ヒューマンドラマの傑作
完成度の高いヒューマンドラマ
風爛症という架空の奇病に対する人々の葛藤が主軸となっているが、
架空の奇病とすることで、誰もが連想する介護問題だけではなく
疾患や精神病、さらには”生きていけるだけの愛情を与えられなかった者”といった
あらゆるマイノリティが直面する社会的差別や経済的な自立、
家族の苦悩といった幅広いテーマを描くことに成功している
プロットだけではなく物語の構成的にも優れており、
恋愛・バトル・ミステリー要素どころか悪役すら
存在しない中で、驚異的な没入度を実現している
絵、背景画、BGM、CV、UIのクオリティも高く、
多様性に富んだ登場人物たちのリアルな描写から目が離せなくなった
どのキャラクターも良い味を出しているが、
個人的には夜先生と写真師の辻菊さんが良かった
さらっと描かれているが、どちらのキャラも救われる展開なので
不器用な古い人間として描かれる常見先生はどのルートでも救われないが、
キャラデザ的にも妻の死によって既に半分壊れていたと見るのが自然だろうか
贖罪や受容といった重い副題を抱えている作品だが、
同時に存在する、クリシェの排除と性善説的な味付けによる心地良さの方が勝っている
(蛾が象徴するものは変容、再生、死、魂など)
万人におすすめです