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AtoraさんのD+VINE[LUV]の長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
D+VINE[LUV]
ブランド
アボガドパワーズ
得点
90
参照数
547

一言コメント

最近のRPGというのは、DQやFFに見られるように次々とストーリーをこなしていくことで物語が徐々に推移し、全容が明らかになるという形態をとるものが多い。だが、ただただダンジョンを潜っていくRPG形態(所謂D&Dの形態)は、昨今数少ない。この作品は、もはや少数派となってしまったD(ダンジョン)RPGとAVGが融合したPCにおける最期の牙城であろう。惜しむらくは、浦前代表が亡くなり制作元が経営危機にあるという事実。大々的に騒がれた作品ではないし大作というわけでもなかったが、その完成度の高さからアボパ不朽の一作と言える。これを、エロゲーという閉鎖的ジャンルで制作した事に賞賛の意を表したい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 PCゲームにおいて、DRPGで良作あるいは名作と呼ばれているものは、私の記憶の中では数少ない。
たとえば、原型と考えられる『Wizardry』や『Xanadu』(日本ファルコム)などが当てはまる。いずれも古い。
この時期の作品は、難易度が現在ほど低くはなかった(とくに『Xanadu2』はキー操作に難があったような…)

 すなわちゲームの没入度が現在よりも高かった。まあ、昔の作品の難易度が高すぎたとも言うが。
なんにせよ、このジャンルは謎解き要素の低下やゲームの単純さから来る作業性のために、
凝ったゲームを制作するようになった昨今になっては、その姿を次々と消していった。
この作品は、その潮流からよいもの同士を融合させた「中継ぎ的作品」として位置づけたい。


 さて、今作で評価すべきところは主に3つである。
 その1つは、DRPGに欠けていた一度きりのプレイという難点を、コレクター魂をくすぐることで解消した点。
以前にもこういう作品はあるにはあったが、コレクションの数が中途半端だったり、
ゲームシステムが作業化して二重の意味で作業になってしまったりするケースが多々あり、
残念な出来のまま世に出た作品が多いことを忘れてはならない。

 だがこの作品は違う。
 まずそのアイテムの数が凄まじく多い。さらに、‘レア’というアイテムがたいして強くもないのに多い。
ユーザーの中には‘レア’という言葉に弱い人もいる。
とくに、コレクションオタクやコンプリートオタクにはたまらない!
なにがなんでも集めてやろうとする人も、「レア」の箔のおかげで「よっしゃ、集めてやるぜ!」という気になるのではないか?

 私は、どんなゲームもシナリオに引き込まれるかゲーム性がよくなければ、そのまま放置される運命にあると思う。
この作品は、RPGということもあって後者が非常に重要なのだが、その素晴らしい操作性には感嘆するほかない。
キーボード操作をメインに作られた割に、マウスでも操作できるし安易に遊べる。
さらには内容も面白いときたら、誰しも文句は言えないだろう。
これらの操作性とアイテム探しとが見事なまでに調和し、アイテムコンプを目指した人は多いと思う。
この作品を語る上で、上記は欠かすことの出来ない要素となってくる。

 エロが薄いという指摘のとおり、濡れ場はかなりラフに描かれている。
しかし、このシステムはそれを補って余りある。


 さらに、昨今の「ノベル過多」の流行を念頭に置くと、クリエイター諸氏の労苦には、万雷の拍手を送るべきだろう。
RPGやSLGが日増しに敬遠される中、「エロゲーでここまでの事が出来るんだ!」ということを再確認した。
会社存続の望みが殆どないのは残念で仕方ないが、後年になって、きっとこの作品の評価は上がってくる。


 発売して4年も経つし、決して大作ではなかった。
だが、エロゲ史の中でも三等星くらいの輝きを放ち続ける1作だろう。
出来に反して、プレイヤーがそう増えなかったのは痛感の極みだった。
この作品、実は『魔界戦記ディスガイア』(日本一ソフトウェア)のような「中毒性重視」のゲームが出た今となっては、
エロゲーの中では埋もれすぎなのかもしれない。

 度々この作品をプレイしたくなる時がある。
本当に楽しい、世に語り継がれてほしいゲームというのは、そんなゲームではないかと思った次第である。



【雑談】
 若い世代がこちらの世界(?)に入ってくる門となるには、知名度が無さすぎるかもしれません。
Hはそう濃くないですし、動作環境面も厳しくないので、一般に伝播してほしい作品です。