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Atoraさんのアマナツの長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
アマナツ
ブランド
あざらしそふと
得点
79
参照数
783

一言コメント

オーソドックスな初心者向けの作品。悪く言えば代わり映えのない、良く言えば安心して読み進められる恋愛模様の描写が強み。季節感を感じられる水着Hと夏服Hはもちろん全員完備。エロゲーとしてありふれてはいるけれど、なくては始まらない。そんなお約束のシーンや描写を堪能したい方にはうってつけの、夏の佳作である。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 私はあまりイチャラブ作品でライター買いをしない性質なので、他社と比べてシナリオがどうとか、
このライターにしてはどうとか、その手の混み入った視点は持ち合わせていない。
そんな私が思ったままを述べるとしたら、「テンポが良くて、イチャラブも楽しめる良質なラブコメ」ということに尽きる。

田舎を舞台にしたスローな時の流れを感じつつ、
ヒロインとのイチャラブや友人たちとの掛け合いを軸に物語が進むので、物語のテンポが抜群に良い。
プレイ時間も多く見て20時間前後とほどほどの長さで、ダレることなくプレイできるだろう。
この緩やかで甘酸っぱさの感じられる雰囲気を心行くまで楽しんでほしい。

さて、このようにあまりシナリオについては多くを語れない。
雰囲気を味わうべきゲームでその内容を詳らかに考証するのも、興を削ぐと思うからだ。
その代わりと言ってはなんだが、キャラクターとボイスについて紙幅を割こう。

この作品では、メインヒロインの一人である雨晴こがねの存在感が抜きん出ている。
彼女がヒロイン枠としてだけでなく友人枠としても活躍するので、体験版をプレイしたり、
このキャラクターのサンプルボイスを聞いて直感的に何か感じた人は、恐らく買いの一手で間違いない。
秋野花さんのボイスは緩急が効いていて、桐谷華さんと同じく行間を読むスペシャリストの一人だと思っているが、
この作品における演技も例外ではなかった。こがねがサブキャラクターなら、間違いなく泣いていた。

その反面、青山ゆかりさんがミスキャストという声も少なからずあったようで、かく言う私も違和感があった。
もちろん声の好みは人それぞれで、熱烈なファンやAXL作品で慣れている人、
もしくは“ゆかり教育”を受けていないビギナーさん等からすれば、
「え、何言ってるのこの人?」という冷ややかな反応があるのも頷ける。

私は、『カミカゼ☆エクスプローラー!』の祐天寺美汐が演技している錯覚を覚えてしまい、
単純に経験上の問題で合わなかった。また彼女の出演作品のうち、個人的に70作品以上はプレイしており、
独特の声質を聞き慣れすぎたためでもあるだろう。ただし、ゆかりボイスの赤髪ポニテでも、
『真剣で私に恋しなさい!』の川神一子の時は違和感を感じなかった記憶があるから、
人間の感覚というものはなかなか難しいものである。

なお、こと赤髪ポニテのツンデレ風味のキャラに限って言えば、
『あの晴れわたる空より高く』の暁有佐で、同様の評価を多少聞いたことがある。
ひょっとしたら、この手のキャラは萌える属性が絞られすぎており、
案外演じるのが難しい役どころなのかもしれない。

なお、夜雪役の甘利ろろさんについては、大人の事情であまり多くを語れないのだが、
クールなキャラクターに感情を乗せるのが上手くて、特にHシーンの妖艶さは、
肉感的なCGと相まって安定感が凄かった(…としか言えない)

 このように、声優さんの好みを除けばストーリーに大きな浮き沈みはなく、CGのクオリティが高くて、
Hシーンも定番のイチャコラHが揃っているとあって、純愛ど真ん中の内容が盛りだくさんだった。

あざらしソフトの『アマカノ』シリーズよろしく、丁寧な恋愛描写は毎度のごとく高評価。
歴戦の猛者にはやや物足りないかもしれないが、初心者には安定してお薦めできる一作と言えるだろう。


【雑記】
巷で言われている“矛盾点”は、「イチャラブを楽しみたいから目を瞑る」ことにしました(本当は気にすべき)

E-moteでキャラクターを動かずよりも、漫符を充実させたり立ち絵をコロコロ変えた方が、
コミカルなストーリーをより充実させられたのではないかと思いました。

クイックセーブする時に個人的に音割れしてしまうのですが、
こがねちゃんは何と言っているのでしょうか…。
「セーブは大事です、セーブは~…あうぅ~」と言ってる?