絶望の地平に朽ち逝く魂の残照、滅びゆく世界に燃え上がる命の炎、それが紡がれるもうひとつの未来、そして、今明かされるオルタネイティヴ計画――
ageの本気を見せ付けられた。
このゲームの作戦実行中の熱さは異常。
絵の動きなどを上手く利用し、主人公のコクピット視点から生み出される臨場感は秀逸。
『マブラヴ』と『マブラヴ オルタネイティヴ』、これは二つで一つの物語。
なのでマブラヴをプレイしてからじゃないと置いてけぼりを食らいます。
主に、並列世界での人類と地球外起源種であるBETAとの戦争の話。
『元の世界』と『この世界』、二つの並列世界の"因果導体"となってしまった主人公の白銀武。
武にとって二度目の『この世界』、"因果導体"故にそうなってしまった原因を排除しない限りいつまでも始まりの日である2001年10月22日から死ぬまでのループから抜け出せない。
しかし、『前のこの世界』での経験が武の気持ちを大きく変化させる。
人類の敗北の悔しさから『元の世界』へ帰りたいって気持ちよりもBETAを倒して『この世界』の未来を変え、地球を救いたいという気持ちが強くなる。
人類の勝利のためにはオルタネイティヴ5を阻止し、オルタネイティヴ4の完遂が必要だった。
『元の世界』と『前のこの世界』の経験を生かし、オルタネイティヴ4の完成に大きく貢献する。
新OS(XM3)案、半導体150億個を手のひらサイズにするための数式を『元の世界』の夕呼先生からもらいに行くなど。
何もかも上手く行っている、これならBETAも倒せると思っていた矢先に起こったBETAの奇襲(実際は仕組まれたもの)。
その奇襲でBETAの恐ろしさを改めて知ることになり、それに対して何も出来なかった自分の不甲斐なさに落胆する。
落ち込んでいつまでもウジウジしてる武を励ましてくれたのは207部隊の頃の恩師であるまりもちゃんだった。
武の背中に語りかけてくれたまりもちゃん。
自分の経験談、失敗談……そして、丸腰の戦術機でBETA相手に八分間生きていられたことの意味。
それを聞いてまた光を取り戻しつつあった武を一気にどん底へ叩き落す出来事がその直後に起こる。
初めて身近の人間の死を目の当たりにしたショックは計り知れない物だったに違いない。
一度折れてしまった心はそう簡単に修復できず、夕呼先生が開発した『元の世界』へ戻ることが出来る装置で逃げを選択する武。
しかし武を待っていたのは"因果導体"である武が『この世界』から運んできてしまった"因果"によって変わってしまった『"この世界"の干渉を受けた"元の世界"』だった。
その世界の夕呼先生の手助けもあり、やっと自分のやるべきことを見つける。
「もう逃げない」そう硬く誓った武は『この世界』に戻って自分が"因果導体"となってしまった原因を取り除くことを決意する。
『この世界』に戻って来るとオルタネイティヴ4の核である00ユニットの形が完成していた。
その人類の切り札と呼ばれた00ユニットは武のよく知る純夏だった。
『この世界』では純夏は存在していないと思っていたが実はずっと存在していたのだ。
霞の部屋の真ん中に設置されていた脳みそと脊髄――それはBETAの捕虜となり人体実験を受け、快楽に必要のないパーツを取り除かれた純夏だったのだ。
00ユニットの心の完成はオルタネイティヴ4の完成と同義だった。
00ユニットの心の完成を買って出た武は佐渡島ハイヴの侵略「甲21作戦」の後になんとかそれを完遂する。
甲21作戦では尊い犠牲やBETAの底知れぬ力を痛感させられるのと同時に純夏のリーディング能力で今までわからなかった事実を得ることに成功した。
これによって人類の勝利が大きく近づいたと思われた。
しかし甲21作戦で大量の戦力を失った所に佐渡島ハイヴを失ったBETAたちが一斉に横浜基地のハイヴ奪還のために来襲してくる。
今までのBETAとは違い戦略を用いた攻撃のおかげで横浜基地は大打撃を受ける。
そして、人類は反応炉がオリジナルハイヴへの伝達機能を持っていることに純夏のリーディングによって知ることになる。
しかしそれは脳の洗浄で反応炉を使用している純夏が生き続けること=情報がオリジナルハイヴに漏れることを確定付けてしまうものでもあった。
そうなると人類の切り札である凄乃皇と言う兵器の対策をいつされてしまうかわからないと判断した人類は計画を前倒しにし、オリジナルハイヴ内のコアとされる「あ号標的」を叩く桜花作戦を遂行する。
この作戦の失敗は人類の敗北、オルタネイティヴ第五計画へ移行に繋がる――すなわち最終決戦なのである。
桜花作戦はA-01部隊のほぼ全滅と引き換えに「あ号標的」の破壊に成功する。
そして武は霞から全てを話される。
純夏の死が最初からわかっていたこと、それは純夏の決意だったこと――そして純夏が武を"因果導体"にした原因だったということ……。
脳と脊髄だけにされて生かされた純夏が「タケルちゃんに会いたい」と強く願ったことがきっかけで『この世界』に引き寄せられたのだ。
純夏の死によって"因果導体"から解放された武は『元の世界』の始まりの日である2001年10月22日に戻ることができた。
もちろん"因果導体"中に得た記憶は全て消えた形のはずなのだが、完全に消えたわけではないらしく『この世界』で深く関わった人物(夕呼先生を除く)を見ると無意識に涙が出てしまう。
そして『この世界』の未来を変えた因果として、『元の世界』では良いほうにいろいろ変わっている。
冥夜の双子の姉、悠陽が生きていることや男装をしていた?尊人(これはあくまで私の推測)が堂々と美琴になっていること、そして霞の出現。
そこから新たなEXTRA編へと突入していく――。
この話は演出やシナリオなどほとんどの面で非常にレベルが高い。
発売が延期したりはあったが下手に妥協して発売を早めるよりは全然ましなわけで、待たされた時間に見合った出来だと私は思う。
エロゲ要素は少ないのだが、いろんな意味で18禁だった。
あのシーンにはやられましたよホント……しかも不意打ち………。
BETAの純夏に対する人体実験の全貌もなかなかショッキングでした。
A-01部隊:伊隅戦乙女中隊(伊隅・ヴァルキリーズ)を私は「ageオールスター軍団」と呼んでいたのですが、その先任たちの死がこれもなかなか……。
伊隅大尉(君がいた季節)と水月中尉(君が望む永遠)に比べCP遙(君が望む永遠)の死はあまりにも扱いが……。
シナリオ上、A-01部隊のほぼ全滅は仕方ないと割り切っていましたが、やはり思い入れのあるキャラが次々と死んでいくのにはいい気分はしませんでしたね。
そして次から次へと現れるBETAの絵がこれまたヤバイ。
お願いだからもうやめてぇ!! と思わず叫んでしまいそうになります。
武がヘタレ化したとき無性に腹が立つのですが、あの状況ではヘタレ化は仕方ないと思う自分もいてなんとも複雑でした。
武の成長を見るのもこのゲームのポイントかと。
それでもこのゲームの一番の売りはやはりあの熱さなわけですが、作戦実行中なんかは画面に釘付けですよ? それくらい熱いです。
今回も私のオススメのキャラを挙げたいと思うのですがやはり月詠中尉でしょう! かっこよすぎです。この一言に尽きます。
あとは霞かな。なんか可愛い(笑
「人を傷つけたら謝りたい……。お詫びになるなら、何でもしてあげたい……」なかなか心に残るセリフでした。
最後に、なぜ私がEXTRA編の尊人が最初から女なのではないだろうかと思ったのかと言うと、『元の世界』と『この世界』は並列世界なわけですから性別が違うのはおかしいんじゃないかなってのもそうですが、思い返すとEXTRA編で水球の拒絶や温泉での胸をタオルで隠すことなどの理由から確率は高いんじゃないかなと思ったりしてます。
私はこのageの最高傑作であるマブラヴ オルタネイティヴに出会えて良かったと思います。
こんな名作を作ってくれて、ageスタッフに心からの感謝を――(笑