むやみに力の入ったB級作品。 あらぬ方向に全力疾走している姿は、間抜けだが応援したくなる。
エロゲには珍しいオムニバスストーリー形式で、超能力編・魔女編・ファンタジー編の短編3章で構成されている。(短編と言うには長いが…)
少ないながら存在するエロゲーのオムニバス作品の中でも『主人公やヒロインなどのキャラクターはそのままでシナリオのプロットが3通りになっている』というパラレルワールド的な形式はこれ以外に見た事がない。元々は経費削減なのだろうがまるで同じ役者が違う物語を演じているような感覚がしてなかなか面白い。
また舞台やキャストが3編とも同じであるためオムニバスといってもまったく異なるシナリオというわけではなく、どのシナリオを選んでも導入部分は同じような学園モノのコメディから始まり中盤から展開が大きく変わってくるという造りになっている。シナリオを選択可能にしたせいで全てのシナリオに(同じような)キャラクターの紹介を挟まなければいけないというのは分かるが、だったら「ノットトレジャーハンター」や「高2→将軍」のように導入部は共通ルートで選択肢によってシナリオを変化させてもよかったんじゃないかと思う。(ナンダこの例え、誰がわかるんだよ。せめて「かまいたちの夜」とか言えよ。)
以下、各シナリオについて
超能力編
バカゲー。馬鹿馬鹿しいギャグに満ち満ちており一番ウケがよいと思われるシナリオ。
パロディ(3)対ネタ(7)くらいの割合。プロレス技を得意とするヒロインのせいでプロレスのネタ・パロディが序盤に頻出する。
個人的にメタギャグは嫌いなのだが、このゲームではあまりの馬鹿馬鹿しさに笑ってしまった。完敗。
他2編に比べて共通が長く分岐するのはHシーンのみ(とても抜けません)。
ファンタジー編
ファンタジーの定義は曖昧だが超能力も魔女もファンタジーと呼べるため、敢えて言うなら「童話編」とでも言うべきか。『異類婚譚』『恩返し』『物憑き(悪魔憑き)』のテーマがそれぞれのヒロイン に割り振られている。
ここではあまり評価されていない…どころか他2編と別のライターである事も手伝ってクソシナリオ扱いだが(笑)シナリオもテキストも大して悪いところがなく酷評されるほどではないように思う…が、無難にまとまっているぶん童話編と表現したように内容もそのレベルで、悪くはないが取り立てて良くもないといった感じか。
私はディズニー映画や絵本が趣味だったりするので普通に読めたが、あらゆる点でエロゲーらしからぬ内容なので割を食らうのも頷ける。ツッコミどころも結構あり、そういったご都合主義的な展開も児童文学に見られるそれである。
魔女編
完全な1本道。3人のヒロインのルートを順番に辿っていく形になっているため長編。
所謂『魔女狩り』をテーマとしたシナリオ。他2編と空気がまったく異なり、死人がバンバン出る鬱シナリオ。しかも1本道なのでバッドエンド回避不可。
鬱専用のゲームに比べれば大した事はないが、耐性のない人間にはダメージが大きいと思われる。苦手な人は注意が必要。
1本道というシナリオの弊害がもうひとつ。必然的に主人公が各ヒロインを次から次に乗り換えていくので、そういうのが苦手な人にも受け付けないだろうと予測される。
これからやってしまうとギャグが素直に笑えなくなるので、プレイする時は「魔女編」を最後に回す事をお奨めする。
言うまでもないですがどのシナリオもエロは期待できません。中学生でも抜けないレベル。
システムは必要なだけ揃っており発売時期を考慮すれば文句なし。
B級作品のくせにボリュームがありお得感溢れるし、それぞれのシナリオも大きな破綻なく手抜きは一切見られない。キャラクターと絵は微妙だが悪くはないし、2001年の作品なら水準以上だろう。
総じて出来がいいように思えるが3編のターゲットとなる客層が違い過ぎて、雑食プレイヤー以外には地雷認定されるしかないという二進も三進もいかないゲーム。
不遇だが私はスタッフを評価したい。
最後に、内容の評価とは関係ないがエロゲーで「まんぺ」を見たのは初めてだった。
大して面白くもないとんねるずのギャグの為だけにこれを導入する頭の悪いスタッフには脱帽するばかりである…。