t2さんの「もしも明日が晴れならば」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

明るく、コミカルに、そしてドロドロ。異端思想ヒロイン達による「我が儘」と「卑屈」のシナリオは、他人への思いやりが極端に少ないのが特徴。でもその分キャラクター性が強く出ている。「感情移入しないでプレイする」が『もしらば』を楽しむコツです。合わないキャラは「敵」と見なしましょう。
『もしらば』は2006年発売。もう13年も前のことです。名作(迷作)というより既に「古典」の部類でしょう。
そんなんだからいきなりネタバレを食らったりするんです。今更『もしらば』をプレイするような人が悪いんです。はい。

購入したのは『もしも明日が晴れならば リニューアルパッケージ版』です。
Windows10でも動作します。古いゲームの割にスキップは速くないですね(遅くもない)。
ウィンドウ枠強制表示と、ボイスカットなしの仕様。





「主人公がダメ!」「三角関係の描写(または葛藤)のある作品」。
この2つのPOV登録が多い場合、大体どんなゲームなのか想像できると思います。

ドロドロ三角関係ゲームは他ヒロインに攻撃したり対決するシーンが多いのが定番ですが、このゲームは対決シーンが意外とあっさり。
『もしらば』は基本明るいゲームなんですよ。コミカルなシーンも多いです。
「明るい萌えゲー風」+「ドロドロ」。完全に相反する2つを混ぜてしまった異端作品なのです。


特徴として全ヒロインが我が儘であること。特に《明穂》は人の話を聞かず我が道を行くキャラです。
他者への思いやり・与える感情が少ないこと。
「いや《千早》は《明穂》を呪い殺しているじゃないか」と思われがちですが、無意識の殺害であり罪の意識が強く描かれて《千早》自身のキャラを作っています。
そして卑屈であることです。《千早》と《つばさ》は特に卑屈の塊。他人のせいにすることはなく、すべて自分が悪いと思い込んでしまうことがあります。

《明穂》は《一樹》と《つばさ》が心配だから成仏できずに出てきたと書いています。
でも《つばさ》にとってはお姉ちゃんが死んだほうが好都合なんですよね。《明穂》が幽霊でいるのは《一樹》が好きだからという自分勝手な未練がメインなのです。
このように『もしらば』のキャラは全てにおいて自分本位で行動し、他者がどう感じるかはあまり考えません(あっても感情の押し付け)。

さらに書けば、この5ヒロインは何で《一樹》のことが好きなの?という問題があります。
ただ流されるだけのクズ主人公のどこに好きになる要素があるのかさっぱりわかりません。
「《一樹》とお互いに恋人同士」は特に重要ではなく、ただ男の子に一方的に惚れるヒロインの自己描写があるだけですね。

お互いの感情が永遠に交差しない恋愛ストーリー。だから普通の感覚で読むと違和感しかない物語になっています。
ただしその分、ヒロイン単独での個性を高めることに成功しています。「NYAON」さんが描くキャラは大体が「我が道を行くヒロイン」ですね。




《明穂》が《千早》を完全に許したことが議論になっているようです。私からも2つ書いておきます。


まず《たまちゃん》は《千早姫》を斬ろうとしています。《明穂》理論も「アホちゃいますか」とばっさり切り捨てます。
おそらく比較的普通の思考回路を持っている、多くの一般プレイヤー視点を代言してくれているのが《たまちゃん》でしょう。
だから「がんばれ《たまちゃん》!疫病神と悪霊を退治するんだ!!」と応援すればいいのです。

《明穂》は差別化のため変な思考回路にされています。登場キャラ全員が《たまちゃん》思考を持つならモラルの点では正しいですが、
『もしらば』はそれぞれのキャラが独自の個性と考えを持つゲームです。普通の人もいれば変な人(変な幽霊)もいるのです。
さらに重要なのが《明穂》は我が儘と未練の塊であり、自己欲を満たすために化けて出ているので《千早》のことは結構どうでもいいのです。
恨む=他者への攻撃が極端に少なく、自分1人で卑屈になり考え込んでしまう『もしらば』ワールドそのものを象徴しています。

私個人の考えは罪と罰という概念があり、《千早》自身が望む通り何らかの罰は必要だったと考えていますが。
《明穂》は自分とは違う考えを持つ特殊キャラ。完全に理解しようとするからおかしくなるのであって、
少し離れた場所から感情移入しないで《明穂》を見るといいです。この悪霊さんは必要悪なのです。


これだけでは解説が弱いと思うのでもう1つ。
《一樹》《明穂》《つばさ》はまだ死を受け入れられてないことです。

ずっと家族関係だった3人に訪れた突然の死。しかも風邪をこじらせただけです。悲しみや涙もあるでしょうが、それ以上に戸惑いがあるでしょう。
そこに幽霊になったとはいえ《明穂》が帰ってきて日常が戻ってくる。つまりは《一樹》も《明穂》も一応は安心感を得るのです。
いつか早いうちに2度目の別れがあり、2回目のほうがダメージが大きいとわかっていても、今は望んでいた恋人ごっこを続行できるのですから。

《千早》による殺害自白。それはすぐには理解できないことなので《明穂》は許したのです。この時点では《明穂》は《一樹》の隣にいられるわけですから。
この場合、《明穂》の死を少しずつ受け入れていくことで《千早》への恨みは溜まっていきます。
再び失った時に「《明穂》を生き返らせてよ」発言やレイプの感情へと変化していくのです。
《一樹》は多少恨んでいるようです。《明穂》が完全に許した理由は他者に興味のないキャラなのと、それ以上にお別れの痛みを感じている証拠です。




ということで私はそもそも《明穂》があまり好きではないです。「敵」と判断しました。

最初は、一番不遇な位置にいる《つばさ》に期待していたのですが
他ルートで三角関係に巻き込まれるサブヒロインとしては最高のキャラなのですが、
第3話や《つばさ》個別ルートは「何もここまで卑屈にならなくても」ってくらいのグダグダっぷり。
普通のゲームなら主人公が《つばさ》を救うのですが、流され主人公は何も動きません。

《つばさ》と交尾しておきながら、委員長との性行為を受け入れた未遂も十分にギルティですが
入れ替わりネタにすぐに気づかないのは大きなマイナスポイントですね。
私独自のエロゲーマイルールの1つに「恋人同士、もしくは親しい間柄は入れ替わりネタに気づかなくてはいけない」があります。
第三者は気づかない入れ替わりを恋人だけが気付くことは特殊な関係、相手のことをよく理解している証明になりますし
逆にずっと入れ替わりに気づかなかったら?結びつきが弱いのではないのか?NTRを許容する可能性にすらなり得るのではないかと不安になります。
3日も気づかない確信が持てない《一樹》は主人公失格です。そして家族としても失格と言えるでしょう。
《明穂》の押しの強い性格は独特なものでプレイヤー視点でも(伏線なしでも)正体はすぐに分かります。キャラ書き分けがしっかりしているゲームなのに……。

《つばさ》ルートは一応問題解決するのですが、卑屈ヒロインと鈍感主人公のカップルのままでは不安しかありません。エンディング後もまたやらかしそうです。




『もしらば』はお別れをテーマにした泣きゲー、ですがキャラはかなり独特です。ストーリー自体はそんなに中身はありません。
《明穂》か《つばさ》かどちらかを気に入ればもう少し楽しめたんでしょうけど、どちらも合わなかったのは痛かったです。
後期作だと里村かりんや春日井なずなはかなりのお気に入りキャラなんですけど、
《つばさ》は求めていたものではなかったです。このゲームに最も足りていないのはPOV「成長物語」でしょうね。
「NYAON」度が一番低い《珠美》が一番良かったような気がします。

この時代にしては挿入歌の使い方がすごくよかったと思います。キャラが合わなくても何となくの泣き&雰囲気ゲーとして見ればそれなりに楽しめます。
好きなヒロインは応援し、合わないヒロインには感情移入しないことが『もしらば』を楽しむコツです。
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