魔法使いさんの「こんなアタシでゴメンなさい… ~真冬外伝~」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

東雲真冬という、一人のヒロインが全てを凌駕する。売れ線を意識するならば、限りなくタブーな存在であり、ビッチと罵られるだろう彼女。しかし、魅力という一言ではとても片付けられないリビドーを感じた時、真冬は唯一無二のヒロインとなった。まともではない人物が紡ぐ、マトモでない物語。しかし、そこに描かれるのがそれでも恋愛なのかもしれないと思わされた時点で、僕の完敗が確定した。兎にも角にも、況や、こんなエロゲーマーでゴメンなさい…。
『こんなアタシでも…』評

「真性のラブレスセックス少女」

これが、メインヒロインである東雲真冬のキャラクター紹介文。
彼女は調教されたわけでもなくて、薬漬けというわけでもない、根っからのセックス好き。だから、愛という制約に縛られず、セックスを楽しめる。誰とでも、何時でも、自由に男と寝る。主人公という彼が出来ても、それを止めない。

…なかなか衝撃的な設定だと思う。
例えば、これが陵辱・調教ゲーだったり、単なるスワッピングものだったりしたら、飲み込める設定ではある。ただ、この作品が特異なのは、この状況下で恋愛を成し遂げようとする方向性。

取り敢えずネタバレしてしまうけれど、この『こんなアタシでも…』では、真冬の性癖が治ることはないし、それについて、真冬自身が主人公に罪悪感を感じるようにもならない。結局、彼女は主人公のことが好きではあるけれど、愛の無いセックスが好きなことも変わらない。だから、主人公は、彼女が勝手に他人とセックスをしないように、鎖などで肉体的拘束を施して、二人の間を繋ぎとめる。

こんなのが、東雲真冬のエンディング。…この結末を、どう受け止めたら良いのだろう。

僕は、「頭のおかしい、マトモじゃない男女の結末」で括る事で大凡間違っていないと思う。
現在の日本の倫理観や道徳観、恋愛観といったものを通した、“普通・常識”から、それが導き出されて当然だとも思う。
…でも、そう思う僕の頭の反対側で、途轍もない、形容の仕様がない、どす黒い感情が沸き立っているのを、僕は隠し切れない。

何故かと問われれば、東雲真冬から目が離せない。
表面上は純愛ゲームに登場してもおかしくないような彼女が、その裏では愛のないセックスで痴態を晒す姿に、激しく劣情を感じてしまう。
そして、結局最後までラブレスセックスに罪悪感を感じない“あばずれ”女が、何故かエンディングでは主人公に拘束されることを望むことに、不思議な感傷を覚えてしまう。


…これには、まいった。
平時、雑食ゲーマーとして萌え純愛から鬼畜陵辱までプレイする僕だけれど、こんな奇妙な感覚でプレイを終えたことが殆どない。

例えば、僕が萌えゲーをプレイする時、登場するヒロインには、萌えゲー“らしい”ヒロイン像を求めていることに、しばしば気付く。
いじらしさ・一途・ツンデレ・積極性・淫乱・依存・堕落…etc.
姉ゲーなら、調教ゲーなら、こんなヒロインであるべきだ。…という、一種の観念にとらわれたりする。
だから、例えば、萌えゲーのヒロインが非処女だったりすると、それは僕の中で簡単に批難の対象になったりする。何故なら、僕にとって、愛らしい彼女が過去に男に抱かれているという事実は、萌えを阻害する要因となり得る場合があるから。
ただ、これは、萌えゲーをプレイする時のスタンスだから、相手にエッチのイニシアチブを期待する姉ゲーであったり、快楽に堕ちてゆく過程が娯楽となる調教ゲーの場合、非処女性は全く問題のない事項にかわったりする。

つまり、期待するものが、期待通りに出てこなかった時、噛み付く(…ただ、困ったことに、望んだものが望んだ通りに出てこなくとも、期待以上・予想外の良回答が返ってきたりすると、その批難をも取り込んで肯定してしまう事があるのだから、我ながらいい加減なレビュアーだとは思う)。

そんな、美少女ゲーム的蓋然性に塗れた、僕のつまらない通念をズタズタに切り刻んでくれたのが、東雲真冬だったのかもしれない。

僕がプレイしてきたエロゲーにおける恋愛は、大抵、心と身体が一つであろうとした。ハッピーエンドは、心と体が一つになった者同士でなければならなかった。
でも、彼女は最後まで誰のものにもならなかった。誰の色にも染まらなかった。
僕は、それこそ何百という数のヒロインとのエンディングを、何千というエッチシーンを見てきたが、どのヒロインも美人で、心優しい、理想を具現したようなキャラクターたちだった。しかし、完璧といえるヒロインたちの中にあって、東雲真冬という存在が如何に煌めいているか。
こんなにも僕のリビドーを掻き立てたヒロインは、未だ嘗て存在しなかった。それは、僕の中で、東雲真冬が史上最高・最凶のエロゲーヒロインになった瞬間であったように思う。


『こんなアタシでゴメンなさい…』評

『こんなアタシでも…』の続編である当作品は、くだんのエンディングから半年後を描いた外伝。
前作における衝撃の結末から考えれば、些か尚早ともいえる時間だが、今作における真冬は、その性癖を克服しつつある。肉体的拘束も解かれているし、主人公との関係も至って穏やか。というのは、前作における真冬のアイデンティティともいえるラブレスセックスを、彼女自身が否定しているから。
ただ、病気(語弊はあるが)が完治しているという訳ではないので、普段主人公が満たしてくれる肉体的欲求が、何らかの理由で昇華されずに限界点を迎えてしまうと、流されてしまうという部分は残っている(しかし、既に真冬の中でそれが罪悪という認識が出来上がっているので、前作のラストで真冬が主人公と交わした「発病したら殺して」という約束を守るために、彼女は自ら命を絶ってしまう=バッドエンド)。

…さて、こんな感じで随分と可愛らしくなってしまった東雲真冬だが、正直にいえば残念だという、下卑た感想を持ってしまう僕は、僕自身に本当に苦笑せざるを得ない。言わずもがな、僕は偉大なセックスシンボルを失ったも同然なのだから。

ただ、この作品が心底意地悪いのは、真冬を幸せにするのも不幸にするのも、プレイヤーの一存に委ねられるという点。
これは、選択肢によって結末が変わるマルチエンディングという部分において、前作から変わりない。唯一違うのは、主人公でなく、真冬でもなく、プレイヤー視点(神視点)にて展開される選択肢にある。ここに、彼・彼女の意思は何一つ尊重されない。

選択肢を選んで結末を変えるというシステムは美少女ゲーム的に一般的だからして、これが特別ということはない。でも、僕は、ヒロインを生かすのも殺すのも、いつだってお前なんだと言われているような気がしてならない。
見知らぬ男と交わる真冬を性の捌け口とするために、彼女を簡単に地獄へと叩き落せる反面、主人公との恋愛・結婚・出産を通じて、これまで陰惨な道を歩んできた彼女を苦悩から解き放ち、幸せな人生へと導くこともできるのだから。

「生まれてきて、よかった」

心から愛する夫と子どもに囲まれながら、生きてきて初めてそう実感している真冬を見て、僕は、何とも無しに、真冬が何者からか解放されたような気がした。…間違いなくこれは僕の妄想だし、人としてぞっとしない感想だと解っているのだけれど。


総評

『こんなアタシでも…』が発売されたのは2001年。当サイトでこの年にリリースされた作品群を見てみると、本当に灰汁の強い作品ばかり並んでいるのがよくわかる。まだエロゲーのカテゴリ化が進んでいない時期だけあって、恋愛を描いた作品としては異端ともいえる『こんなアタシでも…』であっても、生まれる地盤があったのだろう。
そして、完結編とも呼べる『こんなアタシでゴメンなさい…』がリリースされた2005年。…このたった4年の間で、作品の傾向が著しく変遷したことを、再び年間統計を通して確認することができる。

何故、前作にて絶望的ともいえるエンディングを示しておきながら、続編では救いの手を差し伸べたのか。

確かに、「萌え」躍進の年にあって、『こんなアタシでゴメンなさい』がその影響を一切受けなかったといえば、それはないだろう。明瞭に変化した真冬とストーリーに、それを見ることが出来る。
しかし、そのハッピーエンドが紙一重であること。そして、何ゆえ『こんなアタシでも…』が、カルト的な支持を得たかを考えると、やはり行き着く先が、嘗ての東雲真冬であることを、僕は疑わない。

アンチテーゼ的な作品では、恐らくない。しかし、強烈にアンチテーゼを感じてしまう。
そう思えること自体、僕は毒されているし、“そういう時期”にこそ『こんなアタシでも…』及び『こんなアタシでゴメンなさい…』をプレイできたことを僥倖と思う。

『こんなアタシでも…』の、全体的なクオリティ、ボリュームの向上。『こんなアタシでゴメンなさい…』までの半年間における、真冬の変化を描いたストーリーの追加。…こんな感じが、僕が切望するリメイクの形。
漸く幸せな結末を迎えられた彼女を再び汚したくなるこの衝動。僕は心底、東雲真冬という小悪魔…いや、大悪魔に魅せられてしまったのだと、痛感してならない。


※補足
実は『こんなアタシでゴメンなさい…』には、『ゴメンなさい…アタシのせいで』という作品も収録されているのですが、こちらは上記の2作品とは設定もコンセプト違う、まったく別の作品だったので、実はあまりプレイしていなかったり(魅力も無かったし)。当該作品は評価に含まれていない点を、ここに記しておきます。

魔法使いさんの「こんなアタシでゴメンなさい… ~真冬外伝~」の感想へのレス

自分はこの作品のレビューは多く読めば読むほど
惹かれるコトに気づいているのですが、プレイしたが最後
ある種の抗体を身体に植え付けられそうで見るだけに徹しています。

寝取られの怖いモノ見たさは最近自分が持っている好奇心の中でも
郡を抜いた位置にあることがわかってきて、M寄りなのか?そうなんだろうか??と
少し自分の性癖をも見直してしまう、そんな感じです。

実際このヒロイン設定は希というのもはばかれるくらいの唯一無二なのでしょうが
あぁ決してこれ以上量産は勘弁してほしいなと、ぽつぽつとでも現れるものならば
エロゲの崩壊さえ起こしかねないパンドラのソレなんだろうなと、レビューを読みながら
そんな感想を持ちました。

2008年07月07日20時40分45秒
METOLOさん、長い長い文を読んで頂き、ありがとうございます。

…さて、METOLOさんはこのゲームに惹かれているものの、真冬症候群に罹りそうでプレイが躊躇われる、といった感じなのですね。
個人的見解ですが、恐らくプレイしても平気…というより、割とあっけにとられるのではないかと思います。
というのも、まず何より『こんなアタシでも…』は2001年製ということで、今から見ると全体的なクオリティがかなり低いことが挙げられまして。グラフィックもBGMもしょぼいですし、シナリオもエロシーンも短いですし、システム周りの弱さもあって、ここ3年前後に発売された作品と比べようものなら、はっきりいって月とすっぽんです。
期待される真冬に関しても、作中ではかなり抽象的に描かれていまして(…というより描写自体あまりないです)、僕のようにリビドーを感じるには脳内補完(妄想力?)が必要になると思われます。
寝取られについては、『妻しぼり』や『妻陥落』がいける口なら、恐らく大丈夫です(…といっても、この作品は厳密に言えば寝取られではないんですけどね。真冬が誰のものでもない以上、“取られる”ことはない訳でして)。
…なので、もし気になるようであれば是非プレイしてみて下さい。中古なら安いですし。

『こんなアタシでも…』での真冬に魅せられた僕としては、『こんなアタシでゴメンなさい…』と同等かそれ以上のクオリティでリメイクないし、彼女のようなヒロインが登場するエロゲーが再び出た時に、エロゲーマー的アナフィラキシーショックに陥らないか、その方が心配だったりします。
…ではでは、長々とレス失礼しました。
2008年07月07日22時45分57秒

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