残響さんのScarletの入力情報

Scarlet(ボーカル有り)

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得点
95点
感想
エロゲソングを語るにおいてどれだけ「歌謡スカコア」と呼ばれるジャンル表記をして通じるか全く未知数であるので、音楽ジャンル論的に語ってみます。基本的には好きですよ、この曲!

(1)曲構造

まずはこの曲の構造から。イントロで「チャチャーチャ、チャカチャカ、チャッチャッチャー」と軽快なギターのカッティングが入ります。この時点で胸が高鳴りますね。生演奏主体というサウンドがここから明記されます。と同時に、スカコアサウンドにおける魅力の一つが、この軽快なサイドギターであります。
次にドゥルン!とぶっといベース。ドラムがズッタンズッタンと裏打ちスネアを響かせながら。そして高らかにホーン・セクション(金管楽器。トランペットとトロンボーン、サックス。これも打ち込みでなく、生演奏であることはクレジットで表記されています)。
(なお、ここまでのOPムービーの縦横無尽に動く演出は、ろど氏によるゆずのOP演出の中でもとんでもなくスタイリッシュな演出であると思います)
そこから榊原ゆいによるLazy(怠惰、どことなくの我が儘っぽさ)な憂いの歌唱が、サビまで続きます。アダルティ、と書いてもいいでしょう。
歌唱を裏打ちするように、「ぱぱらぱぱっぱ、ぱーらぱっぱ」とホーンセクションがリフを繰り返します。後述しますが、「コレ」がスカ、スカコアの魅力です!
やがてサビに至るにおいて、陽性の歌唱がメロディアスに歌い上げます……

っていうのが、ざっとの「イントロ→ヴァース(Aメロ)→コーラス(サビ)」の展開です。さて、ジャンル論を語りましょう。


(2)ジャンル「スカ」

歌手・榊原氏は、確かサントラのコメントで「こういう【スカパラ系】の曲は新鮮で~」と語っていたように覚えてますが(当音楽感想はiTunesにサントラぶっこんだものを記憶だけで書いてます)、ここには若干の音楽ジャンル的な表記ミスがあると同時に、「歌謡スカコア」というこの曲のジャンル論的に見た場合、「それ以上の本質を語っている」とも言えます。

「東京スカパラダイスオーケストラ」
通称スカパラ。
ゆいにゃんが「スカパラ系」と言ってしまうほど、本邦日本のスカ、スカコア界隈にて、この大御所の存在は、それだけ存在感の大きいものです。

「スカ」とは何か。ここでエロゲ的クソ連想を一切働かせないでいただきたい。

北中正和編集のワールドミュージックガイド本「世界は音楽でできている 中南米・北米・アフリカ編」の「メント・スカ・ロックスタディ」の項をざっと纏めますと、「スカ」とは、1960年代以降のジャマイカ音楽の基底となる音楽スタイルです。アメリカからジャズやR&Bなど様々な大衆音楽が流入し、そこにジャマイカ的なラテンリズムが合体します。
まあそんな講義っぽいノリでこれ書いても即読み飛ばされるだけだと思うので、重要な点だけ3つ。

(1)ジャマイカ人は普通のビートよりも、ギターや金管楽器などで過剰にバックビートを強調したリフを好んだ
(2)要するに基本的にスカは「ンチャ!ンチャ!ンチャ!ンチャ!」と追い立てるような8ビートミュージックである
(3)リフ命!

これがつまりは、スカパラにおける、
(1)金管ホーンによる煽りたてるキャッチーな反復リフ(ホーンセクション)、
(2)追い立てるラテンバンドリズムセクション「んちゃ、んちゃ! んちゃ、んちゃ!」(スカパラ風)に、
(3)そこに男伊達、漢の粋(イキ)っぽさ溢れる歌謡メロディを融合させる。

まあとりあえずは「Paradise Has No Border」聞いてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=1zKo_I8VhkA

これと、「Scarlet」を合わせて聞けば、「スカ」ってののイメージはつかめると思います。
途中で魚類が出てきてるけど、もうそれすらも味にするという祝祭音楽だっ!

(なお、微妙にここまでの議論で「スカ」と「スカコア」を混ぜて語っていますが、この欄でさすがにスカタライツから始まるジャマイカ音楽の伝統(スカ→ロックステディ→レゲエ)やら、90s以降のスカがメロコアと合体したところの「スカコア」について語りまくるのは手狭に過ぎるので、そういうのが欲しかったらやっぱエロスケじゃなくて別のとこ行こう的な。さらに言えばおれが本気で語りたいのは、実はスカパラじゃなくて、英国が生んだ偉大なる人種混合スカ、金管ホーンで武装した最強のモッズ「スペシャルズ」について語りたいんだ!!!しかし偉大なるジェリー・ダマーズも言ってるじゃないか、モッズもパンクスもロッカーズも、純愛イチャラバーも百合ゲーマーも、凌辱ゲーマーもNTR者も、(些細な違いの内ゲバではなく)皆戦うんだ、敵は遠くに居るんだ!「エンジョイユアセルフ」!!)

歌謡スカとは、こういったリズムに乗せて、日本の粋の歌謡メロを乗せたり、表現したり(夏ですね)。結構ラテンリズムと日本歌謡って相性良くてね。
それからこの「Stay & Go!」(タメと爆走)な緩急のついた祝祭リズム。これもまた「祝祭ソング」には相性がよく。
でもスカは、どことなく哀愁があります。それもまた歌謡と結びつくと……というか、スカそのものが、歌謡と結びつく以前から、最初から持つ歌謡成分とは、やはり「南国の哀愁」なのでしょう。

そう、スカは、どんなに爆走しても、なんかどっかで一抹の哀愁がある。それが日本の歌謡成分とうまく結びついたら、「爆走、漢粋の歌謡哀愁!」になります。

さて、そんなんが本邦エロゲソングになると……?


(3)評価しつつ、一部納得しないという……

個人的な暴露をすると、この曲、「サビ以外」はそういうスカ文脈において、非常に完成度が高く、好きなんですよ。ギター、ベース、金管ホーンの生演奏を積極的に導入して。この曲がエロゲソングライヴで「映える!」と、TwitterのTLで時折レポ感想を聞きますが、さもありなん、と。

何より「バンドサウンド」を前面に出したガチなチューンというサウンドアレンジがいいですね。このヒリヒリした勢い、これこそがスカコアにおいて大事であります。

まず第一の歌唱で一気に「タメ」て(アナタの中に潜む~)、「何故かあたしを引き寄せるの~」のところでレガートに歌う。この「Stay & Go」はここにおいても、波の満ち引きのようにスカの魅力を伝えてくれます。それをサビまでで2回。
その間、常にホーンは煽ります。一度聞けばこのスカ・リズムのホーンの魅力は、曲の好みとは別に(どんなに影のある曲が好きであろうとも)耳についてしまうくらいの強度です。


では、とにかく外に「開く」曲であるのか。どこまでも祝祭な曲であるのか。

ここで、H3O氏のこの曲に対する音楽感想

http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/user_music.php?user=H3O&music=1019#userdata

で、興味深いことが書かれていまず。これを引用することで、ルーディたちへのメッセージを放つぜ(まだスペシャルズに未練がある)。

(引用)ーー「fripSideの「Red」やデンカレの「Vampire」のような暗く妖しく退廃的といった、これまでのエロゲ吸血鬼ソングの王道(?)から外れた明るく前向きな曲と詞」(引用終わり)

とあるが、まさに卓見と呼んで良いものと思う。

比較されている前者は退廃的な歌詞にアトモスフィア、そしてfripside王道ののデジタルサウンドに若干のゴシック要素を加えた曲(ガチゴシック風味というよりは、デジタルサウンドにゴシック音階を通した、って感じ)。
後者はデンカレらしくメロディックスピードメタル(メロスピ)にこちらもチェンバロとクワイアのゴシック要素を加えた疾走チューン。所謂「同人音楽界隈」における「同人ゴシック」というものと非常に親和性の高い、というか直系の元祖とも言える曲であろう。(この辺の歴史性は、自分も若干「同人音楽界隈」にいるにも関わらず詳しくないので、間違ってたらコメントください)

さてそれに比べると、以上で述べた「スカコア」チューンは確かにこれまでの「吸血鬼ソング」と様相を異にしている、と言えるであろう。これだけ見れば明らかに「Scarlet」は陽性。
では、どこまでもこの曲は「祝祭」であるのか。それは、「サビ」(「今心に突き刺す矢が~」)以降のそれは、まさに祝祭であり、前向きな曲で歌詞である、と思います。

ただ、それでもどこかこの曲、不思議に「陰」みたいなものはありませんでしょうか? 「サビ以外」のところにある、アダルティな妖しさというか。
わたしが惹かれてるのは、そこなんです。 

もちろんその「陰」っぽさは、かなり軽い。
音楽構造的に言うと、サビの祝祭で前向きさに至るまでの「タメ(stay)」であります。
しかも逆説的に、それはある面で、スカの哀愁があくまで「陰っぽさ」にとどまるジャンルである故に、どん詰まりの「陰」ずぶずぶにならない、ということも言えます。
ドラクリ本編における「えー、なんだかそれって都合の良いキャッチーでお手軽な【陰】やん」って部分にも符号してしまいますね。
だから、ずぶずぶのどうしようもない「陰」ではない。哀愁の暗がり、みたいな。あるいはそこにアダルティな部分が付いてる、っていうか。

それでもドラクリが「陰」(あるいは「淫」)の方向に行ってみようと決め(キャッチコピー:童貞捨てたら以下略)、そこをまず表現しよう。アクアエデンのアダルティな方面をまずは描こう、としたのが、サビ「まで」のアダルティなスカコアチューン、とわたしは取ります。
ドロドロの吸血鬼な陰・淫・退廃チューンではなく、どこかラテンな哀愁と夏風と童貞……明け透けな性的アッパー。それでいてアダルティな吸血鬼要素、「陰」、ミステリアス成分とをうまく組み合わせ、エロゲOPにふさわしい疾走チューンにしようとしたら……これはたしかにスカになります。サウンドを決めたDの判断は、非常にクレバーです。

だから、H3O氏の言う「王道から外れてはいる」というのは、至極的を得た指摘でありながら、反面その王道から外れ度合いが、ドラクリの「吸血鬼モノでありながら、夜の物語でありながら、どこか開放的で、アダルティ風味」というなかなか微妙に味わいのある世界観にぴたっと合っている、と言えます。つまり、ドラクリそのものが、「所謂吸血鬼モノ」の王道から外れる、という代物でありました。シナリオの完成度はともかく、コンセプトとしては。

そのコンセプトがシナリオとうまくかみ合っていたか……? については、自分も長文感想で書きましたが、どうもところどころで上手くいっていない。
本曲において、自分がさんざん「サビまで」と言ってるのも、そこで。
「なんだかサビ以前のガチなスカと、サビのエロゲソングっぽさの断絶」
「サビ以降」が、スカ的な祝祭感となっているのは解るのですが、あまりにvoが前に「エロゲソング」っぽく出すぎ、というか。無茶な注文をしてるのかもしれませんが、ここにきてリズム、ホーンのアレンジんが単調になってしまっているのが。

これまで「タメにタメて」な美学をもってアレンジし、それをサビにおいて爆発!とさせるのがこの曲でした。ただわたしの場合、「タメにタメて」のスカ・アレンジの完成度の高さのほうが好きになってしまって、「王道エロゲソング!なサビ」の方が点が辛くなってしまったのは因果なことです。

H3O氏の議論をさらにちょっと変な方向にいかせてしまって恐縮ですが、エロゲソングにおける「王道」とは何でしょうか。大体エロゲオタならエロゲソングの「ああ、ああいう感じ」というのが伝わると思います。アニソン的感じ、といいますか。
自分もオタをやるようになって、結構この「感じ」には慣れましたが。それでもエロゲソングのライヴとか、コンピレーションCDを熱心には買いあさらない……というのは、この「感じ」に最終的に「yes!Yes!YES!」とまではいききれない、変なオタクな負け状態なんでしょう。

でもまあ、そんなことを言い放ってても仕方がないですね。スペシャルズも言っています。「やめとけよ、無目的に生きるのは。もっと良い将来を考えてみろよ。時間がお前を、マトモにしてくれる」(スペシャルズ「ルーディたちへのメッセージ」……おれが……このおれこそがルーディ(負け犬)だ!
しかしまあ、自分の今のエロゲソングの聴き方は、そんな「一介の音楽リスナーの理屈っぽい聞き方」と「エロゲオタク」の間をフラフラしています。「一介の音楽リスナーの理屈」は、以上のここまで5000字ある音楽感想をつらつら書けるようにしてくれますが、反面、この曲のサビにノりきれない「エロゲオタク」は、ゆいにゃんのライヴに行ってもこのサビでサイリウムを触れるのだろうか……? ライヴでは頭をヘドバンすることしか知らない自分は……?

まあそれが自分なんでしょうがない、とは言いつつも、もったいないことはしてるよなぁ、とかって思ったり。ただ、エロゲをやるにおいて、「複数のものに足を埋めながら比較論的にエロゲをやる」っていうのは、それ独特の比較論的愉しみを味わえる反面、比較論的罠でもあるよなぁ、って思うのでした。それでも、エロゲオタ生活を「エンジョイ・ユアセルフ」!
得点(200点~70点) 120点~200点は100点として集計します。
感想

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