槐ノ嶼
これほどまでダレずにプレイできた作品世界も珍しい傑作だった呪(マジ)で。
W主人公の両方がおっさん!には度肝を抜かれたが、体験版プレイしたらカッコイイ系の奴らだったから製品版も心配ないだろうと安心したが・・・ ここまで面白いとぁ、諸事情で発売日に手にできなかったのが悔やまれるわ。
文鳴と吐月はもちろん、脇役や名無しモブ、もっと言うと流子ちゃんを計画的に妊娠させたツラは二枚目、心は三枚目役者にすら、紆余曲折な人生を感じ取れる程キャラが立ってた、文句なしの上半期No1世界観だった。
さてこのゲーム
・文鳴編 ・過去編 ・吐月編
の三叉に別れて描写されるのだが、ぶっちゃけ全部読み終えてからがほんへんだよね?くっそ濃密でながーい共通√なんだよなぁ・・・でも途中離脱させないライターの読ませる力は流石の一言ですわ。
以下、主キャラへの雑感をば。
・文鳴啾蔵
初見はなんかカッコイイなこのオジサン。と思ってたが、彼と共にその半生を振り返っていくと何とも人間臭いじゃないの。冷めてるようで実は熱い魂を持ち、最期までブレずに人間の可能性(くそったれ)さを信じて本懐を遂げて逝った漢。隣の流されてきた漢にゃ怨霊をスマホで拡散し、調伏する最新呪法は思いつきもしなかっただろう。
そもそも最終決戦で「世界中にシヅが拡散?知らんな管轄外だ・・・勝ちゃぁいいんだよ勝ちゃぁ」をやって来やがるとは・・・いやなんで俺泣いてンだよ、汚い海水にアテられたんか?
後から思えば、冒頭のタクシーで珠夜に説教してたセリフから、意外ッ!それはスマホ!? は想定できなくはないが。そういう意味でも槐から受け継いだモノをブレずに貫き通した、やっぱりカッコイイアラフィフだった。
・吐月完
文鳴と対になるオッサン主人公の片割れ。あちらがたった一つを引きずるなら、こちらのカンちゃんはより多くを引きずる運命を得てしまったか。
恋人の希美に始まり、偲カノ姫奈はもちろんのこと、文鳴√で逝った腐れ縁の宿敵すらも、なにかに付け振り返りそうだな。
でもそんな“隙”が見えるカンちゃんも好きやで!
・苦松刑部
はい今作のMVPの入場でぇす!みなさん悲喜交交のリアクションをどうぞぉ~!
W主人公との話だったが全クリしてみると、このオッサンも主人公に加えてくれよなぁ・・・な存在感をいつでも放っていた。
まさに七面六臂?七転び八起き?十面埋伏?の大活躍を見せつけきても、あくまでも純粋に「家族とはなんぞや?」を追求していた人生だった。なお周囲の人間。
それは吐月√でも変わらず。
「キサマがお義父さんと呼ぶな、完」しようとしたが、流石に付き合いきれんくなったカンちゃんに「そういうの、もういいから」と義娘付きの腕でワンパンされてアッサリ最期を迎えてしまった・・・もうちょっと付き合ってやれよカンちゃん?正直、俺は見たかったわ、あそこからの昭和風味な古臭いケンカをさ。
・火蛾偲
刑部被害者の会代表。
学生時分からの因縁、そして未来までも苦松刑部というYAMA育ちのイカレに狂わされた悲劇の鬼憑き系ヒロイン。
もっと刑部が家族を勉強しておれば・・・念願のお義父さんムーブが出来たものを。相手が翔真だけど、あのお気楽な性格ならば刑部にすらいい影響を与えれたやも・・・と希望的観測に浸りたいくらい火蛾偲という女は、実にあはれな人形であった。
唯一の幸いは、吐月完という風采が上がらないオッサンの心に残ったことか。
・カノ
世俗の非常識たる因習から産まれ、その環境しか知らなかった故にムラの姦々接待を良しとして育った悲劇の少女。
だが流石に山から降りてきた神々しき淫獣とマグワイヤするのは想定外だったようで・・・作中でも上位の哀しさだが、皮肉にもその経験の全てがカンちゃんらを助ける鍵になってゆくのが。やっぱ哀しいのじゃ抜けねぇんだなと再確認した次第。
・荒忌善次郎
この零細ヤクザの親分も哀しみを背負っていたな。
それは苦松刑部や菊乃、シヅなどがヤバすぎて彼の「呪法」がパッとしなかったこと。普通に生きてくだけなら死んでも身代わり消費で復活は強すぎる。カノの代わりに軍神と懇ろになる√はよ。
本筋にゃ深く関われなかったが、無事生き延びて良かったわ。こーいう賑やかしさん欠けたらキツいねん。
・兎口姫奈
よくいるエロシーン担当ネキじゃ終わらなかった。終わっとけば・・・いやコヤツも二ツ栗の血を引く者。どのみちシヅからは逃げられなかったし、不二彦が“入門”する犠牲になったのだ・・・と考えるのが手向けか。
あと彼女の鬼女への魂の咆哮も考え方の一つだわ。きっと彼女の夜女としてのプライドが叫ばせたんだろう。
・塔婆不二彦
最後まで好青年を貫いた絶対珠夜守護りたいマン。あの祖父からどーしてこう産まれたし。
他ならぬ珠夜を含め下半身で語る作品世界において、彼だけはソレを用いずに職責を全うしてみせたのだ。4コマ漫画・あっぱれ不二彦くん、三巻まで続きそう。
文鳴√にて呪術師への道を歩むが、漸く己を見つけた彼の伸びしろは案外広いのかもしれないな。
【二ツ栗家の一族】
自業自得家族。お前ら万引き家族じゃのうてドン引き家族じゃヴォケェ。シヅちゃんが何したんだよ!まさに「何の罪もない」って奴だろうが。親子揃って犠牲にしくさりよってからに。
だから終盤、刑部によって嶼民が“復讐”へ走っても同情なぞ微塵もなく、むしろ加わりたいくらいだったわ。ざまぁ
・晴茂
一族の内で流子ちゃんを除けば唯一同情できる御仁。だからって蛭と金平糖だけは簡便な!
彼は御国の為に頑張っただけなんだよなぁ・・・もう少し早めに介錯してやるとか考えなかったんか当主様は?
・珠夜
序盤は貧弱娘。中盤からカラダを使ってでも一族の業を背負う若干二十代の娘。しかし悲しいかな、叔父に股を開いてても、文鳴を受け入れても興奮できなかったわ。そら、俺の目的は徹頭徹尾、彼女の叔母だったからね。許せェ珠夜ぅっ。
・宗孝
悲しきエロオヤジ。満足に竿役にもなれずイクとは抜きゲーの面汚しめ。この嶼では半端なぐへへ根性じゃ生きてイけんてこっちゃ。この種無しブドウはもう少し自分ちの呪術に関心を持っておれば・・・仕事はちゃんとしてたのになぁ。
・菊乃
よっ二ツ栗中興の祖()。絶対地獄回避したいBBA。殆どこいつの小細工のせい。利用できるモノなら生死問わず使い倒す精神は立派だが、仮にも呪術に通じてるのならばシヅの顛末も予想つかんかったんか?と考えちまうのは結果論だわな。
もしシヅとは逆に、彼女が晴茂の元へ送られたらどうなっていたのやら・・・案外上手く乗りこなせたかも知れない?
それにしても死にゆく実父に「お前は呪術界の敗北者じゃけぇ」と言える幼女って・・・ハァハァ
・青沼シヅ
最大の被害者にして加害者。
同情の余地しかない薄幸な娘。そらあんなん誰でも恨むわ。
せめて晴茂が最初の事件を起こした時に“介錯”されてれば、犠牲は親父だけで済んだし、シヅも文字通り末代まで祟らなかっただろう。
また、一緒に育ち、二ツ栗へ引き取られたのが菊乃だったことも不幸。同じくらい不器用ならば違った道もあっただろう・・・そこに光が差すかは知らんが。
・槐(二ツ栗流子)
文鳴「俺の母だったかも知れない女だ(姦通済)」
うすうすは感じてたが、マジでそうだったとは!で、当然そんな二人の間にも顔を出す菊乃め。
オイ刑部、これが「家族」ってモンや。地獄にVHS送っとくからよーく勉強しとけよ?
菊乃の掌の上とはいえ二ツ栗一族なれど純情に育ち、一度それを壊されるも、文字通り生まれ変わって束の間だが文鳴と家族ごっこ出来た――この作品世界ではマトモ枠に入るキャラだったな。
☆まとめ
呪いという古典的なネタを二人のオッサンを通じ、令和に向けて格好良く描いてきたから大満足よ。さらに実在したネタや、拡散されたシヅの呪いがコロナ禍に繋がるオチは、俺らの現実を『鏖呪ノ嶼』が侵食している感が出てて薄ら寒くなったわ。
ヴォリュームは丁度良く、キャラ的にはどこまでも刑部が印象強く、ともすれば主役を喰いかねないレベルだった。できれば三位一体となって青沼シヅに対する√も見たかった。
あぁ最後に――恋した流子ちゃんは貰っていきますね呪で!