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1T282さんのさくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-の長文感想

ユーザー
1T282
ゲーム
さくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-
ブランド
FAVORITE
得点
100
参照数
705

一言コメント

輪廻転生の中で愛別離苦と孤独を描き切る

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 伏線の回収が丁寧に行われているので一文一文に無意味なものがなく、ダラダラと長かったわけではないことに気付かされました。輪廻転生を描くためにはこれだけのボリュームが必要だったとクロルートで気付かされるわけです。
 循環参照のようなことが当たり前のように起きるので物語の全容を掴むのが難しいのですが、それはそれと考えて見ていくこともできるように設計されていたと思います。
 そして、個別ルートで共通するテーマは「愛別離苦」と「孤独」です。
 姫織、千和、ハルルートでは人間が孤独でない限りは絶対に遭遇する「愛する者と別れること」(愛別離苦)と出会うことができないかそれを拒否したことで生まれる孤独をどう乗り越えるか、そして、その先の人生をどう生きるかを問うものでした。これらのやり取りがサブキャラも巻き込みながら進んでいきます。
 これにより、すべてのキャラの境遇などを余すことなく表現し、繋げることができていたと思いました。
 物語の集大成となるクロルートでは愛別離苦の先にある「孤独」を描き切ることでそれらを乗り越えた魂が転生し、どういう末路を辿るのか見ることになります。このルートの中では、どういう過程で彼らなりの答えが形成されたのか知ることができるシーンも多々あります。ここでも余すことなく関係するすべての登場人物のことが描かれ、彼らの根底にある思想や信念を知ることができる構成になっていました。
 こうした丁寧な物語の構造と、優しい世界観が私の心を打ちました。