愛する妻~
ブランド
アトリエさくら Team.NTR
得点
65
参照数
3110

一言コメント

おー、マジかマジか。普通に良かったわ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

いやねー、最初、本作のあらすじと登場人物を見た時は「まーた過去作と似たような設定か
よ~(主人公、ヒロイン、間男の共同生活スワップNTR的な)」と思って、正直あんま期待
してなかったのよ。んでも、今回はその構造的類似性(マンネリ感)をヨユーで上回るくら
い、話とNTRエロの展開が良くてたまげた。おんぼろゲー以外では久々の当たりで、素直に
オススメでけるよ。

まず話の部分については、あれだ、映画や小説とかでもたまに見る、“戦地から復員したら
なにかの手違いで自分はすでに死んだことになっていて、将来を誓い合っていた許嫁が別
の男の元に嫁いでいた~”的な物語の現代版。海外で大事故に遭った主人公が紆余曲折(事
故のせいで記憶喪失になる等)を経て2年後に帰国すると、そこで彼はすでに亡くなったと
思われていて、新たな人生を歩み始めていた妻と親友の男がくっついていたという。んで、
本作は登場人物の言動が自然というか至極真っ当に描写されているところもポイントで
――エロゲ的なブッ飛び思考やありえねー展開は存在せず――、主人公が帰国したことで
親友の男は自ら身を引き妻との同棲を解消したり、妻も親友の男を愛し始めていたものの
関係をきっぱり絶って後遺症の残る主人公を献身的に介護し始めたりして、それらの現実的
で説得力のあるキャラ描写がドラマ性の向上に大きく寄与していた。そして、そんな中で主
人公はある違和感から自身が不在だった間のふたりのただならぬ関係に気づき、「何年も妻
に辛い思いをさせ今も負担をかけ続けている自分は邪魔な存在なのではないか」「自分がい
ない方がふたりは幸せになれたのではないか」等々の思いに苛まれていく。この辺の心情描
写も結構丁寧に描かれていくので、感情移入しづらいとかそういうのもとくになかった。そ
こから主人公は自身が身を引くことで妻と親友の男をくっつけようとし始めるのだけれど、
もちろんふたりが「はい、そーですか、分かりました」と素直に受け入れるはずもなく……
(常識のある人たちなので馬鹿なことを言うなと普通に怒る)。で、ここが本作の一番面白い
ところ。主人公は今すぐ親友を選べないのならしばらく3人で生活をして、どちらが夫に相応
しいか選んでほしいと妻に提案。彼女(と親友)は渋々その提案を受け入れ、妻と夫候補2人
の奇妙な共同生活が始まることに。寝取られの主体というか生殺与奪権を譲り渡すという
か、“妻の意思”のみが絶対の基準になった瞬間。つまり、この先発生するであろうエロ(親友
とのSEX)もすべて妻が望んだ、妻主導のガチ浮気(妻からすれば本気SEX)になるってこと
よ。いやー、上手い。マンネリな設定も今回はちゃんとNTRに活かされていて、導入の時点か
らなかなかにドキドキさせられましたわ。

んで、この共同生活は妻が夫に相応しい男を選ぶためのものなので、彼女は日替わりで主人
公の寝室と親友の寝室を行き来することに。けれど、ここでも親友はすぐにSEXをおっ始め
たりはせず、何か月も妻に手を出さない(この男は本当にまともな人間なので、妻への想い
はあるものの主人公がいる以上、手を出すわけにはいかないと自制し続ける)。一方、主人
公は主人公で「妻は自分といるより親友と一緒になった方が幸せになれる」という思いをよ
り強くしており、あえて残業で帰宅を遅らせたり親友に塩を送るようなことをしたりして
日々を過ごしていく。なので話としては結構、寝取らせに近いものがありますな。そして、
その甲斐あってふたりは主人公の前でも遠慮せず普通に打ち解けた姿を見せるようになり、
ついに彼は衝撃の光景を目の当たりにしてしまう。ここからは怒濤のエロ展開に突入して
いくわけだけれども、本作のエロは大半が覗きシチュ――妻が入った親友の寝室の中で起
きる出来事を、毎回、扉の隙間から覗き見ていく感じ。NTR好きなら覗きシチュ特化ってだ
けでかなりクると思うけど、「ほら、こんなになってる……上からでもわかるくらい」「ねえ、
このまま脱いで。おちんちん出して」などと言って、理性と欲望の狭間で揺れる親友を煽り
性行為へと誘っていく妻の姿がクソエロだった(今までずっと自分を支えてくれていた献
身的な妻が、っていうギャップも興奮に繋がっていた)。で、もうひとつ本作には上手いと
ころがあるんよ。主人公の望みが妻と親友をくっつけることってなると、妻への愛情や執着
心が希薄になりイコール寝取られてもあんま悔しくないって普通ならなってしまうところ、
本作では覗き見をするごとに逆にそれが高まっていくようになってるんよ。要するに最初
は妻と親友が結ばれることが最良だと思っていたけれど、ふたりの行為を見続けることで
彼女を失いたくないという、今さらで惨めで情けない思いが主人公の中でどんどん膨れ上
がっていくの。その主人公の心情変化も巧みに描写されているので、話が進んでふたりが親
密になればなるほど寝取られ感も増大。後半の主人公とのエロに関しても、すがり同情SEX
やお情け手コキなどよく心得ておる。取り返しのつかない感が、じつにM心を擽ってくれる。
この設定からよくこんな仕組み考えたなってちょっと感心しちゃった。

ただ、ここまで褒めまくってきたけどダメな部分もそこそこあった。まずその最たるとこが
肝心要の覗きエロでいつも同じ場所から覗いているにも関わらず、CGの構図が右からだっ
たり左からだったり正面からだったり毎回バラバラ。イマジナリーラインを無視した出来
の悪い漫画を読んでいるような気分にさせられる。今回の内容なら普通に全部、扉の隙間か
らの固定カメラでよかったと思うけど、なんでそうしなかったんだろ、謎。そいでもうひと
つが、共同生活が始まってからの日常描写で「何か月か一緒に過ごして打ち解けた」と簡単
に説明するだけではなく、例えば妻の料理のレパートリーが知らぬ間に増えていたり(親友
の好物を作るようになっていたり)、服装や下着の趣味が変わり始めたり(つかNOSA氏が描
く女の服装がダサすぎてもうちっとなんとかならんかな。キャラ絵自体は毎回向上してい
て今回も今までで一番良かったけれど、ヒロインの服装がいつも酷い。魅力を損なっている
よ)、そういった具体的な日常での変化を盛り込んでほしかった。そこがしっかり描けてい
れば、エロシーンの興奮度もより一層上がってただろうなーって。もったいない、もったい
ない。

まあでも満足ですよ。今後もこのレベルの作品をコンスタントに出せれば、さくらのもうひ
とつの柱になれると思う。あとは以前の感想でも何度も言っているけれど、共同生活的なヤ
ツばかりではなくもっといろんなNTRが見たいなと。中森氏はアパタイトだとヤリサーNTR
とかもやってるし、引き出しがなくて書けないってワケじゃないっしょ。がんばれ~。