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2dconさんのVermilion -Bind of Blood-の長文感想

ユーザー
2dcon
ゲーム
Vermilion -Bind of Blood-
ブランド
light
得点
85
参照数
1179

一言コメント

lightらしい作品です

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

  アンヌ、アリア、ニナ、シェリル、グランドルートを順番にクリアしました。
  アンヌルートは、ありふれた主人公とヒロインが永遠に幸せに暮らすハッピーエンディングじゃなくて、アンヌの恋は、人間に戻った後、人生の最後まで叶わなかった。記憶が消されても思いが消えない、故に終始顔もも名前も思い出せない主人公をおもいつづけて独身のままでいました。ハッピーエンディングじゃなくてこういうのもありねって思って感動しました。ていうか主人公とアイザックが合体して永遠に共にいられてめでたしめでたしですね。一番平凡なキャラですが、soranica eleのように、異常の状態から「日常」を描く、なによりも日常のささやかな幸せの貴重さを体現しています。
  アリアルートって結構意外でした。ヤンデレアリアにすっごく萌えました。大人になったアリアもすっごく可愛かったです。個人的にはアンヌとアリアルートが一番お気に入りです。
  ニナ、シェリルルートはそこそこ良かったです。でも特に深い印象はありません、よって特に言うことはありません。
  グランドルートはまぁ、シナリオ的にはいいですが、戦闘部分がつまらなすぎますので、スキップをお勧めします。「吸血鬼は何処にもいない」と主人公は言った。結局のところ、リリスの魂が消滅され、すべての吸血鬼が人間に戻り、全ては幻が如き、いい子の皆さんはちゃんと現実と向き合わなければなりません。
  永久の時、不滅の愛、生の意味、吸血鬼を題材にする物語によくあるテーマです。普通は愛情に生きるなり、何か確たる目的に生きるなり。でも「束縛」の中で生きるとは、実に新鮮です。まぁ正直に言えば私は結局わけがわかりませんでした。
  以下雑談です。
  このゲームをプレイして、つくづくおもいました。主人公とはなんでしょう。ただ今時日本でのサブカルチャー作品でよくあるようにありふれた属性を付けて、お約束の顔すら要らない主人公を創り上げて、共感し易い故にただのプレーヤーにとっての「視点」か?それとも個性的で、すべてのキャラを引きずって、物語を主導する「メインキャラクター」か?どちでもよかろう。でも私は後者が好きです。
  普通の高校生に飽きたかも知れません、お約束の視点から見えるのは大概お約束の展開なのかも知れません。フィクションというものは私にとって、自分が生きている窮屈な現実から、僅かな夢を見させるためにあります。しかし一方、今時多くの二次元作品では主人公の個体性を限界まで削って、女の子だけを強調されているような気がします。
  vermilionをプレイして、また主人公のキャラ特性の重要性を気づきました。ギャルゲーで夢見させてはいいけど、でもそれは周りの者に限らず、夢の中で自分も生まれ変わってもいいじゃないですか、別に無個性でなくても、無敵なスーパーヒーローでなくても、ただの個性を持つものでもいいと思います。平凡とお約束の主人公は共感を得やすいものですが、仮に個性ある主人公は共感を得られなくても、理解は得られる、いい作品でさえあればプレイヤー感動はするでしょう。