ヘヴィ級の名作。根底にある他者への不信・苛立ちと、それらをどうにかやりすごすためのギャグと思いやり。これはボロボロに傷つき、壊れた心を抱えながらも他者との絆を諦めなかった青年の物語であり、後世に文化遺産として残すべき18禁ADVなど、この作品を除いたらいくらも無いだろう。
絵はどちらかと言えば雑だし、UIも古い、BGMは普通。
ただ、プロット、リサーチ力、キャラ造形といった
ライターの技量に依るものの力がずば抜けて強い。
特に一部のキャラクターの造形は異常にリアルだと感じた。
真純みたいなだらしない女いるよね、とか。
準の存在の希薄さと痛々しさはよく表現されているな、とか。
結局、親との関係が人生の大部分を決める、というか
影響する部分が多いというのは真実だと思う。
特に毒親に関わった人には延々と付きまとう、
とても切実な問題なのだと。
細かい伏線と、その昇華のさせ方がさりげなく、
とても巧いと感じた。
悪役のリアルな醜悪さも見事。
展開のメリハリという意味ではもうちょっと
頑張って欲しかったような気もするけど、
徐々に崩壊へ向かう居心地の悪さ、不安は
逆によく表現されていたと思う。
個人的には、人物を捉えきれているとは言い難い
絵の雑さは気になったが
プレイして損は無いというか、
無性に他者と関わりたくなってしまう作品。
司のように、傷つきながらも
他者との関係を模索し続けられたらなと。