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Andemon_LV7さんの創作彼女の恋愛公式の長文感想

ユーザー
Andemon_LV7
ゲーム
創作彼女の恋愛公式
ブランド
Aino+Links
得点
81
参照数
368

一言コメント

ゆめみが最上級の妹ヒロインでした

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 全体に関して
  美点
・「クリエイターとは」という核となるテーマを常に軸とし、ブレることが殆ど無かったので、物語全体にまとまりを感じられるのが好印象でした。
・サブキャラも含めて魅力的なキャラが多く、日常シーンも楽しく読めました。恋したエレナさんと月見坂さんの犬猿な仲が特に面白かったです。
・会話中、声を出していないキャラの表情もコロコロと変わるのが、細かいけれど大きな良要素だったと思います。キャラの感情が文字を使わずに表現されていて、本編中でも度々出ていた「ノベルゲームならではの技法」を体現していました。
 その他服装差分の多さやSD絵の使い方等、細かな力の入れ方が好きで多少加点してあります。

  欠点
・話を展開させる方法が終始雑でした。「偶然」をあまりにも多様し過ぎでした。何度偶然Likkaで月見坂さんと会ったか覚えていません。重要なTRUEの逢桜の病気発覚シーンでさえ「祖母の見舞いの際に偶然発見」という雑な導入で進めるのはあんまりだと思います。
・盛り上がるはずのシーンで、何故か盛り上がれないことが多かったです。文章が淡々としているからでしょうか……?キャラは良いのに勿体無かったです。
・主人公の鈍感ムーブがキツかったです。他はともかくエレナ先輩の恋文を読み解けないのはクリエイターとしてどうなんですか。
・全体的に胸が表記の+2~4くらい盛られていました。乳を盛るな委員会に摘発されますよ。

 えっちシーンに関して
 「避妊薬飲んでるから中出しOK」という理論、素敵な考えだと思います。エロさと現実感を両取りした折衷案として、無責任中出しをしている他のシナリオゲーにも広めてほしいです。飲んでてもデキる時はデキるのはまあそうなんでしょうが、こういうのはやってる感が大事ですからね。エロゲですから、ある程度は割り切りも必要だと思います。

「エロいんだから全ヒロインで同じ流れ(レ目無限射精編)をしてもいいじゃないか」という開き直った理論、これも素敵な考えだと思います。特にエレナさんとゆめみは性格とも噛み合っていたと思います。ただ、この理論自体は素晴らしいのですが、逢桜に関しては例外です。病弱ヒロインにあの仕打ちは無いです。これは殆どのプレイヤーが感じたと思いますが。
 病弱ヒロインとのえっち問題はエロゲがよく直面する問題です。私の考えとしては「死を受け入れて、太く短くを望むヒロインであればOK」派です。逢桜は死を受け入れてはいますが、それは作品を完成させた後の話なので……激しいプレイは特にNGですよね。せめて元気なうちにノルマ3回を消化しておけば良かったのですが……。よりにもよって病室を抜け出した後なのが最悪でした。苦渋の思いで手伝った桐葉さんの反応が怖いです。
 正直この一点だけで0点を付けられても文句を言えないレベルの問題だと思います。

 凪間ゆめみについて
 各ヒロインのルートは展開が似たり寄ったりで全員分書くと感想が被りそうなので、個人的に刺さった凪間ゆめみさんについて以下垂れ流していきます。
 まず声ですよね。くすはらゆいさんいつもありがとうございます。それから絵、特に立ち絵が非常に可愛くて徐々に惹かれていき、花火のシーンでキュン死しました。イベCGは浴衣と風呂の髪下ろしドヤ顔がとても好きです。
 そして、共通ルート全般で他ヒロインが恋する乙女ムーブをしている中で一人、全くそんな様子を見せていなかったのが素晴らしかったです。他ヒロインとの差別化にもなりますし、何より妹キャラというのは、簡単に兄を男として意識してはいけないんです(持論)。男女のアレコレ無しに信頼し合う兄妹の関係性はとても尊いのですから。ゆめみは偽兄妹ですが、妹ヒロインとしての描き方がとにかく完璧だったと思います。
 また、そうすると恋愛にもっていく過程も重要になるわけですが、ゆめみルートは「絵を描くことが実は恋心からの逃避だった」という伏線がとても自然、且つ納得のいくものでした。普通に気付けなかったです。これのお陰で「ゆめみルートに突入したら唐突に意識し始めた」というような不満を抱くことも無かったです。

 ところでゆめみルートラストのCGについて。『相合傘+夕日+虹』という構図にはどんな意図が込められていたのでしょうか。文章では全く触れられていなかったので、逆に気になりました。こういった作品ですから、何の意味もなく配置したとは考えにくい(考えたくない)んですよね。夕日はゆめみらしい金色意識だとして、相合傘は二人のクリエイターとしての一蓮托生な関係を表現している……?残る虹については、初めは逢桜様が見てる?的な暗喩なのかとも思いましたが、それをやるなら桐葉ルートのはず。
 ここからこじつけタイムに入ります。虹は逢桜ルートでも登場していて、逢桜に外の世界の美しさを気付かせる役割をしていました。この役割、第5話でゆめみと眺めた『花火』と全く同じなんですよね。要は虹は花火と同義なのかなと。ゆめみが脱引きこもりをして、外の色々なものに心を向ける。そんなゆめみの物語を総括した虹なのかなと思いました。

 逢桜について
 あまり語るつもりはありませんが、流石に主題をスルーは感想としてどうかと思ったので少しだけ書いておきます。
 私は「登場人物が後悔無く幸せだと感じていたらハッピーエンド」と感じる人間なので、本作はとくに悩むこと無くハッピーエンドだと納得出来ました。むしろあの流れで生きていたら評価を-10点はしていました。締め方は悪くなかったと思います。逆に、展開をすんなり受け入れられたことが災いして盛り上がりに欠けると感じてしまいました。序盤から散々短命匂わせムーブをしていたので驚きも少なかったですし。
 キャラが死ぬと「泣かせるために死なせた」だのとシナリオをディスられることはよくありますが、死ぬのが一番自然な物語でちゃんと死なせられるライターはとても好感度高いです。

 好感度ランキング
 初見時
逢桜≧桐葉=ゆめみ>エレナ
 クリア後
ゆめみ>桐葉>逢桜>エレナ