Skyさんの「そして明日の世界より――」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

あるがままにとは、想いを伝え合い、胸に宿る強い意志で示し続けるもの。
 世界終末の宣告をきっかけに、立場によって強いられた生き方やそれぞれが抱いている切実な想いがみえてくる。やり遂げることも、成し遂げることもできない現実を前にして、どう生きるかを問われる。
 
 それゆえにノーマルエンド→アフターという流れで見ると、何物なにも負けず心のままに生きるというメッセージが込められているので胸を打つ。
 けれど私的にこの感動は個別シナリオがあったからこそ感じられるものだと思った。なかでも青葉と御波シナリオが秀逸だった。

 
 青葉シナリオはあるがままに生きる為に「必要なこと」とは何か。それを重点に描いているように思う。

 世界の終末を知り、今の自分では大切なものを繋ぎとめることができないと感じ、女になることを選ぶ青葉と、対等な付き合いをしてくれる親友の青葉が全てだと信じ込む昴。

 青葉は自分を変える一方で、自分の望みを相手に伝えられず、共に歩むことを困難にさせている。昴は青葉が変わっていくことを認められず、前に進むことを否定してしまっている。青葉の変化に悩む昴と、自分を見てくれないことに苦しむ青葉。
 
 すれ違う両者が“共に生きる”には何が必要か。それ問いかけている。
 やがて昴は苦しみの果てに、友達という青葉に依存していたこと、親友という言葉の影に隠れていた自分の感情に気づき、その想いを青葉に伝えに行く。そこに答えがあると感じた。


 「親友になろうとしなくたっていい。お母さんのようにならなくていい。
  そこに座っているただの青葉に会いたいんだ」


 言葉を届けるということは理解し合おうとする合図。彼らは互いに無理解だった。『伝える』という大切なことを忘れていた。その一点に尽きる。
 青葉は自分の偽らざる望みを昴にちゃんと伝えればよかった。そしてその中で相手を受け入れるということが、本当の意味で「人を好きになる」ということだと思う。
 
 すれ違うなかで、本当に大切なものを見つける、健速氏らしい構成だと感じた。

 そして『伝え合う』ことが出来た時、人は愛し合うこともできるのではないだろうか。本当の青葉が見えた時、約10年ぶりの再会。それゆえに非常に初々2人の姿があった。

 心から変わっていこうとすることを、受け入れ合っていくことは光が溢れていくような変化なのでしょうね。
 
 ゆえに想いを伝え合え、それがすれ違わず、共に歩み、シガラミをなくし、立場を越え、目指す姿に生まれ変わる必要なことなのだ、と伝えているのではないのかなと。

 相手と想いを共有し、互いに手を取り進んだ先に、在りたい自分というものがある。昴と青葉はその道を目指していくかのようだった。

 
 “あるがままに生きる為に”

 それを可能とさせるには何が必要か。それを2人に教えるかのようなシナリオだった。


 一方御波シナリオでは、あるべき姿とは何か。世界とはなんたるかを説くことでその意味を描いている。ゆえに総括的な内容。 

 昴が走り出した時に必死についてくるのが青葉だとしたら御波は、自分は身体が弱くてつまらない子だからと遠慮をする子。その実「普通」を手にする為に、もがき続ける少女であり、昴はその彼女を心配してちょっとした変化にも気づいてあげる。

 遠慮せずにそばにいろと、そういった温かいやりとりを通して「身体が弱い」ことも「自分」なんだと認める。
 
 やがて昴を愛したいと自分の心の内を素直に告げる彼女は、自分の想った事を相手に「伝える」強さをも手にした。ゆえに病弱な御波を思いやりそれはできないと断る昴の弱さを指摘する言葉が何か核心を突いているように感じた。


 「………貴方はずるいです。自分だけは特別だって思っています。
  自分の決めた事をやり通すためなら、
  どんな犠牲も迷わずに支払ってしまう」

 「その時私達の事なんて忘れてる。勝手に私達を守ってしまう」
 「貴方はご自分がどれだけ必要とされているのか御存知ないんです」


 思いやり(想う)ことに逃げるな言っているかのようなこの厳しい言葉が非常に印象的だった。
 言葉より、強い想いや役割を優先し進もうとしてしまうこと。大切な人を想うこと、「思いやる」ことも大事なことかもしれないが、大切な人が自分を“大切にしてくれている”ことも見つめていかなければいけないと。

 けれどそんな強い思いを持っていたからこそ、昴の周りに仲間はいたのでしょう。
 自己の望みを捨て、他者の為に行動しようとするのはその人物の思いやりの深さ、人を大切にしたいという誠実さの表れでもある。

 だからこそ、相手から何か大切なことを教えられることがあり救われるのだろう。そういった“助け合い”という人間模様を美しく描くのが、健速氏は上手だなと改めて感じたシナリオだった。

 
 そして昴は共に生きたいと自分の本心を伝える。本当に大切なことは運命や現実でもない。生きていくなかで何を想い、そして何を目指していくか。

 いつか星が落ちてくる夜空が、綺麗に見えているのはそれを見た昴と御波の心が澄んでいるため。『世界』とは自身の想いによっていくらでも変わるもの。

 最愛の人の存在は世界を照らす光となり、そして世界は想う事で創られ、想いを伝え合うことで世界は広がる、ということではないかな。

 そんな世界ならば、星も現実も立場も病も何物にも負けない。
 大切な事は全て私達の想いの中にある。
 友達に遠慮をし続けてきた少女を通してそれを描くところが説得力があった。心の望むままに生きるとはどういうことか、その意味が詰まっているのではないだろうか。

 在りたいように在る、そんな言葉すら似合う内容であった。

 ――終焉するにも関わらず笑顔でいられる理由。アフターの写真にあるようなみんなで笑い合える理由。それを伝えてくるかのような壮大さと美しさがある。

 抱いた想いを他の人たちとも共有して、そして島人たちにもそれが伝わった。そんな想いの広がりの果てに得られたのではないだろうか。

 
 ノーマルエンドやアフターの感動は個別シナリオがあったからこそ、と書いたのはそのためです。特に御波シナリオ総括性が非常に強かった。というより御波という少女の持つ心の強さゆえだろうか。ノーマルエンドでも一番存在感があったような。


 アフターの解釈に少しばかリ悩んだためかこういった捉え方をしたのかもしれない。結果でなく、どう生きたかが肝心だと思いますし。

 ただふと思ったことがある……これはかなり憶測になるのだが、あのアフターの写真の世界は、全員をあるべき姿に辿り着かせ、全員を救ってあげたいという、ライターの願いとか理想の念ではないのか。
 一枚の写真にしていることがまたそう思わせた。いつか健速氏の作品でそんな物語を描き切る作品を見ることができるのかもしれない。

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