過去作の甘イチャな雰囲気と軽妙なキャラ同士の掛け合いを生かしつつ、2023年のテキストとビジュアルでブラッシュアップされた子作り上等な紗凪ルート。これこそが本作の正体である。
何よりもまず「紗凪ちゃんって、やっぱりこんなにエッチだったんだ!!」というのが正直な感想だ。
PSP版で初出の「赤ちゃん産みたい」発言は、決して伊達でも酔狂でもなかったのである。
C83の“紗凪ニーCD”からはや10年、この作品の発売を待ちわびたユーザーは多かった。
そう考えると、色々なユーザーの思惑を背負いつつも、一定の期待に応えたと言っていい内容だったと思う。
思い起こすこと2009年、私が当時『ましろ色シンフォニー -Love is Pure White-』をプレイした感覚では、
決してエロい作品という認識はなかった。むしろ、大部分が糖質で構成されたキャラ同士の掛け合いが楽しかった。
ところが、当時の濡れ場に対する意識やピー音、伏せ字といった諸般の事情を鑑みて本作と比較するに、
本作における濡れ場での紗凪の乱れようは、2009年の各ヒロインのそれよりも明らかに一線を画している。
明らかに濃いのである。……みう先輩の蛇口発言は、Мな人にグサッと刺さったかもしれないが。
もっとも昨今の淫語事情を考えると、本作はまだまだ控えめな表現で、
「おち●ちん」&「おま●こ」をピー音、伏せ字なしで喘いでくれる程度のものだ。
とは言え、“あの紗凪ちゃん”が女としての本能と愛欲をむき出しにして、
涙目になりながら自我を失うほどに甘く、そして情熱的なセックスで乱れてくれる……。
シリーズのファンからすれば、これだけで胸いっぱいの感動と興奮を得られることだろう。
俗にいう、“夢にまで見た”ナントカというヤツである。
仮に今よりも早い時期に“R18版の紗凪ルート”が制作されていたとしたら、
本作ほどエロくは描かれなかっただろう。もっとマイルドな性描写だったに違いない。
それに、ここ数年の『9-nine-』でのぱれっとのHシーンの筆致を考えると、
特にベテラン勢にとっては、相対的に濃い目の味付けを堪能できたのではなかろうか。
ただ1点、Hシーンでの動画は実装しなくても評価に影響しないと個人的には思えた。
いくら紙芝居と揶揄されようが、本格的なアニメとAVGはきちんと棲み分けをして、
動画の代わりにエピソードやHシーンを追加してほしいというのが、2023年現在の本音である。
マンネリ化した現状をなんとかしたい思惑は見え隠れするが、
特定のメーカーや作品を除いて商業ベースで必須レベルだったためしがない。
(あくまでも、“なくてもいい”という考え方で、ない方がいいとは言わない)
これまでの“ましろ色シリーズ”の変遷を考えると、本作は当時の良質なラブコメ感と軽妙なかけ合いを残しつつも、
一部のテキストとビジュアルが“2023年式のましろ色”を体現していて、過去の文体とミックスした点が実に興味深い。
2009年と2011年に初出のテキストには実力が備わっており、楽しくプレイできたのは先述の通りだが、
本作での追加部分と過去に制作された部分との不整合性は殆ど感じず、制作陣のバランス感覚の良さを感じる次第だ。
それほど、テキストに隔世の念を抱かせなかったのは、もはや作品の強さを物語っているとしか思えない。
つばすさんの絵も然りである。
ゆえに、今からでも原作未プレイの人が本編をプレイする価値は間違いなくあると断言したい。
2009年当時のプレイヤーが14年の時を経て共通ルートをプレイして得たものは
セピア色に褪せた写真ではなく、懐かしくもビビッドな感覚だったのだから。
そして、原作は当時のエロゲーの甘味を凝縮した作品であったのだが、
その前後のメーカーのラインナップを見るに、やはり初代ましろ色は、
ぱれっととしてのターニングポイント的な作品であったんだなと強く思う。
こちらで投稿した拙い自分の感想を読み直して、私自身が無印発売当初からそう感じていたことも懐かしく感じた。
最後に。こうして14年前の作品のFDを評価できるのは、嬉しくもあると同時に寂しくもある。
ただ、事実として『ましろ色シンフォニー』という世界はどこまでも優しい物語が広がっていて、
時を経ても暖かいままだった。これは、誠に喜ばしいことではないか。
本作を含めた一連の作品が、後世に語り継がれる名作として、
エロゲー史上に脈々と語り継がれることを願ってやまない。
【雑記】
・ぱんにゃは10年経ってもかわいい。『ましろ戦隊ぱんにゃマン』を聞きながら感想を書きました。
・無印発売から14年経っても、同IDでエロゲーの感想を書いてるとは思っていませんでした。