こういう作品に出逢うたび、エロゲやめるわけにはいかないな、と思うのは私だけじゃないはず。
『らくえん』をクリアするとできる付随作品でありながらも、その信じがたいほどの完成度から、いまもなお語り継がれる隠れた傑作である。自己の他有化/他者の自有化を中心に、医療の発達による生命倫理の問題をいち早くとりあげ、真摯に描いた物語である。むろん、そういった物理的な意味での他者の受けいれ――文字通り他者の臓器を受けいれること――だけでなく、相手の心をどう受けいれてゆくかという、ノベルゲームの典型的主題も十二分に描出される。全体として心苦しい物語でありながらも、近い将来に起こりうる新たな“生き方”が提示された作品と言ってよいであろう。