様々な貌を見せる名作。ミステリー、ラブストーリー、コメディといったジャンル分け以前に、優れた群像劇であり、キャラの立った人間ドラマとして楽しめる作品。頭の緩い色事師でしかないはずの主人公から発せられる、人生の普遍的真実を突いた名台詞の数々、天京院 鼎のビジュアル、ニキやニコルのキャラ造形に、今でも震撼させられる。
「ボクはこう、信じている。
この世にしてはいけないことが在るとしたら
たった一つだけ──
それは自分の愛に裏切りをはたらくこと……
おのれの愛を裏切るのは、
生まれてこなかったも同じさ。
生きながら死んでいるも同じなんだ。」
ライアーの旧作だし、どうせ古臭いんだろ?
といったプレイ前の懸念を吹き飛ばすレベルの作品だったことは
間違いがなく、かなりの熱中度で読み進めることが出来た。
アルマルートで天京院 鼎を犯人にし、
天京院×杏里の関係を陳腐にしてしまったことだけは
今作の汚点だと思う。
おまけシナリオは玉石混交。
「がんばれ!ニコル!」は面白かったけどやや冗長。
クローエの短編が良かったかな。
BGM、UI、テキストは言うことなし。
色々な方が言うように、もっとミステリー色が濃くても…
という欲求は、無いものねだりというものだろうか。
楽しいだけではなく、忘れていたことを想起させられ、
ふとした瞬間に感動する。
人に薦めたくなる名作だと思う。