設定こそいびつなものの、王道で爽快感あふれるストーリー
天使ルートはシンデレラなどのおとぎ話、
月ルートは小公女や赤毛のアンなどの少女小説の定義に
ぱっちり当てはまっていて、これ本当に男性向けなの?
メタヲさんと丸谷さんが組んで、S男をフェミニストに変える策謀でも練ったの?
と陰謀論を疑うレベルでびっくりしました。
実際、陵辱目当てのS男がリゼットさんに悪心ごと消滅させられたいM男になってたりしますし。
ラストに奥様?がスペシャルサンクスでいましたが、キルケ様並の黒幕だったりしません!?
【天使ルート】
事前に大体話を知っていたのですが、
絶望>希望>より深い絶望>よりよい希望の循環が心地よかったです。
尊厳破壊の描写も、電気による拷問、選択肢を提示したように見せて実は誘導する詐欺師の常套手段など
実際にもあった手口を網羅していて説得力があり、さすがベテランライターさんだな、と感心しました。
最後は文字通りの魔法による奇跡と王子様(光臣くん)の助けがあって、
気持ちの良いラストを迎えるのも少々ご都合主義ですがカタルシスがあって好きです。
悪人を殺すのではなく、「死者の告発」によって罪に向き合わせる
同時にいつかの記憶によって人々が善性が蘇るというのも
みのりちゃんの正義感と優しさを体現していてとても良かったです。
【月ルート】
天使ルートでの不満点が補完されていてすごく満足。
天使ルートでは最後、みのりの新任士官を助けたいという思いこそありましたが、
残雪や光臣などの助けによる所が大きく、みのりが積極的に動いたという印象がないのが少し不満でした。
でも、こちらではみのりは自分の知識や意思、行動で問題を解決してくれます。
光臣くんもこっちのルートの方が人間らしくて好きでした。
最後の別れは切ないけれど……。
このルート、削られなくて本当によかった。
ただ、人造魔法少女の文章が天使ルートとまるきり一緒だったのは、
時間がなかったんだね、と違う意味で涙が出ました。
【余談1:天使ルート七虹ちゃん擁護】
スチルつきでエグいことするし、あれで好きになるのは難しいかもですけど
私はあの七虹ちゃんも好きです。
七虹ちゃんは元々頭が良くなくて、カテドラルに入る前から人生詰んでるんです。
だから、騙されてるってわかってても悟に愛されてるって夢にすがってても仕方がない。
それに「七虹ちゃん騙されてるよー」っていってくる相手も夜の営業相手みたいな醜悪な相手だったので、
本人も心地よく騙されていることができたのでしょう。
ただ、七虹ちゃんはカテドラルでみのりちゃんにあってしまいました。
ひたすら真っ直ぐで、悟の見せる紛い物ではないちゃんとした優しさを見せてくれる人。
でも、本編でも本人が最期に言ってたけどもう限界だったし、遅すぎたんだと思います。
過去の幻影を体現する悟とつらい現実の中の光であるみのりちゃん、
どっちがいいかわからないし、イリューシャほど意思が強くない七虹ちゃんはそりゃバグりますよ!!
悟が「クルクルパー」っていうシーンは本当にスカッとしました。
ああ、こいつ、これで七虹ちゃんに殺されるな、と。
でも、死んでなかった、七虹ちゃんもみのりちゃんに劣らず、優しすぎだろ……って思いましたよ。
悟の頭が吹っ飛ぶスチルは不動の1枚だったっていうの、
メタヲさんの意図とは違うだろうけどスカッとする意味ですごいわかります。
【余談2:その他諸々】
やっぱり、男キャラにも声が欲しかった。
なにげに悟とキャラハンにあったら、と。
悟の声が柿原徹也だったら、七虹ちゃんがメロメロになる説得力あがるし、
クズ演技もうまいから最適なのに!
ガンカタで声あててたし。
キャラハンは死に様が本当に楽しみだったので、声つきで死んでほしかったなと。
天使ルートの静かな描写も好きですが、最期の3発の前の焦りのシーンは声付きで聞きたかったですね。
逆に光臣とキニスンは声がないけど、脳内補完しやすいからいいかなと思ったり。
特にキニスンは大塚明夫やら銀河万丈、若山弦蔵などの声が幻聴のように聞こえます。
あとイリューシャ拷問絵スチルとか
魔法少女たちの70度横顔カットインのスチルが鑑賞モードでみられないのはなぜ!?
グロ嫌いな私ですら、イリューシャのあの絵はミロのヴィーナス的な美しさを感じたのに……。