ErogameScape -エロゲー批評空間-

E-masterさんの車輪の国、向日葵の少女の長文感想

ユーザー
E-master
ゲーム
車輪の国、向日葵の少女
ブランド
あかべぇそふとつぅ
得点
89
参照数
313

一言コメント

ご都合主義な部分が少し目に余るものの、感動への誘導は至上である。

長文感想

背景設定と五章の展開に、目に余るご都合主義が垣間見えるので、そこで引いてしまう人が結構いるかも。
全てのエロゲにはご都合主義が多かれ少なかれあるので、何も強調することではないのだが、
このゲームでは、そのご都合背景が感動話にあまりに直接的に関わってくる点に問題があり、
「感動を呼ぶための舞台設定」みたいな取ってつけた感を、多少なりとも
ゲームをしている人に与えてしまう恐れがある。

ただ、それでいてなお、感動を呼び込めるシナリオ展開、描写の仕方は見事という他ない。
つまり、上記の問題点を感じながらも、その上でなお、感動してしまうのだ。
このことからもこのゲームの語り手の非凡さが感じられる。
また、意表を突く叙述トリックが散りばめられているのも、読了後の爽快感に繋がっている。



ちなみに、背景設定が合わない人は、現実社会の日本にその設定を「そのまま」持ち込んで
考える傾向があるのではないか、と思う。
つまり「現実にこんな制度になることはあり得ない。」とか「これだと破綻するはず。」みたいな感想を抱くのだ。
そう読ませてしまうこと自体にゲーム側の問題があるともいえないこともないが、
ゲームをする側としては、あくまでファンタジー世界として読むべきだ。そっちの方が楽しめる。

ただそうは言っても、ゲームの背景設定は軽く日本社会への社会風刺が散りばめられていて
(例えば「お上の作ったシステム」に飼い慣らされている人々とか、
実際にはお金の多い人や権力のある組織が有利に働く「公平な」裁判システム等など)、
ファンタジーではあるが、所々、社会風刺も織り交ぜているんだなぁ、と
認識しながら楽しめる人は、逆にその背景設定ですら、面白かったのではないかと思う。


p.s.
声優の若本規夫が好きな人は、これやらないとダメです。