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えびさんのグランギニョルの夜の長文感想

ユーザー
えび
ゲーム
グランギニョルの夜
ブランド
TinkerBell
得点
72
参照数
7145

一言コメント

絵22+文20+音17+他13 あおじる×小峰久生コンビによる、伝奇的ホラー作品。ただし、注意すべきは、二周目以降・・・

長文感想

*映像面・・・
流石のあおじる作品。
裸体描写にこそ癖はあるものの、キャラ自体の可愛さと裸体の肉感のミスマッチを繋
ぎ合わせてみせる手腕に感心します。
もちろん、それを実現させる彩色も、また、いよいよ二十周年が見えてきたレーベル
の仕事として申し分なしです。

さて、あおじる×小峰久生コンビ作品としては、大分、大人しい印象すら抱く本作で
すので、グロ方面も大人しめです。……おとなし……えっと……はい、多分。

今回、主人公に立ち絵があるパターンの見せ方でしたが、斜め四五度の微妙な立ち方
をさせたものなどが用意されており、一枚絵も含めて、第三者視点で主人公の心理を
見せたいという思惑が、しっかりと表現されていたように思います。


*シナリオ・・・
一周目に本筋のルートがあり、クリア後、前日談や後日談による補足があります。
そして、二周目、およびDLCによる追加シナリオは、パラレルワールドとはまた違っ
た、同一舞台と同一キャラを使いながら、微妙に設定や配役を替えた、オムニバス的
な構成になっています。
と言うと、シーズウェアの『蜜柑』を思い出しますが、あれほどトリックめいた構成
で魅せるような作品ではなく、二周目以降は、従来からのファン向けに用意されたモ
ノで、おまけ的要素が強いように感じました。

なんというか、とんかつチェーンの、お代わり自由なキャベツのようなものです。

という訳で、やはりとんかつである本編一周目こそが肝要。

田舎の空気感と、伝承に基づく怪奇要素に、館モノ的エッセンスを少し加えて、なか
なかどうして、雰囲気のあるホラー作品。
終盤、ややご都合に傾けすぎた感はありますが、序盤・中盤において、『謎』に迫り
そうで迫れない“じらし”が、思った以上に丁寧に描写されていました。
また、そこに各キャラのミニエピソードを差し込みながら、登場人物たちのそれぞれ
の思惑や立ち位置を、徐々に肉付けしていく見せ方も、物語を強固にしていく上での
味付けになっていました。

終わってみれば、こういった作品に求められがちな、恐怖や驚愕といった部分での感
動は少なかったものの、緻密とは言えずとも丁寧に作られたシナリオ故に、一気に読
ませるだけの気分の高揚は感じられたように思います。


*音楽/声優・・・
サイバーワークスの強みの一端は、やはり楽曲全般を手がけるTrioDesignの存在。
そして、歌手・真理絵との揺るぎないタッグの安定感。
今回は、特に意識的に控えめに抑えられた楽曲演出でした。
特に印象的だったのは、乾いたパーカスのみで淡々とビートを刻むBGMで、このよう
な早鐘を打つ心音を思わせる楽曲を用いた緊張感の演出は際立ちました。

あとは、声優陣で気になったところを。
夜海役の雨音未来はどこかで聞いた声な気もするのですが、少し鼻にかかったかすれ
がち声ながらセクシーというよりは可愛い感じで、ハスキーロリは基調です。はい。
光役のいねむりすやこは、雪村とあ的な甘ふわボイス。攻略後のキャストコメントで
は、「いねむり、ころしがち」発言に笑った。
また、キャストコメントでは今谷皆美の触手の熱演も笑いました。