喪男どもに捧ぐ鎮魂歌
まず、本作『麻呂の患者はガテン系』と前作『ボクの彼女はガテン系~』に直接的な
繋がりはないです。なので、本作からプレイしてもとくに問題はありません。
ただ、本作と前作にはいくつか類似する要素(主にヒロイン関係)がありまして、
具体的に挙げると、
・本作のヒロイン・咲美は、前作のヒロイン・美咲とキャラがそっくり
(名前だけではなく、喋り方や性格、服装――作業着、普段着のタートルネックに
ジーパンorミニスカート――なども。怒るとグリグリもしてくる)
・夫のことを“マー君”と呼んでおり、経験人数も彼ひとり
・父親が他界している
といった部分が該当します。そして、それらの要素によって、傑作と名高い前作で
とてつもなく魅力的だったヒロインの美咲に心奪われた人は、本作をプレイし始めて
すぐ、あの時の狂おしいまでの想いと興奮が胸の奥のほうから蘇ってくる感覚に
囚われるはずです。つまり、咲美と美咲が重なって見え、5分、10分ゲームを
進めた頃には、すっかり彼女の虜になってしまっていると。したがって、先に前作を
プレイしておいたほうが、作品世界への感情移入の面で大きなアドバンテージを
得られるので、より本作を楽しめるんじゃないかな、って思います――“プレイヤー
の心理にどんな影響を与えるか”ってところまで読んでヒロインや一部の設定を
継承したのなら、本作のシナリオライター・土天冥海氏は、マジで天才ですわ。
……いや、最初っから意図してたんだろうな。読み手は、土天氏の掌の上で
踊らされっぱなしや。
さて、内容についてですが、本作には大きく分けて二つのパートがあります。
一つ目が、闇医者の彦麻呂(45歳)になって診察を受けに来たガテン系の
人妻・咲美に、あの手この手を使いセクハラをしていくパート。これはその昔、
elfファンクラブ会報に収録された『悪いお医者さんに騙された杏奈ちゃん』を
彷彿させる内容です――何故、主人公が麻呂(付け焼き刃ではない生粋の
おじゃる系)なんだかわからんけどw 麻呂はまず、あることないこと並べ立てて
咲美の不安を煽り、彼女に妊娠前検診を受けるよう薦めていきます。上手く誘導
出来れば、そこからは本格的なエロ診察がスタート――乳房の触診と言っておっぱい
をモミモミしたり、膣内検査と言ってオマンコを弄ったり。システム的には
トライ&エラーの選択肢ゲーで、疑われたり露骨なことを言ったりすると、咲美は
二度と病院に来ません(即BADへ。「四の五言わずに、とっとと乳さらせや」とか
言うと終わるw でも、そういう選択肢が正答の場合もあるから侮れない)。
巧みな話術で彼女の信用を獲得しつつ、徐々に行為をエスカレートさせていく
って感じですな。
ですので、実際のシーン内容に関しても、セクハラプレイがメイン(本番は2シーン
のみ)。しかし、エロが薄いということは決してないです。つか、本物の
エロチシズムとはどういうものかってのを見せつけられる、すげえ作品ス。
例えば、“おっぱいを揉む”――たったそれだけのことを、ここまで丁寧に突き詰めて
描いた作品は他にないんじゃなかろーか。服の上→生チチ→乳首とじわりじわりと
責めていく麻呂。同時に、「夜の夫婦生活は…」、「好きな体位は…」、
「前戯の平均時間は…」、「奥さんの濡れ具合は…」、「オーラルセックスは…」、
「オーガズムの経験は…」というような性的な質問責めで羞恥心を煽り、心と身体の
両面から彼女を切り崩していく。そんな状況でも咲美は、「医療行為なんだから我慢
しなくちゃ」と自分に言い聞かせ、性感の昂ぶりを必死に堪え続ける。感じては
いけないのに感じてしまい、「あっ…だめ…んっ…」などと官能の色が混じった声を
漏らす女性の姿というのは、なんと美しく魅惑的なことか。元々のヒロインの魅力
や、elf十八番のなめらかなおっぱいぷるぷるアニメーションの効果も相まって、
そのエロさたるやマジで感動を覚えるほど。
さらに、パイ揉みだけではなく、その後にあるオマンコ診断でもひとつひとつの
所作へのこだわりっぷりがハンパなく、「膣口を拡げる」、「小陰唇を撫でる」、
「陰核を擦る」、「膣の中へ指を入れる」などといった麻呂の執拗なねちねち責め
(責め方は全部で十数種類アリ)により、彼女は今まで知らなかった本当の快楽を
知ることに。「本当に、マズい…ですっ…あの…あっ…はぁっ…あっ…あっ…
ちょっと、待って…だ、だめ…」→びくびくびくっ→「(身体が)う、浮い…
てる…ぅ」→びっくんっ、ぎゅううっ…っ→「っ、ああぁ…違う…っ…落ちる…
よ…ぉ」→「ひ~~~~~~っ」→びくびくびくびくびくっ。耐えに耐え決壊する
瞬間のカタルシス。土天氏はこれを描くのが本当に上手い。前作で破壊力抜群
だった、初めて会田に抱かれた美咲が「落ちる…落ちる…落ちる…よぉ…」と
言いながらオーガズムへ達するシーン。それと同様の手法を今回も用いてくる
とは……まったく、いやらしすぎです。
そして、クライマックスとなる旦那の前でのセクハラ展開。「妊娠前検診には
旦那への問診も必要」などといった文句で言いくるめられた咲美は、愛するマー君と
共に病院へ訪れます。すぐ隣に旦那がいる状況で始まる、おっぱいモミモミ検診。
明らかに怪しいその手つきを見てマー君はブチ切れそうになるものの、この段階まで
来ると咲美は麻呂のことをすっかり信用しきっており、「私なら大丈夫だから。
これも子作りのためだよ」といった感じで旦那をたしなめる。この“無意識的に”
咲美が旦那ではなく麻呂の味方をしてしまうってのが、寝取り寝取られの機微って
ヤツですわ。そーいうのが好きな人にとっては、めっちゃゾクゾクする展開だと
思います。で、ラストは診察台の上でのオマンコチェック。美咲の上半身と下半身を
カーテンで仕切り、上半身側にいる旦那と下半身側にいる麻呂を俯瞰で対比
させつつ、エロシーンが進行していきます。麻呂に思いっきり手マンされても、
旦那の前で喘ぎ声を上げるわけにはいかず、我慢し続ける咲美。そんな彼女の表情を
見てマー君は、検診が辛いのだと勘違いし、「自分が側についているから大丈夫」
的なことを言いながら咲美の手を強く強く握る……。カ~、たまらんねぇ……。アンタの
嫁さんは苦しんでるんじゃねーんだよ、オマンコ感じまくってるだけなんだぜ!!
手マンの後は、いよいよ、いよいよのチンポコ挿入。検査用のチューブと
信じ込まされ、麻呂のデカチンをハメられた咲美は、過去に経験したことがない
とてつもなく大きな快楽の波に飲み込まれていきます。「はあっ…はあっ…マー君、
押さえて…お願い…押さえ…て…。あうっ…ああっ…はあっ…はあっ…マー君…っ…
マー君…っ」と夫にすがる彼女に、容赦なく腰を打ち付ける麻呂。そして再び炸裂
する「っ、身体が宙に浮いてくるぅ…」→「ああぁぁ…す、凄く高い…っ…
怖いよ…っ…はあっ…はあっ…」→「落ちる…っ…はあっ…はあっ…落ちる、
落ちる…っ…あぁぁ…っ…いゃ…ぁぁ…」→びくびくびくびくっ!!→「あぁ…っ…
落ち…てる…よぉ…」→ぎゅうっ、びくっ、ぎゅうっ、びくっ!!→「ま、また
落ちる…はあっ…んっ…まだ、ある…あっ…あっ…凄い…こんなの、知らない…
っ…はあっ…あぁ…っ」のコンボ。クソエロい……なんだこれ……。ホントにねぇ、
なんつったらいいのかわからないけれど、自分の中のリミッター的なものを超えて
しまって、頭の処理が追いつかず唖然としちゃう感じですよ。BLACK LiLiTHや
Guilty辺りの過激系のゲームばっかりやってるような自分が、“パイ揉み”、
“手マン”、“挿入”だけでこれほどまでに興奮させられるとは……。いやぁ……
まだまだ知らない世界があるというか、エロってのはホント奥深いですなぁ。
以上が一つ目のパートになります。話の筋自体は奇をてらったものではなく、
発売前に多くの人が予想していた通りの内容ではないでしょうか。しかし、この麻呂
によるセクハラ寝取りパートはゲーム全体の半分ちょい程度(CG/シーン数的にも)
のもので、最後の診察の時、あえて無茶な選択肢を選ぶことで、もうひとつの、
今までとはまったく異なるストーリーが展開されていきます。そして、そこで
描かれるのは、純愛――ちょっとキザったらしい言い方をすると、心の救済の物語。
「麻呂でおじゃるが主人公で純愛とかw テキトーなこと吹いてんじゃねーよww」
と思われるかもしれませんが、本作はバカゲーでもネタゲーでもありません、
マジモンです。土天氏がクソみてえな人生を送る30~40代の喪男どもに向けて
書いた、言わば鎮魂歌なのです。麻呂は、俺たちなんだぜ……。
最後の診察時、調子に乗りすぎた麻呂はマー君の逆襲に遭い、咲美のおっぱいを
揉んでいた両手をバキバキに折られてしまう。両手共にギプス&包帯ぐるぐる巻き
状態になり、ひとり病院の二階(自宅)で療養する麻呂。負傷しただけではなく、
自らの不手際で咲美という極上の獲物を取り逃した麻呂は半ば自暴自棄に陥っていた
(ここからの麻呂は、今までやりたい放題だった寝取りモンの麻呂ではありません。
この世に生を受けて45年間、ずっと独り身で孤独だった等身大の――ただの寂しい
おっさんです)。そんな時、窓を「コンコンコン」と叩く音がして、麻呂が目を
向けると、そこにはなんと咲美の姿が……!?
というような導入です。何故、咲美が再び麻呂の元に訪れたかというと、旦那が
大怪我を負わせてしまったことに責任を感じ、謝罪するため。予想だにしない展開に
アタフタする麻呂。「事を大きくしないで欲しい」と頼んでくる咲美に麻呂は、
「訴えたりするつもりはないし、もう許してます」的なことを言って彼女を帰らせ
ようとします――麻呂からすれば、自業自得でそうなったんだし、もし事件を公に
したら自分が闇医者だということがバレてしまうので口外出来ない。しかし、咲美は
「それじゃあ筋が通らないんだよ。センセーの怪我が治るまで私が面倒を見るよ」
と言って強引に麻呂の世話を始めます。この辺りがねぇ、とくに前作『ガテン』の
美咲に似てますな。すげえ頑固で一本気で、何を言われてもどんな状況でも、絶対に
自分の信念を曲げないところ。それも、この時点で彼女は、ぼかしてはいるけれど
麻呂が後ろ暗い人物で、端から警察沙汰には出来ないってことに気づいてる
(いきなり麻呂に対しタメ口になることからも察せられる。ここからは医者>患者の
関係性は消失し、咲美が主導権を握るようになっていく)。にも関わらず、旦那が
怪我をさせたことに違いはないから、その責任は取ると。いいオンナっすわぁ……
こんなん惚れるなってほうが無理。以降、咲美は毎日、出勤前と昼休みと
仕事終わりにやって来る通い妻化することに。言葉で説明するのがとてつもなく難しい
んだけれど、世話焼き女房な彼女に、手料理を食べさせてもらったり、部屋の掃除を
してもらったり、風呂やトイレを手伝ってもらったり、そんな日々の生活がねー、
めっちゃ胸にくるんだ。一度も結婚せず、人生の折り返し地点を迎えた45歳の
中年・麻呂。独り身の寂しさなど、とうの昔に忘れ去り、気ままな闇医者稼業を
満喫しているはずだった。なのに、咲美の存在が、彼の心に色を取り戻させて
いく――彼女は恐らく、麻呂に死んだ父親の姿を重ねている。二階の窓から
ちょこんと顔を出し、「こんちは」、「こんばんは」、「やっほ」とひと声かけ、
部屋に侵入してくる咲美(←これがメチャクチャカワイイ!!)。そして、ずっと自分
ひとりだった家に響く、炊事に掃除にと忙しなく駆け回る彼女の足音(←この部分は
伝わりにくいと思うけれど、自分が最も心打たれた演出。例えるなら、“夜遅くに
帰宅した時、家に明かりが灯っていることの幸せ”。それの強化バージョンやね。
独身生活が長いオッサンプレイヤーは、たまらなくなって涙腺崩壊するかも)。
他にも食事の時に「ふーふーあーん」をしてきたり、入浴中、背中に指文字を書く
イタズラをしてきたりと、喪男どもを昇天させるために書いたとしか思えない極上の
萌えシチュのオンパレードです。
咲美からすると、麻呂は何となく怪しい人物ではあるけれど本当はただの寂しい
オッサンで、また“両手を怪我して自分では何も出来ない”ってのが彼女の強い
母性本能をくすぐり、さらに以前介護をしていたが助けられなかった自分の父親に
麻呂が重なって、その代償行為として――麻呂の怪我が回復=今度は助ける
ことが出来たという彼女にとっての救済――彼の世話を続けると。そんなことを
毎日朝昼晩と続けていたら、相手に情が湧くのも当然で、この不思議な生活が
終わりを迎えようとする頃には、傍から見たらふたりは新婚ほやほやラブラブ
カップルにしか見えません――麻呂のトーンは最後まで、あくまで困惑。その状況は
咲美自身が作ったもの。マー君が知ったら血涙ものやねw それらの咲美の心情を
象徴するのが、麻呂の怪我が完治し通い妻の終了を告げるシーン。「もう、ここに
来ることもないの…かな?」、「あと一週間ぐらい、来てあげよっか?」などと、
名残惜しい気持ちをハッキリと口にする彼女。それに対する麻呂の言葉は、
「戻ってあげて下さいなぁ。旦那さんのところに」。咲美は思いっきり不貞腐れ
ながらも、「タオルの置き場所は、脱衣所に移したからね」、「靴下は、引き出し
の一番上。下着とシャツがその下で、マフラーとかの小物は、靴下と同じ場所に
入ってる」、「夏物はまとめて、化粧箱の中だから。買ってきたコートは、
クロゼットの中で、クリーニングに出してある白衣は…」とわざわざ説明し出し、
一分一秒でも長く麻呂の家に留まろうとする。しかし、それも麻呂に「メモに書いて
貰いましたから大丈夫ですよ」と言われ、彼女はいよいよ別れを告げるしか
なくなってしまう。「じゃ、行く…バイバイ…さよなら」――最後の“さよなら”の
部分だけワンテンポ遅れて表示されるんだけれど、その一瞬の間に彼女の想いが
すべて集約されてる。演出の妙。自分は完全に抜け殻状態にさせられましたわ。
その後、ひとり家に残された麻呂がどんな想いに駆られたかは、推して知るべし
だと思います。温もりを知らなければ耐えられた。でも、彼は知ってしまった……。
結末はぜひ自分の目で確かめてほしいッス。本気になった麻呂の
――付け焼き刃ではない、生粋のおじゃる系の勇姿。カッコイイw
私は毎月5本~10本くらいエロゲーをプレイしていますが、ここまで魂を
揺さぶられたのは前作『ガテン』以来です。この感想もいつも通り1000Wくらいで
まとめようと思ってたら、こんなクソ長くなっちまって……。まあ、それだけ熱く
なれる作品だったと理解していただけるとありがたいです。それと、本作は単独で
完結していますが、最後に「To be Continued」の文字が……えっ、続くのです?
この業界、売上が芳しくないと続編が出ないってことがままあるので、たくさん
売れるといいなぁ。