ErogameScape -エロゲー批評空間-

Fatmanさんの今夜、妻が父に抱かれます…の長文感想

ユーザー
Fatman
ゲーム
今夜、妻が父に抱かれます…
ブランド
Nomad
得点
75
参照数
4194

一言コメント

いろいろと微妙なとこはあるけど、自分はこの作品が好きッス

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

確かに、粗は沢山あるんだ。まず、妻との純愛H&義妹との浮気Hにエロシーンの半分を
割り当てるというNTRゲーとしてのバランスが良くない。本作の購入者は寝取られエロで
チンシコしたくてプレイしているわけで、なんつーか……話に起伏を持たせるスパイス的
な感じで1、2コそういったシーンが挟まれるくらいなら全然問題ないと思うんだけど、全
体の半分が寝取られと直接関係のないエロってのはちとやり過ぎでしょ。「これ何のゲーム
だ?」ってなっちゃう。次に主人公のキャラ。前作『淫烙の巫女NTR2』よりは若干マシ
になってはいるものの、相変わらず情緒不安定&オーバーリアクション過ぎて、こんなヤ
ツが身内にいたら強制的に病院送りだろって思う。他にも、立ち絵が初期からずっと使い
回しでいい加減描き直して欲しいし(回を重ねるごとに原画家の腕が上がっていて、立ち
絵と一枚絵で相当差が出て来ちゃってる)、エロ以外のどうでもいいシーンでCGを無駄遣
いし過ぎなのもアレ。それと、序盤の純愛パートで大学進学のため、健(主人公)より1年
早く上京した遥(ヒロイン)にイケメン先輩との浮気疑惑が持ち上がるというドキバク展
開があるんだけど、それを主人公の誤解で片づけてしまったのもクッソもったいなかった
(それもカフェかなんかで遥と先輩が逢い引きしてる風のCGまで用意しといて。ありえ
んだろ!!)。個人的には、義妹との浮気ルートなんかよりも先輩にかっさらわれるルートを
入れた方が、NTRゲーとしてはよっぽど映えたと思うよ。

でもね、そんな粗だらけの本作だけど、遥が健の父・剛蔵との不倫にハマっていく正ルー
ト?の流れは本当に良かった。まさに自分が理想とする寝取られ劇でした。遥と結婚して
幸せな夫婦生活を送る健。しかし、そんな日々の中、遥の言動に妙な違和感を覚え始めた
彼は彼女の不貞を疑い始めていくことに。話の展開自体は『淫烙の巫女NTR2』と似てい
て、浮上する疑惑の数々は健の思い過ごしとして、もしくは遥の口から直接否定され、夫
婦愛やふたりの強い結びつきといったものを再確認していくような物語が綴られていきま
す。んで、『淫烙の巫女NTR2』の場合はその後、最後の最後まで健のひとり相撲で遥にや
ましいところは一切なかったせいで、「ねぇねぇNTRゲーだと思った? ザンネーン、純
愛ゲーでしたww」と寝取られファンを小バカにしているような酷い内容になっていたん
ですが、本作は違いました。そんな疑惑と愛の再確認の日々が1年ほど続いたあと、唐突
に遥から浮気の事実を告白されるのです(夫を裏切り続ける罪悪感に耐えきれなくなった
ことが告白した理由)。そこからの展開がねー、もう大興奮じゃった。つまりですよ、遥は
1年もの間、健の前では浮気をしてる素振りなんて一切見せず、平気な顔で、ウソを吐き続
けてきたってこと(事あるごとに、健に好きだ、愛してるだ何だとのたまいながら。くぅ
~たまらんぜ)。例えば、疑惑のひとつに夫の健に見せたことがないセクシーランジェリー
を遥が所持していたってのがあって、それを問いただした時も彼女は「健さんに喜んでも
らいたくてこっそり買ったんですが、恥ずかしくて見せられなかったんです」とか何とか
言うんだけど、あとに大ウソだったことが判明します。そのランジェリーは、本当は剛蔵
を喜ばせるために所持していたもので、予期せず夫に見つけられてしまい咄嗟に口からデ
マカセを吐いてしまったと。それも今にも泣き出すんじゃないかと思わされるくらいの迫
真の恥じらい演技までして。はぁ……その女の持つ裏の顔に、狡猾さに、スーパー萌える
わ、最高。加えて本作には、『ボクの彼女はガテン系』や『愛する妻、真理子が隣室で抱か
れるまで』と同様の浮気問い詰め告白パートがありまして、そこで明かされる彼女が不貞
を働いた理由ってのがまた素晴らしかった。

「全ては言い訳ですが……寂しかったから、でしょうか」

例えば、imotaさんは本作の感想の中で、「健は夫としての務めを果たしていて非はないの
に、義父に抱かれた理由をそのひと言で片づけるのは納得できない」的なことを書かれてい
ますが、自分は真逆の印象を抱きました。妻や恋人が他の男に気持ちがなびいたり、
体を許してしまったりする理由なんてのは、本当に些細なことでいいと思っています。
NTRゲーの大半を占める、劇的でフィクション感の強い脅迫レイプからのスタートやマジ
カルチンポ堕ちなんかよりは、雰囲気やその場の状況に流されて~的な理由にすらなって
ない理由の方がよっぽど現実的で身近に感じられます。傑作妻貸し出しゲーの『貸し出し
妻、満里奈の“ネトラセ”報告』然り、寝取られの興奮ってのはそれを我がことのように
(現実的で身近に)感じられる投影度が強ければ強いほど、増していくと自分は思います。
また、本作のような流され系の寝取られでは、ヒロインに対してクソ女だとかビッチだと
かの批判も出ることは確かですが、話が破綻しにくいので感情移入しやすいというメリッ
トも。ビッチ批判ってのは話やエロの出来の問題ではなく、女の趣味の問題よな。清楚で
主人公に一途で貞淑の象徴みたいなヒロインが他の男に奪われる、ってのが最も望まれて
いる寝取られのパターンのかもしれないけど、そもそもそんなタイプのヒロインは不貞を
働かないので、今言った脅迫レイプかマジカルチンポ等のトンデモで堕とすしかなく、堕
ち後が完全にクルクルパーに見えちゃって、NTRゲーにおけるそれは、自分はあんま好き
じゃないッス――草刈ゲー、miel、seal、スワン、シルキーズSAKURA、前作までのNomad
……清楚ヒロインにこだわるあまり、キャラ崩壊、ストーリー破綻しまくったNTRゲーが
どれだけ出てきたか……。
逆に、分かりやすいのだと『妻陥落』の清美や前出の真理子、『誰もが彼女を狙ってる。』
の綾乃(初回のヤンキールート時)、そして本作の遥のような人間味のあるヒロイン(最初
から非を持っているヒロイン)が、実際の浮気なんてそんなもんだよねって感じで裏切り
を重ねていく寝取られが個人的には最もすんなり受け入れられます。

あ、あとねー、本作のヒロイン・遥は、『淫烙の巫女NTR』×4作→『今夜、お義父様に抱
かれます…』×1作→『淫烙の巫女NTR2』×4作と、過去のシリーズ作の全てで貞淑の象
徴的な女性として描かれています。つまり、9作にも渡って夫だけをひたすら愛する聖女の
ように描かれてきた彼女が、今回は普通の女として描かれていることから来るギャップ。
これが凄まじい萌えに繋がってた。実際、作中でも健が「僕は遥さんのことを神聖視し過
ぎていたかも知れない」的なことを言っていて、作品同士で繋がりはないからメタ的では
あるんだけど、過去作を全てプレイしてきたことで「あの遥が脅迫でも何でもなく、自ら
の意志で浮気をした」って事実にめっさ惹かれました。告白シーンでの「雨が降っていた
から義父に抱かれた」という彼女の言葉もネタ的に扱われていますが、個人的には全然ア
リだった。剛蔵の秘書的仕事をすることになり、夫の健にはない彼の男らしさや人間的大
きさを知っていく遥。初めのうちは敬愛の念に近いものを義父に対して抱く遥だったが、
次第に彼女の中でそれは“ひとりの男としての魅力”に変わっていく(ナヨリスト系草食
男子の健としか交際経験のない遥が、有能で社会的地位もあり何より非常に強いオスであ
る剛蔵に惹かれるのは当然とすら思える)。そして、夫婦関係が少し上手くいっていない時
に健が仕事の研修で数日間家を空けることになり、シトシトと雨が降る中、ひとり家で寂
しさを堪える遥。そんな遥の心の内を察した剛蔵は、持ち前の器の大きさで彼女を優しく
包み込み、抱き寄せて……。女が転ぶ理由としては十分でしょう。その後はしばらくの間、
健が研修から帰ってきてからも、遥と義父は肉体関係を持つことはなく、彼女もあの時の
出来事は一夜の過ちだと自分に言い聞かせて、表面上は剛蔵に抱かれる前と変わりのない
日々が繰り返されていく。しかし、ある日、遥は剛蔵の仕事のつき添いで、彼とふたりで
東京へ出張することに。仕事が終わり、宿泊しているホテルでの食事中に、それまで一切
思わせぶりな態度を取ることがなかった剛蔵から「こっちは雨だけど、家の方もそうだっ
たか?」と囁かれる遥。夫を裏切り、心の隙間を埋める快楽に身を委ねてしまったあの時
とそっくりな状況。そして夜、彼女は剛蔵と別の部屋に宿泊していたにもかかわらず、自
ら彼の部屋のドアをノックしてしまう……。いやあ……最高の浮気妻っぷりスわ。夫を想
う一方で、義父との背徳的な行為に溺れていく妻。その詳細を彼女の口から直接聞かされ
る興奮ったらないだよ~。

「お義父様、との……ッ……セ、セックス、が……気持ち、良かった……です」
「私も……知らなかったん、です……ッ。自分が、あんなに、その……ッ……(セックス
にハマるなんて……)」
「お義父様の、手で……ッ……ま、まるで、自分を作り変え、られていく、ような……そ
の……その、感覚が……怖い、のに……恥ずかしい、のに……わ、私……」
「健さんに……言えないことを、しているという、罪悪感が……健さんに……見つかって
は、いけないという、危機感が……それがスパイスになっていたのは……否めま……せん」

といったような浮気告白がモリモリにあってね、その辺りの言葉にゾクゾクくるタイプな
ら、コスパは悪いけど最大瞬間風速はかなりのものがあると思います(逆に「えっ、ただ
のビッチじゃん」って思っちゃう人には大ハズレかと)。

あ、あとそうだ、その告白のくだりでも不満点があった。最初は互いの出張中等、絶対に
バレる心配がない時にだけ不貞を働いていたものの、次第により強い興奮とスリルを求め
るようになり、健が仕事から帰宅するまでの間や就寝後、さらに隙を見つけては家のトイ
レや風呂場でも義父と隠れてセックスしていた的なことを遥から告げられるんだけど、そ
の様子を描いたエロシーンが本作にはありません(告白時の回想とそれに付随する遥の浮
気ビデオでルート中の寝取られエロは8シーンほど)。そこは、1月に発売する遥視点のア
ナザーストーリーで楽しんでね、だって。分割商法も大概やで。まあ、制作的な事情があ
るのかもしれんけど、話の構成的にも熱が冷めるって意味でも絶対に1本にまとめたほう
が良かったと思う。それと、結末のひとつに浮気をした遥を許し夫婦関係を再構築してい
くって展開があって、そこで健は明らかに寝取られ性癖に目覚めとるのに、なんで他の男
に妻を抱かせる流れに持っていかなかったんだ。超もったいねえぞ。健は普通のセックス
ではもうチンコが勃たない状態になってるのに、それを頑なに認めないで過激な器具プレ
イを遥に課すことで自分を誤魔化し、結局上手くいかず離婚~って、そりゃないぜ。もし
本作に(個人的にはあって然るべきだと思う)、遥視点の浮気Hパート&先輩に寝取られる
ルート&寝取られ性癖に目覚めた健が遥を他の男に貸し出すルートが実装されていれば、
『それ妻』や『かのみま』クラスのフルプラNTRゲーの代表作的一品になってたんじゃな
いかなって思います。本当にもったいない……。

でもね、そんな粗や不満点の多い本作だけど、2015年に発売された商業NTRゲーの中で
最も興奮させられたのも確か。ハマる人は少ないかもだけど、他のNTRゲーではなかなか
味わえない極上の背徳エロを堪能できる作品だと思います。今年の優勝ゲーです。