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Atoraさんの妹を汚した記憶の長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
妹を汚した記憶
ブランド
はむはむソフト
得点
80
参照数
1591

一言コメント

凌辱は、理解できないからこそ、背徳感が増幅する。粗削りな部分も多いが、はむはむソフトの可能性を感じさせたミドルな秀作。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 その昔、妹に欲情して精液をぶっかけてしまい、以後それがトラウマに……。「やや、ちょっと待って!?今のは日本語かい?」と、この時点で誰もが思うだろう。だが、この男ときたらそれだけでは飽き足らず、後になって、「妹」はおろか「従妹」にも手を出そうとするんだよね。なんてド畜生だ。許すまじ!!

 このように、主人公の行動は善悪の概念が反転しない限り理解できない。きっと大勢の人がプレイして嫌悪感を催すと思う。一応、注意喚起をしておくと、リアル妹持ちや妹幸福至上主義の人は、何があってもこの作品をプレイしてはいけない。そう、たとえ世界が滅んでもだ。


思い出の全てを俺自身の手で片付けて、過去を清算する。
いつも見る、悪夢から解放されるために。(本編より)

これは主人公の深刻そうな独白なんだけど、やはりクズはどこまで行ってもクズである。「俺という奴は一体何ということを…!」と一見幼き日の過ちを反省しているように見えるが、黒き欲望に負けて、と言うよりも忠実に従って、ヤリたい放題ヤっちゃうのであった。色々な分岐の先を読んでみると、主人公の人格を真っ向から疑うストーリーが多いのがこの作品の特徴。そもそもトラウマの当事者である妹とヤっちゃう時点で色々とダメだと思うのだが、この主人公は予想の斜め上を行く。妹を孕ませた上で従妹をオナホ同然の扱いで飼っちゃったり、別ルートでは従妹の恋心を一方的に利用して、汚して、犯して、孕ませた上でヤリ捨てちゃったりと、一度タガが外れたクズ男は性欲モンスターとなり、果てなき非道の罪を犯し続けるわけだ。トラウマを都合よく自己解釈し、もはや自分を見失っているとしか思えない。

 これがバッドエンドだけならまだしも、ハッピーエンドでも主人公は妹や従妹に手をつける。妹とナマハメ×ナマナカまでいたして、なぜかハッピーな子作り&結婚まで行ったり、従妹をヤり倒したにも拘らず、その従妹に救われて強引にお互いが幸福な道筋を見つけたりする。トラウマと向き合って妹とセックスするくだりについては、何度読んでも心理的によく分からない。そして、「我慢できませんでした。反省はしている」とお決まりの悔悟しかできないあたり、常に意志の弱さを感じさせるから、どのルートでも胸糞悪いったらありゃしない。抱える苦悩は実のところ浅かったわけで、正真正銘、こいつはどうしようもないクズと言える。

 そんな救いようのないクズ男クンは、きっと君子豹変よろしい性格の持ち主なんだろう。その証拠に、選択肢でバッドエンド行きの選択をしてしまうと、理由もなしに突如として人格が一変する。「おい?お前いま、ヒールの仮面をかぶり直しただろ?」と思うほどドス黒い発言が、それはもう、本当に唐突に湧いて出てくるのだ。「誰だお前」と思った。

 とくに、従妹ルートにおける「彼女を汚してやりたいと思った」という選択肢は、控えめに言って主人公を殴り倒したい。そこはほら、恋人として付き合うだけで救われるじゃないか。にもかかわらず、あれだけのトラウマ&反省ぶりを冒頭で示唆しておきながら、この男は鬼畜じみた所業を犯す。僕は「ロリキャラには幸せなエンディングが似合うな」と思っているから、秋桜香と暁には幸せになってほしい。でも、この主人公に幸せは訪れてほしくない。だから、2人と付き合わず都心へ戻る話こそ、最もそうあってほしい現実的なトゥルーエンドだと思っている。エロゲー的にはバッドorノーマルエンドではあるが。

 まあ、主人公に対しては正直“クソ”以外の感想が湧いてこないし、僕自身が暁推しなもんで、どうしてもそういうハッピーエンドを喉奥から欲してしまいそうになるのだが、この作品は、その類の評価を求められるタイプの作品ではない事も承知している。実際、純粋無垢なロリ妹やロリ従妹が堕ちていくところは、背中がゾクゾクする展開が多い。「あーあ、ヤられちゃうんだあ」という一種の哀れみと傍観者としての不純な喜びだろうけど。これは自分の好みと矛盾するところではあるのだが、テーマであるインモラルを堪能するって“そういうこと”だと思うから、そこに嫌悪感を抱くのは無粋なのだと無理やり自分を納得させていた。つまり、この主人公がどれだけクソであっても、自身の評価にはさほどマイナスには働いてはいない。

 むしろ、そのクソっぷりをエロCGとテキストで盛り上げてくれる方が評価しやすい。端的に、秋桜香と暁といういい子が主人公の餌食になるという構図でこの作品は成り立っているが、そんないい子を好き放題にできるから、読者としても“たまらない”わけである。だから、秋桜香や暁を堕とす過程でいかに酷いことができるか、エロいことができるか、幼子の肢体を開発できるか、そしてどうやって復讐されるかが評価の肝なのだろう。

 その点、主人公のゴミさ加減やエロボイス、背徳感、実用性という点ではかなり満足できたのだが、どうにも堕ちていくシチュエーションに乏しいのが難点というか、スカスカというか……。ちゃんと物語は理解できるし、インモラル成分も存分に感じられるんだけど、今ひとつ読み物として物足りない。この背徳感を愉しむための凌辱シーンには多数の候補があったと思うし、おそらく、その候補の中からいくつか採用して詳細なシーンに仕立てたのだろう。ただ、それを考えても、堕としていく描写がストーリー的にもCG枚数的にも一足飛びになっている気がする。月日過ぎ去り型のモノローグに頼りすぎて、明らかに濡れ場を描けそうな部分での空白や省略が多いのは残念だ。とくにお互いが性的関係を持ってからの展開が不必要に早すぎる。大小の出来事があって、ゆっくりと秋桜香と暁が堕とされていく様を見せつけていれば、抜きゲーとしては元より、もう少しシナリオ面での支持を得られたかもしれない。

 3Pルートなんて、主人公のクズっぷりは最高潮だわ、秋桜香の悪魔っぽさも垣間見えるわ、もっと豊富なシチュエーションと分岐がありそうなだけに、色々と惜しい。ひとまず、暁バッドの主人公は百合っ子がぶっ倒すのではなく両親に殺害させておき、百合っ子の話を削ってでも、秋桜香&暁の3Pバッドルートをより作り込んだ方が良かった。そこが一番、この作品のメインテーマと密接にかかわっていると思うからだ。

……まあ、ここらへんは僕の個人的な希望であって、ヴィーナスの欠けた腕を、自分勝手に継ぎ接ぎして理想の形を妄想しているだけかもしれないが。分量不足と言うと語弊があるかもしれないけれど、物語の簡素化に関しては、たぶんミドルプライスということが若干影響しているんだろうなあ、と邪推しなくもない。

 ともかく、可愛いロリっ娘を舐り尽くしたい黒き波動に染まってしまった御仁は、タイトルのように妹たちを汚して、性欲を発散させるのもいいのではないか。そう思える作品であった。



【雑記】
 暁が純粋に幸せになる話は、この主人公の性格から言ってありえない。主人公が暁にまったく手を出さないルートにて、彼女が幸せになってくれていることを願うのみ。