Atoraさんの「夏めろ」の感想

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70夏めろ
今まで味わったことの無い味覚を覚えて戸惑ったが、慣れると味わい深く思えてくるのが不思議なところ。ひと夏のエッチな絵日記に色々と細工が施されている。その味は最高に酸っぱい。
 まさかエロゲーで、こういう日記風の作品をやってくるとは思ってもみなかった。



 ひとまず日記について簡単に触れておく。日記というのは、一般的に筆者が出会った出来事や感想諸々を指す。日記のベースは当然ながら筆者の視点によって構成されている。他人に読ませようと思うならば、体験談をいかに膨らませるかが鍵となる。ただし、時間的な説明なしに、日記は用をなさない。日記には流動性がなく、エロゲーのシナリオとしては扱いにくい。後にも先にも、日記風のエロゲーは記憶にない。
 この作品は、そんな悪条件をものともせず、日記風エロゲとして仕上げてきた。とはいえ、完璧ではない。これも日記のように主人公が心に残った情景を羅列しているに過ぎず、実際にタイムテーブル化しなくとも、お話がかなり端折られていることがお分かりいただけるかと思う。おそらく、ユーザーもプレイしている時に場面転換の性急さを疑問に思い、たびたび違和感を感じることがあるだろう。


 日記に関してはここまで。作中の事を少し語ろう。

 この作品では、主人公の心境の変化が手に取るように分かる代わりに、肝心のヒロインの心境は欠片も分からない。主人公が胸を掻き毟るほど悩んでいるにもかかわらず、ヒロインの真意を汲み取ることが出来ずにいるこの構図……我々にとって面白おかしい以外の何物でもない。プレイヤーは傍観者でしかないのだ。
 加えて、ヒロインの特殊な性癖もあいまって、主人公はますます苦悩の日々を送る事を強いられる。これを日記風に描いているから、今までのエロゲーとは違う新鮮味がある。そのため、結ばれた後、お約束のようにイチャイチャするのを微笑ましく思えるほどだ。



 このように、不思議と興に入ってしまった僕だが、エッチにはとことん驚かされた。エッチの時には、「これ別人だよね?」というくらい、ヒロインも主人公も性格が一変してしまう。これには参った。ほんと豹変もいいところである。
 エッチシーンは総じて濃い。背徳感あり、優越感あり、劣等感あり。それも、ヒロイン別に使い分けているから面白い。いや、まさか委員長とつぐみがSで美夏と橘花がMとは……(唖然)。見た目明らかに逆なのだが、このギャップの差がユーザーに対し甚大な破壊力を持っているのは言うまでもない。
 この辺はたぶん、意図的にマニアックさを光らせたかったのか、あるいは青春の欲望そのものを表したかったのだろう。日記風の作品において、ただ物事を羅列するだけでは全く波のない作品と化してしまう。日記の弱点はその起伏の無さにある。ライターである木之本氏は、それを避けるがために、わざとエッチを特化させたのではないだろうか。そして、その試みはもろくも成功し、エッチシーンが一層際立つ作品となっているのだ(と勝手に考えている)。しろ氏の絵が、ライターの逆転の発想によってよりエロく見えるのは、決して気のせいでは済まされない。
 


 ただし問題もある。残念なことに恋愛に至るまでの描写が希薄すぎるのだ。それに、恋愛その後を端折っているので合理性が殆どないし、純愛ものとしては大事なところまで削ってしまっている感は否めない。それでも弁護するのなら、この物語は夏休み終了までに全て完結するという大前提の下に書かれたものと邪推するほかない。これは防ぎようがないアキレス腱なのかもしれない。
 ただやはり、物語を完璧にするなら、オマケでもよいので後日の描写を描くべきではなかったか。いずれにせよ、まったりとした話の割にプレイヤーはまったりとできないのである。ルート確定後は、とくに息つく暇がない。と言っても、決して不快な展開はなく、むしろ「なんだなんだっ?」という感じで終始しているから、一方的に悪いとも言えないのだが。



 さて、無礼を承知で申し上げると、予想していたよりも遥かに穴が少ないので驚いたといったところ。この作品は、明らかに異色と思える組み合わせを一緒くたにした超超超異色の逸作である。個人的には、しろ氏の絵がどこまでエロゲーに噛み合うかという事に注目していたのだが、シナリオの木之本氏をはじめ、ここまでやってくれるのだから畏れ入る。実妹とヤっちゃったり(これは凄い)、ヒロインの表裏の性格が全く予想外だったり(上に書いてます)、エッチの詳細設定(H-Custom)が出来たりと、“まったり系”を名乗るにはあまりにも描写が濃い……、いや濃すぎるとは思わないか、クリエイター諸氏?



 徒然と書き連ねているからこそ、日記系としての完成度は自ずと高い。もちろんエロゲーとしても新鮮であったが、「しろ氏の絵はエロゲーらしくない」という先入観的な発想を逆手にとった木之本氏と、当のしろ氏の見事なコラボレーションを堪能させていただいた。コアなユーザーには一層薦められる作品。日常の中にうまくマニアックを入り混ぜた好作と言える。
 瑞々しさのある日記風エロゲーの正体は、実はかなりエッチなひと夏のマニアゲー。1度お読みになってはいかがです?



【雑談】
 しろ氏はこういう絵も書けるんですね。いや、あるいは木之本氏のセンスのよさでしょうか。『シンフォニック=レイン』で見せたミステリアスさとはうってかわって、かなりエロチックで背徳的な絵に見えました。同じ原画家さんであるにもかかわらず。
 シナリオはシナリオで少しは好き嫌いがありそうですが、間違っても『_summer』やらのまったり系とは一線を画していますので、これから購入される方は注意されますよう。個人的に秋シナリオでは頬が緩みっぱなしでした。
 余談ですが、これほどレビューに戸惑ったのは初めてです。それくらい評価の難しい作品でした。

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