完成度の高いSF+キャラゲー。深い優しさに満ち溢れた傑作。
現代社会の中で、様々な制約や苦痛に揉まれながら生きる少年少女たち。
観察され尽くしたリアルさと、
フィクションならではのコメディのバランスが良かった。
テキストのレベルは他の追随を許さないと言ったら少し大げさかもしれないが、
当然のように過去作に比較して洗練されており、重いというよりは、鋭い。
ハードなSFというか、よく調べたなーという脳科学関係のTIPSがズラり。
ただ、SFにおいては理論的に破綻していないことが非常に大切なので、
興味が無ければ読み飛ばしても問題ないと思う。というか理解出来ない。
全体に漂う停滞感、淡い諦念が、絵の淡泊なイメージと合っている。
どこか醒めていて、ヒロインに対しても、シナリオ展開上の戦闘にも
のめり込むことがない絶妙な距離感が心地いい。
CVについてはシンクロ率が高くて素晴らしい。
ただ、沙也香(CV風音)だけはさすがに酷いと感じた。
演技が出来る人に演じて欲しかった。
結局この作品は、「なぜ?」という現代への困惑であり、
多数派への苛立ちであり、
ラストの「明日は、楽しみですか?」には
苦しいのはおまえだけじゃない、という共感に感じた。
ザリガニに留まらず、脳腫瘍にさえ人格を持たせてしまう
奇妙で、でも深い優しさに満ち溢れた傑作。