asteryukariさんの「シンシア ~Sincerely to you~」の感想

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両足で歩くことすらままならない、何もできないシンシアが徐々に徐々に色々な事を覚えていく、それが非常に魅力的だった。そして、そんな彼女をみんなが愛し、支えているという事実もまた素敵だ。本当に幸せに満ちた作品だった。
旅客機墜落事故の唯一の生き残りが見つかった。だが彼女は長い間ジャングルにて狼に育てられていたため人間性を失ってしまったんだと。事故を起こした張本人である主人公が罪の意識から、その少女が住むお屋敷に泊り込んでリハビリに協力していくというのが主な話の流れ。

そう、こんな流れで面白くならないわけがなかった。導入部分こそシリアス全開だが、全てを読み終えた後に感じたのはとてつもない温かさだった。誰が優しいとかではなく、本当にに登場人物が皆良い人ばかりなのだ。屋敷の主の仇である主人公に対してみんな優しく接してくる。中には敵意を向けてくる女の子もいるが最終的には認めてくれる。

そして、そんなみんなの中心にいるのがシンシア・キュリオちゃん。結局は彼女の存在がそのまま本作の魅力に繋がっていくのかなと思う。もうとにかく可愛くて可愛くて仕方ないのだ。警戒心が強く、はじめこそ主人公に対して威嚇をしたり、噛みついたりしていた彼女がとあるきっかけで心を開き始める。そして、心を開き始めてからは…幸せの時間がスタートする。

リハビリの一環としてまず始めたのが食器を使った食べ方。上手くフォークを使うことができずに泣き出してしまう彼女を見るのは辛いが、だからこそ…だ。彼女が初めてフォークを使うことができた時、気付けば泣いていた。まさかこんなことで涙するとは思っていなかったがどうしようもない感情が私の中を駆け巡っていたのだ。もう本当に喜ばしいことだし、感激していたマリアと瀬緒の気持ちもよくわかる。そりゃあ揉みくちゃにしてしまうだろ。

そこからリハビリはどんどん順調に進んでいき、「きゅ、きゅ」や「わぉーん」を覚えていく彼女。満面の笑みでそれらの言葉を口にするシンシアちゃんの可愛さと言ったら…。思わずこちらまで頬が緩んでしまう。主人公のお腹が鳴った時に「きゅ、きゅ」と尋ねてくるシーンでは面白さと可愛さが合わさってどうしようもなくなってしまった。はぁ…抱きしめてあげられないことがもどかしい。

後半になると急な展開が続き、シンシアちゃんがケガをしてしまった時は自分も作中の当事者のように心配した。どうにかしてください神様、いやライター様と縋り付いていたのをよく覚えている。そしてやってくるわけだ別れの時が。

別れと言っても記憶との別れで、彼女のためを思うと元の記憶が戻ったのはとても喜ばしいことなのだが、まあ寂しさは隠せない。「あんたに何か言われる筋合いはないのっ!」なんて言葉を浴びせれた時なんかはもう絶望した。娘を持ち、反抗期がくるとこんな感じなのかなと死んだような目つきで彼女を見つめていた。

「食事、食べさせてもらった」
「お膝で絵本を読んでもらったの。嬉しかった」
「動物園で、ぞうさんにりんごをあげたの…本当に楽しかった」

全てを思い出し涙する彼女を見て号泣してしまった。言葉の合間合間に回想が挟まれるのが本当にずるい。何よりも嬉しいのが一コマではなく台詞付きだという点。「ようございましたね。お嬢様」と言う瀬緒や嬉しがる彼女の反応をきちんと描くことで、その時の温かい光景を再現しつつ完全に記憶が戻ったことを示してくれる。あのシーンでこの作品に対する評価が決まったといっても過言ではないほど、印象的で素晴らしいシーンだった。

BADでは主人公との出来事を思い出すも主人公が命を落とすという悲しい結末が待っているが、それを見た後だからこそこんなにも心が揺れてしまったのだと思う。これはシンシアルートだけでなく他のルートにも言える事で、BADの存在がその後の物語を引き立てていたなと。

みんなに愛され育った彼女は、やっぱり結婚式でもみんなから祝福されていて本当に温かい気持ちになった。お嬢様を泣いて祝う瀬緒やマリア、シーなんかが見られればより良かったかもしれないがこれでも十分すぎるほど嬉しい。シンシアちゃん、おめでとう。

振り返ってみるとやはりシンシアの存在が大きかったなと思う。少しずつ少しずつ距離を縮めていき、これまた少しずつ少しずつ成長していく。

その光景はまさに幸せの時間だったのだ。
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