残響さんのYes,You can make it!の入力情報

Yes,You can make it!(ボーカル有り)

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得点
100点
感想
 この曲が収録されている「しとろんソフト メモリアルソングス」というミニアルバムは実に奇妙なCDである。収録曲のエロゲタイトルは、「みここ(じょうずにできる恋愛成就)」「妹スマイル(Yes,You can maki it!)」と、ここまでは確かに「しとろんソフト」。だがラストトラック、3曲目に入っているのは「どこでもすきして いつでもすきして」のOP曲「君のスキにしてして♪」である。
 実は「どこでもすきして いつでもすきして(以下してして)」は、「しとろんソフト」作品ではもともとなく、「C:Drive.」の作品であることは、このえろすけを見れば一目瞭然である。ではなぜこの曲がしとろんコンピに入ってるか? 
 単純に「してして」がそれなりにヒットしたから、この路線(ギャグ&イチャラブ路線)を突き進むべく、Cドラ系列で新たにブランド「しとろんソフト」が立ち上げられたわけである。なので、「してして」こそがしとろんの直系の元祖であり、むしろ2013年、onomatope*「ずっとすきして たくさんすきして」が何か「してして」の直系の後継作っぽく売り出したのは、「え……このタイミングで? それも、その後継の仕方、ええんか?」とわたしは疑問に思った。
 さらにもっと言えば、このしとろんソフトが現在呼吸をしていない、というのは、3作目「初恋タイムカプセル」開発時に、「なにかとてもいやなこと」があったらしく、「初恋タイムカプセル」の出来は非常にお粗末。というか「なにかとてもいやなこと」があったとしか思えない、不穏さがバリバリに漂っている作品……敗戦処理作品であった。
 このあたりは当批評空間の「商品の説明」欄では語られない、というか語ってはいけないことだろうからここで語る。
 さて、「しとろんソフト メモリアルソングス」は2010年にドロップしたものだ。しとろん第一作「みここ」は2009年2月作、第二作の「妹スマイル」は2009年11月作品である。「妹スマイル」のまあまあのヒットを受けて、「ここで稼ぐ!」と思ったのかは知らんし、もっとも「結構この路線(ギャグ&イチャラブ路線)も定着したな、よし、なんか出すか!」と思ったのかも知らない。ただ、このミニアルバムが出た当初のしとろんファン界隈は、「そんなに悪い感じじゃなかった」ということだけは付け加えておきたい。その後のしとろんを語る界隈が、「妹スタイル」で海原・鯉川ライターコンビが生存してることが確認されるまで、非常にビミョーな感じだったことも併せて……。
 うん、たしかに、このアルバムは、そういう、凪のように幸せな一時の花めいたものだったのかもしれない。

さて、どんだけ前事情語るねん、ということで、「Yes,You can make it!」の話に入る。
「妹スマイル」ははっきり言って妹もののB級エロゲである。ルート間の出来はバラバラ。しかしルートによっては非常に良いイチャラブ&ギャグを繰り出してくれる。
 そんなエロゲなのに、大変良い曲なのである。全体的にデジタル系のアレンジをしているのにかかわらず、非常にオーガニックな味わいで、これを分析すると、二つに分けられるだろう。
(1)新藤真弓の説得力ある穏やかでのびやかな歌唱
(2)ストリングス、デジタルサウンド、バンドサウンドのそれぞれ中間点とも言える音像の調和

(1)の新藤の歌唱であるが、ここには電波はない。あるのは、兄視点から妹との絆、その日常を描く、非常にしっとりした歌唱。歌詞もしとろんのくせに非常に詩的。タイトルをあえて訳せば「そう、君は「出来る」んだよ!」。
 それは恋なのか、それともシナリオで描かれた「妹が、自分のやりたいことを兄と共に出来た」を描くことであるのか。……後者寄り、とわたしは見たい。路線としては、「少女の日常の中で、妹がいろんなことを「出来た」」、という。
 なにしろ妹スマイルは、近親相姦的なアプローチのない妹ものである。むしろ重要視しているのは、妹の日常での生活。とくに夏希、秋穂のシナリオは、日常のどーでもいいシーンを丁寧につなぎ合わせて、日常の中で兄妹、お互いが手を取り合って、何かが「出来た!」という感情を大事にしている。詩季シナリオの同人風景だって、個人的には描写的に「うーん」と思うとこもあったが、それでもその「出来た!」の感情のみずみずしさは覚えてる。 それもこれも、この非常に実直な歌唱、アレンジ。主題歌自身が、その「出来た!」の感情を裏切ってないのである。(2)の嫌味なく、非常に「懐の深い」と思わせるサウンド・アレンジだってそうだ。非常に丁寧な出来で、聞かせるサウンド。最初、ほわぁあ、というアトモスフェリックなデジタルでテックなサウンドから、一気に羽ばたくようにストリングスが響く。バックはタイトにドラムを響かせる。時折、寂しげなエレクトリック・ピアノがバックで鳴らし、そこで感情性というものを描く。
 サビに至るところでは、またストリングスが空に駆け上がるように響く!「広がる無限の空へ」「その小さな背中 飛び立てる勇気与えよう」
 ……そう、これは実は兄の歌であるのだ。サビ以降の葉加瀬太郎か、それともアイリーン・アイヴァ―スかとでも言うような熱情的なヴァイオリンソロと、ギターソロの絡み。この熱よ。兄視点で、「いつも妹を応援する」「君(妹)の健やかな生き方を失わないでほしい」という思いがまっすぐに伝わってくる。そういう佳曲……を通り越して、隠れ名曲の域だとわたしは思う。
 しかし、新藤の歌唱の「与えよう」という大事な歌詞が「あたへぇよほぅ~」と聞こえてしまう箇所、ここだけはどーにかならんかったのだろうか。
得点(200点~70点) 120点~200点は100点として集計します。
感想