いやいやいや
パッと考えて、3連続で傑作を生み出したクリエイターって、
『レザボア・ドッグス』、『トゥルー・ロマンス』、『パルプ・フィクション』のタランティーノくらいしか思いつかん。
まあ、ジャンルが全然違うし、比較するようなものでもないけど、どちらもすっげーことだけは確か。すっげーー!!
本作のすっげーポイント1:“今までのエロゲでは皆無に等しかった新しいヒロイン像の提示”
ひと言で言えば“悪女”ということになりますが、その辺の悪女ヒロインとはわけが違います。
今までの悪女ヒロインといえば、峰不二子やドロンジョ様、妲己ちゃんやレヴィのように目的のためには平気で男を誑かしたり、
悪事を働いたりするけれども、確固たる信念というか目的意識を持つキャラがほとんどでした。
エロゲでいえば、『媚肉の香り』に出てくる香織とか、『Bible Black』の北見や佐伯、
『対魔忍アサギ』の朧なんかがそれに当てはまると思います。
どんなに汚いことをしていても、そこには悪人の美学、または様式美のようなものがちゃんとあって、
万人受けはしないだろうけど、それなりに多くの人が彼女たちの魅力に惹きつけられたのではないでしょうか。
けれど、本作のヒロイン・美咲は同じ悪女でも、そういった既存のキャラとはまったくの別物です。
信念も美学も何もなく、快楽欲求と自己保身のみで生きるただのクズです。最低の人間です。
素知らぬ顔で夫に嘘をつき、家庭をほっぽって浮気相手と遊びまくっているのはもちろんのこと、
無責任な中出しSEXで妊娠し勝手に堕胎、
さらには夫が将来のために貯金していた1000万円をその間男に全額貢いでしまうなど、やりたい放題。
浮気が完全にバレても「何のことだかわからないわ。貴方が浮気してるんでしょ? 慰謝料払ってよね!」とのたまったり、
決定的な証拠となる間男との2ショット写真を突きつけても
「こ、これは全部勘違いなのよ…。そう、そっくりさんよ! 私知らないわ」と意味不明な言い逃れを繰り返したり。
それが無理だとわかると、急に態度を変え「私の携帯(パソコン)勝手に見たのね……信じられない」
と話の論点をすり替えて夫の人格否定をし始め、
さらには「今ならまだ許してあげるから、早く帰ってきて。今日は貴方の好きな肉じゃがだよ」
と硬軟織りまぜて何とか浮気の事実を誤魔化そうとしてきやがります。
自分からは絶対に「ごめんなさい」を言わず、メチャクチャな論理で自己の正当性をアピールし続けるのです。
正真正銘のリアルDQN女です。世の男性の99%が、こんな女だけには引っかかりたくないと思うでしょう。
テレフォン人生相談のマドモアゼル・愛先生もきっと、
「これ以上いっしょにいたら、あなたの人生が壊れてしまう。一刻も早く別れるべきだ」とアドバイスしてくれるに違いありません。
萌える。マジ萌える。スーパー萌える。
そう、そうです……私はずっと彼女のような悪女ヒロインを求めていました。
なんて魅力的なヒロインなのでしょうか。“ビッチ”という言葉はまさに彼女のためにあるようなもの。
性根の腐りきった女を愛し、翻弄される喜び……たまんねぇっっ!!
クソビッチを心の底から愛してやまないイカれた性癖を持つ方なら、
本作をプレイすることで至上の愉悦感と興奮を味わえるはずです。
谷崎派(原理主義者)が求めるエロスがここにあります。
もし私がエロゲ制作者だったとしたら、プレイヤーの拒否反応が怖くて
ここまで突き抜けたヒロインをメインに据えることなんてできないと思います。
それをやってのけた、おんぼろさんに最敬礼。あなたの描くNTRヒロインは本当に素敵だ。
本作のすっげーポイント2:“エロシーンの完成度がハンパない”
過去2作(『玲奈』と『孕むとき』)も寝取られ的に無駄なエロシーンがほとんどなく、
非常に完成度が高かったですが、本作でもそれは健在。
すべてのシーンに何かしらの(寝取られ的な)テーマが盛り込まれており、よく考えて作られているなぁ、と感心してしまいます。
例えば最初、主人公が妻の部屋で見つけた動画を再生する場面。
その動画はすでに彼女が何度も浮気を重ね、間男とのSEXにすっかりハマっている様子が記録されたもので、
動画のなかで美咲は、積極的にベロチューしながらチンポを手扱きし(カットインCGの使い方も上手)、
「ね、入れたい?」と自分から男を誘ったりしています。
愛妻のズベ公っぷりが一発でわかるシーンを最初に持ってくるってのは、インパクト大。
『妻陥』で菊地からかかってくる最初の電話シーンと同じですね。一気に興奮ゲージをMAXまで持って行ってくれます。
あと、間男の友人に美咲が抱かれるところなんかもたまらんスね。
美咲は間男にゾッコンなんだけど、間男は遊び相手(もしくは金づる)程度にしか思っていないので、
平気で彼女を第三者に抱かせてしまいます。美咲も初めは戸惑っているものの、いざプレイに入ってしまえばビッチ力全開。
「後で嫉妬したりしない?」と間男に確認を取った上で(こういうヒロインの台詞回しが本当に上手い。すっげーゾクゾクする)、
初対面チンポにむしゃぶりつきます。尻軽っすなぁー、エロエロっすなぁー、たまらんすなー。
加えて、超簡単に股を開く男にとっては天使のような女なのに、
主人公とのSEXだけは拒むというね……はは、最高の女やで。
他にも「子供デキちゃうから外に出してね」だったのが「中に、欲しいの…」に変わる決定的な陥落シーンや、
間男のことを「愛してる♥ 愛してる♥」と連呼しながら淫らに腰を振りまくるシーン、
ハメハメしている最中に自分でクリトリスを弄り出すシーン(洋ピン女優がよくやるヤツ。これビッチっぽくてすげー好きだ)など、
素晴らしいエロシーンがたくさんあり、(属性持ちなら)使えないシーンはほぼないと思われます。
この辺りは、先日発売されたBLACK LiLiTHの『俺と冴子さんと寝取られメール』とは大違い。
本作には状況からキャラの言動、小道具に至る隅々まで寝取られ心理を擽る仕掛けが施されていますが、
『寝取られメール』のほうはホントただ犯されてるだけ。上っ面寝取られここに極まれりって感じ。
やっぱりこのジャンルの作品って、制作者が寝取られに理解があるのはもちろんのこと、
いかに自分に近い寝取られ観を持っているかが重要なんだなぁ、と改めて思った次第です。
本作のすっげーポイント3:“枯れた技術の水平思考(by横井軍平)”
本作には、『それ妻』にもあった浮気の証拠探索システムが実装されています。
これは、画面をクリックしてキーアイテムを見つけるとストーリーが進んでいくというもので、
昔のエロゲではよくみられたシステムですね――私がエロゲを始めた頃(2003年くらい)には、もうほとんど死滅してたなぁ。
このシステムが全盛だった当時はまだ寝取られというジャンル自体が確立していなかったから、
誰も気づかなかったんだろうけど、寝取られ+探索の相性は抜群っすな。
例えばテキストだけで、
「妻の行動に疑問を持った俺は、彼女の部屋を漁った。」→
「すると、タンスの引出しの中から封の開いているコンドームが出てきた。」
と説明されるより、
「妻の行動に疑問を持った俺は、彼女の部屋を漁ることにした。」→
「探索パート開始(部屋のいろんなとこをクリック。何が見つかるかわからないのでドキドキ)」
のほうが断然楽しいし、作品への没入度も上がります――いきなり中絶同意書が出てきたときは、めっちゃ驚いたわ。
ただ、本作の探索システムは、すべてのキーアイテムを見つけないと先に進めないようになっており、
実質一本道と同じになっているのがもったいなかったかな。
後半、選択肢で完堕ち、再構築、制裁ルートに分岐していくけど、
発見したキーアイテムの数や組み合わせによって、ルートまたはエンドが変わるとかのほうが面白かったかもしんない。
キーアイテムを全部見つけていない状態で制裁ルートに入ると、証拠が足りなくて逆に返り討ちにあうとかw
まあ、でも探索パート中はゲームの世界にどっぷりのめり込んでいたのは確か。
可能ならば、今後の作品にもぜひ取り入れていただきたいシステムです――他のメーカーも真似してほしいくらいだ。
あーあと、その探索パートで妻のケータイを調べることになるんだけど、
妻が間男に送ったメールの文面がハートクラッシャーすぎて、「うおーーーっ!!」ってなる。
「二人でまどろんでる夢みた~ U^エ^Uえへ~♪」
「にゃは(´∀`) もっと思い出して(はぁと)」
「旦那が起きてきた…(><) もっとお話ししたかったよ~う」
「おはよう(≧▽≦) お土産も渡したいし早く会いたいっ(*^○^*)」
などなど。テキトーに一部抜粋しましたが、これだけでもたまりませんな。
んで、それを見た主人公は、
「妻がこんな顔文字だらけの文章を書くなんて知らなかった……まるで恋人同士じゃないか」となるわけです。
しょーじき、本作でいちばん興奮したのって、エロシーンじゃなくこのメールのくだりかも。
何年か前に『私の知らない妻の貌』って寝取られゲーがありましたが、
それのテーマと同じで、自分が知らなかった妻や恋人の“女”としての一面を見せられるのって、ハンパなくショックがでかいッス。
嫌われているのか、警戒されているのか、はたまた好きだからこその裏返しなのかは場合によって違うだろうけど、
最愛の女性が自分以外の男にのみ心を開き、本当の姿を晒す――。
いやー、これぞ寝取られって感じですわ。
完堕ち、再構築、制裁ルートについて
上でもちょいふれましたが、本作では後半3つのルートに分岐していきます。
まず、完堕ちルートについて。このルートは寝取られゲーでは比較的見られるパターンです。
妻を愛しているが故に、どんなに傷つけられても別れるよりはマシと考えてしまう主人公。
彼女の不審な行動は次第にエスカレートし、
最終的には男の存在を隠そうともしなくなります(電話で喘ぎ声を聞かせられる)。
一展開だけなのですぐ終わっちゃいますが、ちゃんとエロに結びついていますし悪くはないと思います
(というか、3つのなかで完堕ちルートがいちばんマシ)。
次に、再構築ルート。長年連れ添ってきた情もあり、離婚に踏みきれなかった主人公は、
美咲を叱りつけ浮気を止めさせます。彼女も反省して家に戻り、頑張ってよき妻を演じようとするのですが、
ことあるごとに主人公は忌まわしき出来事の数々を思い出してしまい、
結局はもとの平穏な生活に戻れないのだった――という終わり方をします。
これすげーもったいない。浮気が発覚したことにより夫婦のあり方が変わる、ってところまではいいのになー。
主人公の心のなかは、妻を愛する気持ちと裏切られた、許せないって気持ちが混在し、
わけわかめな状態になっているわけで、ただ悩むだけではなくそれを妻に直接ぶつけてほしかった。
「この淫乱女が! 今まで何本のチンポ咥えてきたんだ!!」
「ああっ……んん……そ、そんなこと……いやぁ!」
「あいつだけじゃないんだろ!? 付き合ってるときも二股かけたりしてたんだろ!!」
「してない……ホントに……あっ、あっ、あっ……ち、違う……」
「そーいや、大学のころも○○先輩と仲よかったもんなぁ! 俺に隠れて犯ってたんだろ? 正直に言えよっ!!」
「ああ、あっ……それは……んんんんッッ!!」
みたいな感じで、夫が妻に怒りをぶつけながらオマンコを責め立て、
過去の男性遍歴を告白させるってシチュがあったら燃えまくりだたヨ。
最後に問題の制裁ルートについて。
もはや別ゲー。『ヤンヅマ心春』で最後いきなりホモ展開が始まって、ポカーンってなったときのことを思い出しました。
感覚的にですが、尺も共通部分と同じくらいあるんじゃないかな(ちなみにエロシーンはありません)。
他の2ルートは即終了だってのに……そりゃないよ。
裏切った妻と最低の間男を徹底的に追い込んで懲らしめるって流れは、確かにカタルシスがあったし、
弁護士や探偵までストーリーに深く噛んできて、「おおっ、本格的だ」とも思った。
ただ、それは寝取られとは一切関係がないのですよ。
上述のホモ展開然り、出来の良し悪しは関係なく、私は寝取られエロで抜くために本作を購入しているわけで、
まったく違う属性要素を入れられても、いやいやそれは他のところでやってください、としかならないです。
共通ルートをプレイしている時の私の脳内は、
「ハァ、ハァ……美咲たん、たまんねぇ……次はどんなビッチっぷりを見せてくれるんや……ハァ、ハァ……」ってな感じで、
チンコも常にフル勃起状態でしたが、制裁ルート時は、
「なるほど。相手を社会的に抹殺するために、まず外堀から埋めていくわけか。ふむ、ふむ」と、
さっきまでの興奮がウソのように冷静さを取り戻し、エロい気分が完全に消し飛んでいました。
それは違うだろと、読み物にしてどーすんのと、これは抜きゲでしょと。
抜きゲメーカーとしてのアイデンティティは、どこにいっちまったんですかい!?
ヒロインのキャラクター、シーンの描写、探索システムの3つは本当に素晴らしかった。
それだけに、分岐後はより深い寝取られエロを描くことのみに、注力していただきたかった。
力の入れどころが違うよー!
まとめー
の前にグラフィックに関して少し。さくらさんには、そろそろいかにも低価格ゲーな微妙絵師の起用を止めていただきたい。
それと、解像度800×600ってのも時代遅れ感があります。
内容は一級なのに絵がヘロヘロなせいで、パッケージとして見るとすっげー安っぽくなっちゃってる。マジでもったいないよ。
さっき、LiLiTHの寝取られは上っ面だけって書いたけど、絵に関してはちょっと見習ってほしいな。
同じ低価格ゲーでも、LiLiTHが使う絵師は上手い人ばっかだから、安っぽさが全然ないもの。
萌え絵にしろ、リアル絵にしろ、採用する基準をもうちっと上げて絵師を選んでほしす。
そうすりゃ、ナンバーワン低価格メーカーだ。
ここまで、あーだこーだいろいろ書いてきましたが、本作が滅多にお目にかかれない強烈なビッチゲーなのは確かです。
脳みそツルツルなリアルDQN女に、ナメられ、バカにされ、コケにされることを至福と感じるような
取り返しのつかないとこまで行っちゃってる重度の変態さんは絶対にプレイすべき作品だと思います。
今年の使える寝取られゲーは本作で打ち止めの予感。11月と12月に楽しみな作品がひとつもないや。
……と思ったら、エルフの新作が控えてんのか。うむむ……今年中に出るのか激しく不安じゃ。
年明け早々には、ぴこの字の新作に『マリッジブルー』があるから、それまで大人しく積みゲーを崩そう。
寝取られ興奮度:2
(※自分がどれくらいドキバクしたかを5段階で評価)