asteryukariさんの「あえかなる世界の終わりに」の感想

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世界観と絡めた物語自体も魅力的な作品であったが、主人公の生き方もまた見ていて面白かったなと。日常と非日常の書き分けが上手でした。
技術の進化により、あらゆる物がネットワークにより網羅される事となった世界。近未来のお話らしく人工知能を持つヒロインなんかも出てくる。加えて主人公の設定もなかなか面白くて、ネットワークが普及した世界ならではの「CQショット」と呼ばれる競技のプロ選手として生計を立てているなど、掴みはかなり良かった。

攻略できるヒロインの数は五人だが個別√はちょっとしたものなので、実質一本道の物語となっていた。ただ、その一本道のメインヒロインであるリップルと、その話の出来がかなり良かったので満足度は高い。

主人公がボディーガードなんて物騒な依頼を受けつつも、序盤は学園生活を基とした日常パートがメイン。学友たちと何気ない会話をして、昼ご飯を食べて、時にはデートだってするリップルが生活に加わってもあくまで平和な日常が描かれていた。退屈に感じる瞬間もあるのだが、これが後々重要になってくるのだ。

中盤以降、具体的にはひまわりとアーティストが登場した辺りから凝ったお話になっていき、主人公もまた競技ではなく命をかけた世界へと足を踏み込んでいく。非日常パートの始まりである。

で、その非日常パートがまあ面白い。危険が付き纏うようになったにもかかわらず、何をしていけばいいか、仲間の目的すらわからないあの独特の空気感がとても心地いい。良かったのが行動するにあたって、これまでの日常と線引きをするシーン。いつの間にか学友達がフェードアウトしてしまうのではなく、しっかりと書き分けてくれたのが嬉しかった。

「これが境界線なんだっ!確かにそんなものがあって、こうして間を遮っているんだっ!」
「俺は知らない間に踏み越えていたらしい。けど、お前達は来るな。大丈夫、まだ間に合う。」

気付いたら巻き込まれていた。しかし、そこに大切な仲間を巻き込むわけにはいかない。主人公の決意と思いやりが感じられる実に素敵なワンシーンだったなと思う。

確かに日常は失われたが、リップルやひまわり達と過ごす日常は確かに存在していて、保保が緩むような場面もいくつかある。ひまわりに洋服を買ってあげた時の三人のやりとりなんかは平和そのものだ。

また、多くの関係は崩れてしまったけれど変わらない繋がりもあり、虎太郎との会話なんかはくるものがある。周りが何と言おうと自分だけは味方であると、すごくいいキャラクターを用意してきたものだ。本当に、その辺のヒロインより輝いていた。

終盤に突入し、明かされる事件の元凶ともいえる瑠璃垣みなもの存在とリップルとの関係。加えてそれを巡る二人の男の話。クリックする手が止まらなかった。話の中で最も衝撃的だったのはやはりあのゲームがどうやって作られているか、その元となる物体の事だろう。うわー、やりやがったなあと。えげつのなさとヤツの屑っぷりに開いた口が塞がらなかった。どうしてみなもが存在できるかがよく理解できる点も憎らしい。

その後もヤツの屑さ加減は止まることを知らず、読み手である私すらも歯ぎしりしてしまうような展開が続く。実は良い人などではない、よくぞこんな悪鬼を最後にぶつけてきたなと軽い感動すら覚えた。そして、だからこそヤツの最期は素晴らしかった。

崩壊に際したリップルとの会話も、これまでの日々を思い浮かべると涙腺にくるような内容となっていて、彼女の本音と願いが入り混じったような叫びが胸に染みた。死んでほしくないけれど、最後の瞬間まで一緒にいたいと思う自分もいる。継ぎ接ぎではない日常が生んだかけがえのない想い、それを強く感じた。

エピローグも後日談でありながら、水面が彼女に託した夢を再確認する場となっていて、この作品にふさわしい締めだったなと思う。リップル視点で主人公にとってどちらの世界が似合うかが語られる点も良かった。

そんなに壮大なお話にはならなくて、敵陣や世界についての情報も不足している。しかしながらシナリオ構成はよくできたのではないかなと。主人公の生き方に焦点を置いて読んでいた身としてはかなり楽しめた。彼にはこれからもリップルと共に永遠の夢を大切にし続けてほしい。

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