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Atoraさんの学校のセイイキの長文感想

ユーザー
Atora
ゲーム
学校のセイイキ
ブランド
feng
得点
79
参照数
1586

一言コメント

価格帯を考慮するならば、極めてコストパフォーマンスに秀でた作品と言える。一連のシリーズ全体の兼ね合いに鑑みて評するならば、世評に毒されたために主体性を失った作品と言える。分割スタイルの良い点と悪い点を示唆してくれる教本的存在。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

攻略対象ごとに分割する作品はユーザーの懐には優しい。
だが、その反面、作風がブレやすい側面を持っていると思う。
メーカーが世評を参考にすればするほど、その深みに陥る気がしてならない。

この作品は、単体として見るならばたいへん優秀である。
SDを含むCG枚数は42枚、Hシーン回想数は18箇所。
しかも、原画家には巷でたいへん人気のある涼香さんを起用。

コストパフォーマンスを考えるなら、十分すぎるボリュームとクオリティだと思う。
また、絵柄以上に濡れ場のテキストは抜ける方向性を意識している。
実用性においては、どのfeng作品よりも群を抜いて高い。
ケチをつけること自体、贅沢の極みなのかもしれない。

一方で、セイイキシリーズをひと纏まりの作品として考えた場合に、どうにも収まりが悪い。
同じシリーズのはずなのに統一性を感じにくいのは、作品ごとに抜きゲーと萌えゲーの成分が異なるからだ。
抜ける成分と萌える成分を【抜き:萌え】として比べるなら、

・『彼女のセイイキ』 6:4
・『妹のセイイキ』  3:7 か 4:6
・『学校のセイイキ』 7:3 か 8:2

くらいに見える。

これこそが分割の弊害ではないだろうか。
ユーザーの反応を見ながら……、作り手のモチベーションを保ちながら……。
世の中の評価をその都度受けてしまうからこそ、求められている方向へとシフトせざるを得ない。
その結果として、凸凹のある作品群になってしまうという寸法である。
小回りが利く作品ならではの悩みと言えるだろう。

私は、当初からセイイキシリーズを抜きゲーと捉えていたので、3作目は好みと合致している。
しかしながら、レビュアーとして考えた時、1作目から今に至るコンセプトが曲線化していることに嫌でも気づかされる。
比較的フェチシズムに富んだ1作目、1作目と比べてエロが薄味になった2作目、そして2作目から極端にエロに振った3作目。
従来のエロゲーでは考えられない不統一感であるが、それもまた由しとすべきなのかもしれない。

だが、“仲人口はほどほどまで”とも言う。
ユーザーに楽しんでもらうという前提はあるが、作り手が作りたいものも提供していただきたい。



【雑記】
価格は以前よりも1000円上がってるんですよね。
「ヒロインが2人いるし、これくらいならいいか」と思わせるのが数字のマジックでしょうか。

実質的に4キャラで7000円程度になり、フルプラと大差なくなってきましたが、
回想数が取れている分、私としてはこちらの作りの方が好きです。
好きでもないヒロインはやらないというユーザーの存在を思えば、
プレイしなくとも大丈夫なルートがある場合、この実験的な手法を歓迎したいと思います。

それにしても、姉のHシーンボイスが凄く獣じみてました(好きですが)。
今後、姉妹丼が来た時にギャップがありそうです。