SFドラマの名作。笑い、涙、人間の強さと弱さ。ここにはその全てがある。
凄い作品だと思う。
絵、BGM、CV、シナリオ、テキスト、演出、全てに隙がない作り。
渾身の一作であり、18禁ADVというフォーマットの理想が詰め込まれていると思う。
とりわけ凄いのは、扱われている・表現されているテーマの多彩さ。
親しくなりすぎて一歩が踏み出せない男女関係、
人とは違うという疎外感からの解放、
封じ込められた自我の愛による自立、
取り返しのつかない犠牲を生んでしまう狭量な憎しみ・恨み、
ロボットと自我について
与えられた力にのみ頼る危険性
無知であることの愚かさ
信頼し合える仲間の素晴らしさ
・・・
軽く思いつくだけでもこれだけあり、
それぞれについて「まっとうな人間として」という視点が
ブレることがない点が胸を打つ。常に、他者への思いやりを忘れないのだ。
これらのテーマに加え、切れ味鋭いギャグ、ラブコメ、バトルが
満遍なくちりばめられているのだから、恐れ入る。
後半では何故かカナ坊の口調まで飛び出し、古い名作へのリスペクトまで表現。
また、脳腫瘍ならぬ心臓の擬人化と、ロミオもうまく料理している。
他に良い部分として挙げなくてはならないのは、キャラクターだろう。
とにかく登場人物の言動がリアルで、人間くさく、まともである点。
萌えゲーとかいう檻に勝手に入り、
意味不明な言動でプレイヤーをイラつかせるキャラは不在。
「事実は小説より奇なり」を地で行く感じ。
キャラ的には全員素晴らしいが、特に凄まじいのはチャペック=Ritaだろう。
声のエフェクトもいい感じだし、オンリーワンの魅力が溢れる快演であり怪演。
あとは主人公。想いが込められた叫び、ボケる時の声色、優しさに溢れた囁きなど
主人公ボイスの良さが極まっている。
もちろん、北都南、一色ヒカル、かわしまりの、茶谷やすらといった
ベテラン勢も最高に安心感のある、味のある演技で素晴らしい。
とまあ、こんな感じでこの作品は名作だと思います。