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Atoraさんのアマカノ2+の長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
アマカノ2+
ブランド
あざらしそふと
得点
95
参照数
2222

一言コメント

ユーザー側の需要をよく把握して、これ以上なく丁寧に仕上げた作品。アマカノシリーズが目指した頂に登り詰めた、たゆまぬ努力と研鑽の結晶。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

アマカノシリーズは回を重ねるたびに欠点を解消してきた。
分かりやすい点で言えば、当初、ハート目は実装されてなかったし、
いざ『アマカノ+』で実装された時も、単に快感のシンボルという印象が強く、
魅力的で平易な筋書きと一線級のキャラクターがありながら、100%の力を出せていなかったように思う。
ところが、今作では殆ど満点に近い回答を出してきた。


ヒロインとの恋路を存分に感じられる恋愛劇と結婚その後。
これこそユーザーが常日頃から求めていたシチュエーションやストーリーであったわけだが、
本作では、テキストの力やCGの技術も9年前から飛躍的に向上しているのが見て取れる上に、
主題歌や挿入歌などの力の入れようも文句のつけようがないため、作品が持つ説得力は極めて高くなっている。
CGや背景もさることながら、とくに本作は、シナリオ面の爆発力が期待以上だったと言える。

ストーリーはオーソドックスだが、夏の恋人たちの幸せな恋模様を描くだけでなく、その後の結婚生活から子作り、
家庭の構築までを余すところなく描き切った。まさに至れり尽くせりの内容であり、
エロゲとしての究極地点をヒロイン全員に完備した「ユーザーに求められた物語」の集積と言えるだろう。

各ヒロインの最後(ちとせは一つ手前)のHシーンでは、この性行為が意図的な“子作りのための儀式”であることが示される。
母性的な雰囲気を醸し出すちとせにいたっては、その後で妊婦での濡れ場も完備するという力の入れようだ。
さらに、生まれ育った子供と一緒のエンディングCGがヒロイン全員に用意されており、
彼らが終生幸せであろうことは各ストーリーのエンディングから見ても明らかだ。
プレイ時間にしてわずか数分のためだけにCGを4枚割いていることから、主題もおのずと明確になる仕掛けである。
これ以上の展開と物語としてのフィナーレは、恐らく望むべくもない(老いた先のCGを用意すると批判が出る)

Hシーンはすでに恋人関係にあるヒロインこそ、(こういう表現が正しいかはともかく)ハート目の点灯もいち早く、
ある種の快楽堕ちのような感も強いが、ヒロイン視点から主人公へとHシーンの視野が移り変わることで、
単に男の独り善がりではない、熱烈な愛の籠もった和姦としてユーザーも自然に受け止め、すぐに同調できるだろう。
これについては、過去から大いに改善されている点と言ってよい。心が身体に付いてきたのである。
それに輪をかけて、ピロ水さんの描く美少女の舌なめずりや上目遣いは本当に妖艶そのもので、
女の子の蠱惑的な側面を一段と限界突破させてくるから、実用性もすこぶる高いものとなっている。
なお、咲來に関しては見た目通りと言ってはなんだが、アグレッシブなHシーンを堪能できた。


テキスト部分については肌や肉の触れ合いを意識した表現が多く見られ、
官能小説ばりに前作以上の実用性を目指した印象がある。
その象徴的なものとして、やや機械的かつ画一的に映るステップアップではあるものの、
「おち●ちん」呼称から「おち●ぽ」呼称へと変化したことが挙げられる。
Hシーン中に変化するのも、ヒロインの心情の移ろいを窺えて大変よい。
性器の呼称一つとっても、ヒロインの普段の容姿や清楚感が醸し出す限界値、
各ユーザーが許容できる下品さの幅など、微妙なバランス感覚が大切ではあるが、
この作品は全員が「おち●ぽ」呼びに変わることから、「前作よりもかなり攻めたな」という感覚を直感的に抱いた。
個人的には、ヒロインによってはもっと下品な方に舵を切ってもらってもよく、
それで画一的な性器呼称からは逃れられたのではと愚考する次第だ。

ただ、全員が結婚して幸せな家庭を築くというところまで一貫して描かれているということは、
もちろん下品なHがマストな要素というわけではなく、
ある程度の実用性とヒロインの平等性などを秤にかけた結果と見ることができる。
実用性に期待したベテラン勢としては、朧げながらもスタンダードを意識したつくりになっているのが見て取れ、
そこが少々気になってしまった程度の話ではある。ピロ水さん絵のハート目はあまりにもエロいので、
「ち●ちん」は「ち●ぽ」に進化してほしいし、乱れた時にうっかり「ち●ぽ」発言してほしくなったのは私だけか。

それでもなお、この作品は最高と言える。こんな「ち●ちん問題」で評価は下がらない。

作品の勝因としては、マイナス点の少なさも挙げられると思う。
恋から愛へと至る行程を丁寧に、大小の思い出やエピソードとともに描き切った本作には、隙というべき隙がない。
展開に関しては大きな不満がないし、事実上の前後編である二~三部構成というボリューム感も十分で、
ヒロインとの生活時間がすこぶる長く感じられた。そして何より、不快な場面にただの1つも遭遇しなかったことが、
評価を下げようと思わない要因になっている。好きなヒロインはユーザーによって違えど、
いずれのルートも概ね平等に、ストーリーは無難に、そして濡れ場は艶やかに描かれていると感じた。

王道的な結灯、神秘的な玲、母性的なちとせ、活動的な咲來。
それぞれの魅力がたっぷりで、理想の恋愛模様と結婚生活が所狭しと詰まっている。
『アマカノ2』をプレイ済みであれば、そこで登場したヒロインの魅力が一段と熟成されたのは喜ばしいことだと思う。
そして、そこに新たに咲來が加わり、属性も強化された本作はもはや万全の武装と言ってよい。

普通の純愛であっても、丁寧にそして誠実に描けば、
ここまで高品質の作品が作れることを眼前に突き付けられた。
いつ頃ぶりだろうか、普遍的でいて素晴らしいクオリティの作品を堪能できたように思う。
何年後になるかは分からないが、『アマカノ3』が発表されたら、私はまた呟いてしまうことだろう。

「こういうのでいいんだよ」と。



【雑記】
・咲來ちゃん派ですが、ちとせの魅力にも気づかされました。
・過去作のヒロインをうまく登場させてるのもシリーズファンには嬉しいかも。
・お風呂のシーンでは咲來と結灯で設定温度を変えてあったりして、ここら辺も芸が細かい…。