溺れる人間の弱さを描いた傑作。テキストによる没入感が素晴らしく、読者をのめり込ませるだけの力がある作品。
人物描写に優れており、古さというよりは安心感を感じさせるテキストが、
まず素晴らしい。特に葵と香乃は個性的かつ魅力的だと感じた。
飽きさせず、予想の付きにくいシナリオも、かなり手が込んでいる。
日常と異常の落差、光と闇が等しく降り注ぐような感触は
人の在り方を克明に捉えようとしたことの証明のように思える。
この手のダークなテーマと年代を考えると、やはり凄いと言わざるを得ないだろう。
次いで凄いのはHPをクリックさせるシステム。
殺伐としたEDENとほのぼのとした「あくあ」のHPの対比が面白い。
また、主人公が落ち着いた大人の男だった点も良かった。
シナリオだけを見れば、傑作とまでは行かないかも知れない。
だが、18禁ADVだからこそのシステムとテーマの融合、
テキストによる熱中度、意味のあるマルチアングル、
trueルートによる後味の緩和など、非常に真摯な作品であり、
購買層に媚びるだけの売り尽くし商品に溢れる昨今では
見つけることが難しい傑作と言っていいだろう。