サブカルチャーの世界で特に描かれてきた“踏みこえ”の主題が光る。
“踏みこえる”という主題をくり返し投げかけながら、一方の立場に偏ることなく、多角的に問題と向きあう自己確立の物語。自己分裂に焦点化し、過去と現在をどう結びあわせるのかを切実に問うた良作であった。異世界ものでありながらもひたすらに“こちら側”を描きリアリズムを貫き通した語りは本当にお見事。記憶と自己同一性の主題は、『12の月のイヴ』や『最果てのイマ』、『紙の上の魔法使い』などでも俎上に載せられた問題であり、ノベルゲーム積極的にとりあげてきた問題でもある。