劇的ビフォーアフター。最初は中途半端なスルメゲーという評価で、噛みづらい割に長持ちしなかった。修正パッチが出てからは、この評価が一気に覆った感がある。エウ特有の無双ゲーになってしまいがちなのが玉に瑕。
噛めば噛むほど甘くなるスルメみたいなゲームのひとつ。最初のうちは、「なんだこれ」って感じで旨みがない
けれど、辛抱強く続けていくと、一部の人はいつの間にかハマっちゃう。コイツはまさしくその類だろう。
スルメゲーの例に漏れず、とっつきにくさは折り紙つき。序盤の戦闘では、爽快感があんまり感じられない。なん
というか地味。内政でも、はじめは建てられる建物が限られてるし、育成関係もなかなか充実しない。伏線は結
構敷かれて続きが気になるけれど、システムがついていってない感じ。アル役とオルファン役の声に違和感があ
って、全般的に安定感に欠けていた。最初は、このまま面白くならないのではと、かなりびくびくしていた。念の
ために書いておくと、これはパッチ入れる前の話である。
ぶっちゃけ、最初のチュートリアル戦闘など、ゲームオーバーにならなかった人の方が少ないレベルだと思う。
字面だけで説明されても、なにがなんだかさっぱり分からんので、試しにやってみたのはいいものの、それな
りに行軍を考えないと、闇雲に突進するだけでは負ける仕様。操作性も結構悪くて、フラストレーションがすごく
溜まる。移動させたはずなのに、部隊が頑として動かなかったのは、実は障害物に移動指定してて、こちらの指
示を受け付けていなかったというオチもあった。
移動決定後の選択解除のオンオフは、あんまり意味がない機能。徹頭徹尾、オフしか使わない。はじめ、オン
になっていてすごくやりづらかった。
そうこうするうちに、自分の思惑とは相反する展開になって、「あれれ?」って感じで負けちゃう。向き調整(タテと
ヨコにしか向けない!!)とか攻撃範囲とか、なんかよく分かってなかったらしい。再挑戦する破目になり、かなり
やっつけな設計だなあ、とモヤモヤが募った。そうして撃破したのもつかの間、今度はなんかしっくりこない勝ち
方に渋面になってしまった。勝ちに不思議の勝ちありは、たしかノムさんだったか。とりあえず単騎になっても必
殺撃っとけばいい的な流れがあって、あんまり好きになれなかった。
なお、【チュートリアル戦闘の参加部隊を3部隊から10部隊に変更】できるように修正されたので、難易度は格
段に下がった。対応としては、まあこれしかないだろうなという無難な着地点だと思う。実際にやり直してみた
ら、前よりもぜんぜんマシになっていた。
それでもチュートリアルの部分は内政も含め、かなり不親切な印象を拭えない。してみせて、言って聞かせて、
させてみるでお馴染みの上杉鷹山ではないけど、このゲーム、“言って聞かせて、させてみる”の部分しか残って
ない。ぶっつけ本番に近いものがある。ユーザーインターフェースの悪さもあって、導入はエウ最低レベルかもし
れない。無茶だったと思う。
パッチを当てる前は、辛抱強く続けていっても、なかなか面白いところまでたどり着けなかった。ラナハイム王国
はそれなりに強いわ、内政はチマチマとしか育たんわ、座して死すようなゲームに感じられ、時に苦痛。投げ出し
そうになった。とりあえず1周クリアするまでは投げ出すまいと心に決めていたので、我慢しつつせっせとイベント
をこなしていた。もうこれは苦行に近かった。内政についても具体的な説明はないし、これまた実際にやってみよ
うと建物を乱立。が、兵糧は貯まれど金は貯まらんとあって、なんだか現実っぽいプレイになってしまった。ギブ
アップ寸前だった。
ようやく少しずつ面白くなってきたのは、中盤に差し掛かったあたり。すごく個人的な問題で恐縮だけど、ネネカ
を苦労して50レベルまで上げて、ニールを使いはじめたあたりで、それなりに面白くなった気がする。敵を圧倒で
きるようになったからと言うべきか、移動速度が上がって行軍が速くなったからと言うべきか。戦闘スピードを調
節できないというのは、このゲームの大きな難所で、地味な一戦を数こなしていくというのは、やっぱりRTSゲー
としては辛いものがあった。
ただこれも、【戦闘速度の「通常」よりも早いモード「高速」を、環境設定に追加】できるよう修正されたので、
欠点は大いに解消されたと見るべきだろう。討伐戦をこなしてレベルを上げやすくなったし、雑魚相手にわざわざ
自らが操作する煩わしさも軽減された。【戦闘画面内で、部隊行動のマニュアルとオートを切り替えできるようボ
タンとショートカットを追加】したのも効果的で、勝手にポジショニングして戦闘してくれるから楽ちん楽ちん。ここら
へんのエウの対応は、アリスに似て素晴らしいものがある。
①姿の見えない敵を相手にする時は、真っ先に出撃地点を攻撃しにいくので、操作しないと逆に時間がかかる
②相手が弱いときは使いやすいシステムだけど、相手が強かったり相性が悪いと逆にやりづらい
③一つの部隊が退却した後、他のユニットが出撃するように設定できない
パッと思いついた難点はそれくらい。③は善し悪しあるから、一概に悪いとも言えない。属性関係は一部を除け
ばどうとでもなるので、自分に詰め込み教育を課す必要はない。ダメだったらやり直せばいいわけで、それでも
大帝国みたいな酷いSLG(セーブ&ロードゲーム)にはならないだろう。
ともかくパッチを入れる前にレベル上げをしちゃった僕としては、ゲームスピードがネネカの強化によって体感的
に速くなったので、より面白くなったと錯覚したんじゃないかと自己分析してみる。戦闘の操作性自体は変わらな
いし、作業ストレスを感じてたところ、スピード感が変化したのが効いている。僕の場合は、面白くなったというよ
り強引に面白くした、といったほうが正しいのかも。
パッチを当てる前と後で比べてみるとすごく分かりやすい。結局、戦闘の問題はスピードにあったわけだ。
ただ、この面白さがなかなか長続きしないのがエウシュリー積年の課題だったりする。まずストーリー。ぶっち
ゃけ、何も攻略見ずに正史にたどり着いた人間は、いったい何人いるというのやら。話の筋はイイんだけど、見た
いところに導引する努力を怠ってるとしか思えない。正しいシナリオを見るのに直感も必要というのは、エロゲー
ってことを考慮すると少々いただけないかなあ。実際問題、パッチが出る前に投げ出したプレイヤーの心情も分
かる。遅々として進まない戦闘を繰り返していれば、そりゃ誰でも嫌気がさす。たとえシナリオがどれほど読み応
えがあっても、人には限度ってもんがある。
ストーリーの面白さにシステムがついていけば2周3周なんのそののはずだったんだが、エウゲーというのは基
本的に周回プレイに打たれ弱い。スルメゲーから無双ゲーになり、挙句の果てには作業ゲーという末路を辿りが
ち。これは、パッチを入れる前と後で、そうたいして変わらない点だったりする。ここらへんを調整しない限り、な
かなか周回前提のストーリーを、システムの面白さで補えないよね。あとは、無双ゲーになるのがちぃっとばかし
早すぎるのも難点。本当に面白いと頭が喜んでる時間が短い。
余談ではあるけれど、少し前までのアリスソフトは、この匙加減が絶妙だった気がする。「大番長」とか「大悪
司」とか。
個人的には、このゲームは「ジェネレーションオブカオス」(GOC)的なゲームに思えてならない。アイディアファクト
リーが2001年からリリースしてるシリーズで、それなりに知名度はあるはず。わかんない人は申し訳ない。
(ネクストでの話)戦闘が「魔導攻殻」と結構似てて、当時ドハマりしてた僕にとって、すごく相性がよかった。ぶっ
ちゃけ、システムなんかほぼ同じ。3部隊ごとの戦闘だし、必殺技あるし、兵種もあるし、おまけに城壁破壊もあ
る。
ただ、GOCは、周りの兵隊がやられてしまうと大将単騎ではなかなか勝ちづらくなるという特性があって、GOC
と「魔導巧殻」を比べると、前者の方が物理的に自然に思えるんだよね。「魔導巧殻」はトップが個人として強け
れば、仮に兵隊がいなくても無双になりがち。ここらへんが最後までしっくりこない。RTSで三國無双みたいなシ
チュエーションってどうなんだろう。
ゲームシステム的に、味方の大将が強いときはサクサク進む。この場合はいい。さほどストレスにならない。け
ど、敵の大将が強くて味方が弱いと、どうしても必殺技で削る方向になっちゃう。で、オバカなAIに逃げられる前
に必殺技でやっつけるしかない。ここまでくると、工夫というより卑怯だよね。これこそが作業の元で、やっててあ
んまり面白くない。せめて陣形で工夫できたらまた違ってくるんだけど、攻撃、移動、防御のそれぞれに適した陣
形しか組めないから、やることが限られすぎてる。後ろから攻めたりとかできないし。なにも、鶴翼やら雁行やら
の話をしてるわけじゃないけど、もう少し陣同士の相性は考慮してほしかった。部隊がナナメ向けないのも地味
に痛い。システムの都合かもしれない。
必然的に勝利への筋道が狭くなってしまい、プレイヤーとしての指針も限られてしまう。大将さえ残ってさえいれ
ば力で押し切れるってんだから、当然ながら戦闘も単調になる。勝ち方の画一化はあまりよくないと思う。相性
が最悪のときはどうにもならないけど、出撃する全員の相性が最悪ってパターンは滅多にないだろう。まあ、市
街戦とか言っていながら、やたらだだっ広い草原で戦闘するGOCも視覚的にどうかと思うが。
ただ、このGOCってゲームは、散々指摘されたようにずいぶん大味だった。内政機能がザルだったし、マジック
ユーザーが兵種のキャラは基本的に戦闘でつかえない。しかも、キャラクターの兵種を変えることはできない。指
揮能力というのは一応あったけど、基本的に機能してるか怪しい代物だった。ゆえに大将がいくら無能でも、兵
種さえ良ければどうにかなるという意味不明がまかり通っていた。要は兵種に依存しすぎたわけだ。
さて、GOCの思い出話ばかりしても仕方ないので本筋に戻るけど、言うならば、「魔導巧殻」はGOCとは逆なん
だ。とくに序盤に限っては、兵種ではなく、大将に依存しすぎてる一面がある。兵種が少ないうちは、どうしても
大将頼みになりかねない。逃げ帰っては必殺ぶちかますパターン。中盤から後半にかけては、兵種が増えてく
るとバリエーションも増える。偏りが緩和されて、大将から兵種へと重きが置かれるようになるけれど、その頃に
は作業色が色濃く出始める。この繰り返しを5周も6周もプレイする頑張りは起きない。僕には3周が限界。せめ
て、正史へのシナリオ分岐が分かりやすかったらよかった。
ところで、一応支配力ってもんがあるにはあるけど、それってイコール指揮能力じゃないんだよね。当然、支配力
が増えて部隊数が多いほうが強いっちゃ強いけど、トップの戦闘指揮能力があんまり部隊の強さに反映されて
ないのは残念。プレイしつづけてると、無能という立ち位置で描かれてる人物が、一人もいないのに気づくと思
う。
これはすごく変な話なんだけど、エウのディル=リフィーナ世界ってそういうもんなんだろうね。モブはともかく、英
雄クラスのキャラクターたちが鎬を削ってて、彼ら以外は描かれない。結局、烏合の衆みたいなユニットが、事実
上この世界にいないのは疑問だったりする。戦闘における武は重視してるけど、知は思いのほかシステム上で
軽視されてるようだ。ここらへんが、モチベが持続しない所以だと思う。
それでも、「サクサク進むのはいいことだ!!」と声を大にして言いたい。というのは、サクサク進むようになると、
内政関係が充実するようになるから。正直、パッチが出る前は魔物配合なんてやってられないレベル。魔物を捕
まえてくるめんどくささと、慢性的な資金難との狭間の間であえいでたわけだけど、魔物を捕まえるのが前とは
比べ物にならんほどお手軽になったおかげで、合成関係の楽しみは増した気がする。【配合画面で、配合大全
の内容がそのまま見れるよう、オンマウスアイコンを追加した】ことによって、合成表にようやく本来が価値が出
てきたというのは、地味だけど大切なことだったりする。パッチ入れる前は、表を見ずにリセルのコメントだけで適
当に作っていた自分がいる。
まあ、そんな感じで戦闘に割いてた余分な時間を、内政につぎ込めるようになったってわけ。この魔物配合がな
かなかに面白く感じられるようになると、言い方は悪いけど勝ち組だと思う。エウスルメ(定着しないだろうけ
ど、エウシュリー+スルメ)がいい味を出してくれるには、結局のところ、内政までしっかりやらないといかんと思
う。合成できるモンスの種類は非常に多いので、組み合わせを中心に色々楽しめるはず。
それと、この合成に関しては攻略サイトをなるべく見ないのが通ってもんだろう。パッチ入れる前ならともかく、パ
ッチ入れた後では、自ら楽しみを減らす愚行になりかねん。まあコンプ目指す人は、その誘惑に打ち勝ってほし
いかな、なんて。それと、これは僕の希望だけど、これだけのモンスター数をそろえてれば、そろそろ、モンスタ
ー育成ゲーを出せそうなものじゃないか。おはじきも双六もやったし、なんか無性に期待したくなった。
ソートについては、断然あったほうがいいと思うけど、一度ハマっちゃうと、あんまり気にならなくなっていた。僕
はネネカがお気に入りだったので、故意にヴァイスハイトの隊に組み入れて、討伐戦やら、移動の時も出撃欄の
上のほうに来るように設定していた。慣れてきたユーザーは、自分で並びを最適化しようとするものなんだ。限度
はあるけれど。
ただ、これも【・戦闘準備画面で好みの部隊を上位に表示できるよう「お気に入り選択」を追加】&【移動部隊選
択画面で、部隊表示を「全部隊」と「移動可能部隊」から任意で選べるようボタンを追加】されて、随分と自分の
思うがままにレベリングできるようになった。今までの自分のプレイは一体なんだったのかと、若干焦燥感すら覚
えたが、それはまあ、プレイした時期が悪かったと諦める他あるまい。仕方ない。今やれば、とくに不便なところ
は感じないはずだ。
ここまであれやこれやと見てきたけれど、パッチで修正される前と後では、利便性がものすごく向上してるのは
言うまでもない。下に、パッチの内容を公式から引用してみたんで参考にしてほしい。
【・戦闘速度の「通常」よりも早いモード「高速」を、環境設定に追加】
【・戦闘画面内で、部隊行動のマニュアルとオートを切り替えできるようボタンとショートカットを追加】
【・戦闘準備画面で好みの部隊を上位に表示できるよう「お気に入り選択」を追加】
【・移動部隊選択画面で、部隊表示を「全部隊」と「移動可能部隊」から任意で選べるようボタンを追加】
【・チュートリアル戦闘の参加部隊を3部隊から10部隊に変更】
【・配合画面で、配合大全の内容がそのまま見れるよう、オンマウスアイコンを追加】
【・移動部隊選択画面で「目的地」と「自国部隊の位置」が確認できるよう全体マップを表示】
箇条書きにしてたったの7つ。他にもあるけど、ここらへんがパッチの軸になっている。これらの変化だけで、戦闘
がサクサク進むようになったし、時間ばかりを浪費してたレベリングの面倒さも消えた。お気に入りのキャラも育
てやすくなったし、相乗効果で魔物合成もグンとやりやすくなった。単純な比較はできないけど、プレイ時間を半
分以下に短縮した人もいると思う。
僕も「うわ、今までこんなに苦労してたのか」と討伐戦を繰り返して思ったもので、Ver1.02パッチが、この難あり
のゲームに対して、いかに革新をもたらしたかを実感してしまった。修正箇所が狙いをあやまたず射抜いてて、
言うことがないリペアー内容。対応も早くて実に素晴らしい。コイツは俗に言う「神パッチ」というか、僕にとっては
「大逆転パッチ」。プレイ前に必ず導入すべき代物だと思う。
願わくば最初からコレを同梱していれば、また評価も違っただろうけど、まあ愚痴ではある。このパッチの威力は
冗談抜きにすごくて、なんというか大部分の悪評を一掃しそうなハリケーンレベルの傑物。エロゲーでこれをやる
のだから畏れ入る。まあ声優だけはどうにもならないけど。
さて、そろそろ書くことがなくなってきたわけだが、最後に忘れてはならないのがボイスだろう。このゲームはボイ
スでも印象を残したわけだけど、声は本当にデリケートな問題。奇を衒った声に聞こえるけど、人によっては味が
あるということだからなあ。僕も好きじゃない。
最後に、アル老師の声(声優は違うけど)でこれをやってほしかった。
アル「なんということでしょう~」
センタクスビフォーアフター。パッチビフォーアフター。そんなゲームとして記憶に残したくなる。
【雑記】
ネネカをモフモフ&喉をゴロゴロしたくなった。ケモノっ娘はいい!!なお、ネネカの前でネコジャラシを振ると死
刑になるとのこと。
魔導巧殻とのエロは賛否あると思うなあ。ぶっちゃけ、このアルのエロ声はあんまり聴きたくない。