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Atoraさんの幻燐の姫将軍2 ~導かれし魂の系譜~の長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
幻燐の姫将軍2 ~導かれし魂の系譜~
ブランド
エウシュリー
得点
90
参照数
520

一言コメント

システムに注目が集まりやすいのは無理もない。とても均整の取れたRPGに仕上がっていると思う。だけど、本当に注目すべきは「ディル=リフィーナ」という架空世界。キャラクターのエピソードを掘り下げず、世界観から掘り下げていく。壮大なファンタジードラマの嚆矢はそこにある。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 『幻燐の姫将軍』からの明確な志向性、広大な世界設定、作品のリンク。回を追うごとに、重厚になっていく「ディル=リフィーナ」世界の嚆矢的な存在。地理的な広がりを見た。私の評価は著しく高い。


◆システム◆
 何よりもやり込める。コンシューマの『ファイアーエムブレム』や『ティアリングサーガ』といったコンシューマの名作と比較しても、なんら見劣りしないことが大きな強み。お気に入りのキャラクターを育て上げる喜びは何物にも代えがたい。難易度も絶妙。


◆シナリオ◆
 軍記物としては力作。編年的に物語するため、ヒロインのサブイベントに欠ける。心の機微を描けておらず、主人公とヒロインの距離が分かりにくいのが難点。とは言え、登場人物の数を鑑みれば、決して雑な仕事とは言えないはず。
 それよりも、ディル=リフィーナの地理的拡散に、このシナリオは多大な役割を果たした。この世界がキャラクターを産み落としたのであり、キャラクターが自然発生したのではない。そう言えるほど、緻密で魅力的な世界が広がっている。


◆エッチ◆
 「濃密なエッチシーン」とOHPでも謳っているように、シーン回想は当時としては相当なもの。尺はそんなに長くないが、不特定多数のユーザーの嗜好に答えられるよう、色々な属性のキャラを用意している。この時代にして、この数は合格点。

◆音楽◆
 オープニング曲はなかなか。全体的に見ても、及第点を与えられる。


◆総評◆
 非常に完成度が高く、エロゲーRPGの入門として良好だ。操作性に時代を感じるが、全体的に見ても、現代のゲームとして通用する。世界観の広がりについて、いま一度再評価を促したい。



【雑談】
 今までは、明らかにコンシューマのほうがゲーム性では優れていました。しかし、今やその幅は狭まりつつあります。コンシューマとエロゲーのゲーム性の溝を埋める事は、業界にとっても損ではないはずですから、少し目線を上げてやる必要があるのかもしれません。