UIに不満があってイライラするけど、中毒性があってついついプレイしちゃうハクスラ系RPGみたいな、穴だらけの娯楽大作。
読ませるテキストゲーなのは相変わらず、
ただ、よりエンターテイメント大作な方向に向かった作品となったため、
相変わらずな欠点が目立ってしまった。
・絵に関する不満
祈吏や茅ヶ崎征士などで、ある程度しっかり描けている人間的な表情が、
ヒロインになるとまるで描けておらず、ただの萌え絵で終わっている。
まったく作品に合っていない。
また、必要なところに絵がなく、間の抜けた萌え絵の一枚絵で終了している。
宗名や道理に絵が無いのも不満だし、灯の造形も幼な過ぎる。
メインの原画は相変わらず作品の質を下げる障害物だなと感じた。
・CV
紅葉役だけが不満。
何故か語尾を執拗に上げるので、さすがにOFFにした。
・誤字脱字、ミス
あまりにも多い。校正する人がいないのか、時間的に厳しいのか。
声優が自主的に直して発声している台詞すらある。
・長編
ゆえに、テキストが少しクドい。
もう少しコンパクトにするか、写実的な描写を多めにした方が面白いと思う。
良かった点
・背景絵
プロの仕事だと思う。
ただ、室内もう1枚は欲しかった。
・BGM
上品で落ち着いていて、このメーカーのテキストを読むという
「読書」の邪魔にならない。
・CV
御苑生メイや秋野花といった最高にクレバーな声優をはじめ、
祈吏役や茅ヶ崎征士役、宗名役も相当良かった。
・トランプの見せ方
特にゲーム性はないものの、見せ方を工夫することで
楽しませることに成功した。
さて、内容的にはいちおう成長物語となっている。
幼い頃に実の父親に幼馴染(実は異母兄弟)と妹と共に3人で誘拐されて
数年間も監禁され、母親はその間に心労で死亡。
その後遺症に悩む幼馴染の治療のためにその父親を殺害し
なお残る借金の返済のため夜な夜なカジノでポーカーをプレイする主人公。
その主人公が右往左往しつつ父親を殺し、幸せになってやるぞーという物語。
フロイトのエディプスコンプレックスいわゆる「父殺し」どころか、
本当に殺ってしまう。
要は、ファンタジーです。
賭博やら金貸しやら、ロシア文学の薫りも漂って来そうで、来ない感じ。
正義の味方を志して本当に実行してしまうメイドさんとか
人物的にはかなりダークで面白いと思うけど、そういった良い部分が
上述の通り、絵の稚拙さ・絵の不在でことごとく殺されてしまっている。
人魚姫の涙も、描写が全く無いために説得力に欠けすぎてしまった。
「渇いた人」とか、泣けないから癒されない現代人という着想自体は
非常にまともで本質的だと思うけど、読んだ後に記憶に残らなかった。
テーマが多過ぎたという部分もあったと思う。
それぞれの登場人物が抱えている問題も提示され、解決はされていくのに、
読者に訴えかけて来るものが少ない。
絵の問題と、テキストが主人公のモノローグ/物語に寄り過ぎている点が
問題かなと感じた。
もっと些末なことを、人間は普段考えているものじゃないかなと。
紫子を筆頭に、あまり人間味を感じない、と言えばいいのかな。
小夜ももっと2面性的なリアルさが欲しかったし、
花火職人の孫もゆるぎも、キャラクターとしてあんまりな出来。
夕桜の実はまとも、という部分も声優に頼りっきりな感じ。
主人公とだけはもっと仲間として信頼し合っていた方が、切れ味があった。
結局、面白い物語だからこそ
「もっとこうすれば」という不満も出て来るというもので、
今作については、そういった改善すべき要素がかなり浮き彫りになってしまった。
夕桜や茅ヶ崎征士のキレっぷりは良かったし、
どこから読み返しても熱中してしまう面白さはあると思う。
なので、頑張って欲しいと思います。
次回作楽しみにしています。