Atoraさんの「永遠のアセリア -The Spirit of Eternity Sword-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

SLGに飢えていた18禁ゲーから見ればまさに天恵。たしかに、「エロゲとしては」間違いなく面白い。しかし、その枠に存在価値があるののだろうか。業界全体のゲーム性を高めていくには、そのうち、余計な枠を取り払った見識が必要になってくる。そう思わせてくれる大作だ。
   「エロゲにしては……」

   「18禁ゲームにしては……」

 この作品に限らず、何かにつけてこの文句を多用し、できるだけエロゲのカテゴリの中に収めて高く評する人がいらっしゃいます。ですが、こういった表現はそろそろ控えるべきではないかと愚考します。というのも18禁ゲームが続々と家庭用ゲーム機へと移植される中、その表現を使い続ければ、所詮は逃げ文句となってしまうから。

 質の低下は、ユーザーが忌避しようとすれば、自ずと進行は食い止められる。
 メーカーに面白いものを作らせるには、ユーザーが求めていく必要がある。

私がそう考えるからです。18禁ゲームだからと言って、少々緩いシステムで及第点を与えるのは苔むした評価となってきたように感じます。うまくは言えないんですけれども、家庭用と融合しつつあると言うか。FF10-2がギャルゲだのなんだの騒がれた背景は、まさにそれを反映してると思うんですよ。エロゲーの認知度が上がった今となっては、エロゲをエロゲ内だけで評価するのも、時間が経過しすぎたように思えます。そろそろ、家庭用と同列に見てもよい頃合ではないでしょうか。

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 上記の事も含めて、以下は作品の評価になります。本作は、AVGパートとSLGパートに大分できます。本作のバランスは大体同じくらいだと考え、それぞれを評価したいですね。


◆AVGパート評◆
 ファンタジーもののAVGパートには、ノベルゲームとはまた違った趣きや、魔法や特殊な能力といったファンタジー世界の醍醐味など、色々と欠けてはならないものがあるのではないでしょうか。要は普通の王道とは少し違ってないとダメだと思うんです。ファンタジーものは、世界の説明が稚拙であればあるほど、読者が内容を全く飲み込めないし、逆に説明すればするほど、くどすぎて嫌悪感をもよおしてしまいます。その兼ね合いがあってこそ、我々は良質な物語として認知できる。だから、文章が稚拙すぎてもいけないし、くどすぎてもいけないと思うんです。
 たとえば、我々の世界となんら変わらない世界は、エセファンタジーでしかありません。また、必要以上に説明文を多用する物語も、ファンタジー世界を偽装しているに過ぎず、ファンタジー物語としては不完全なものです。不可思議なことが色々と起こるから、ファンタジーと呼べるのではないでしょうか。ゆえに、起こること全てが説明的な文章の羅列だったら、読者諸兄もつまらないと思うんです。

 こう考えた上で、本作を見ていくとしましょう。

 手始めに、導入部に出てくる異世界の言語から参りますが…、これは「うまいなあ」と思いました。「言語を未知のものに変える」手法は昔からありますが、この発想自体は悪くない。むしろ使い方次第だと感じましたね。ただし残念なことに、今回ばかりは見事に空回りしています。肝心のボイスが棒読みときた。これはいただけません。それこそ、呪文みたく抑揚があればいいんですけど。男キャラ(ラキオス王)は、個人的にあのままで十分ですが。某国の国営放送のようで、わくわくしないんですよね。

 シナリオは辻褄があっていて、とても分かりやすかったですね。でも残念ながら、分かりやすいだけじゃ及第点しかあげられない。これは悪い言い方なんですけど、この作品からは、ストーリーにあまり特長を見出せない。たとえば、食卓ではことさらに異世界の食べ物関係の説明が多いし、旅に出てもその世界の常識である知識の説明が多い。楽しくないんですよ。もっとこう、われらの好奇心を呼び起こして欲しい。

 まあ、これらには少々目を瞑るとしても、やっぱり主人公が超重度のシスコンで妹がメガネってのは余計。シナリオを傷ませている原因でしょうね。果たして、この設定は必要だったのかなと邪推してしまいます。さらに言わせていただきますと、佳織の性格や行動そのものに参りました。これは兄貴が原因かもしれませんけど、「佳織はただ待つことしか出来ない囚われのお姫様」なんですよ。主人公から見れば「ああ、なんてかわいらしいお姫様。今すぐにでもお救いに参らねば!」なわけ。うおおクサい……あまりにもクサすぎます!!

 これ、主演俳優である今日子やら光陰やら瞬やらには申し訳ないのですが、この設定の時点で、彼らは「はい、引き立て役お疲れ様」という状態なんですね。ことに瞬にかけては根っからの悪役なんで、どうしても損する役割ばかりを演じさせられていた。佳織が「もしかしたら殺されちゃうかも!」といった覚悟を持っていれば、我々が彼女を見る目もまた違っていたでしょう。ところが、「お、お兄ちゃんは必ず助けに来てくれるんだから!!」なんて妄信的な言動ばかりしているので、プレイヤーとしては助けに行きたくなくなりました。あいたたた、です。
 これでは、妹個人に集まる酷評も致し方ありません。庇いようがない。ちなみに、私も佳織は大嫌いです。

 この物語は、主人公視点を多用しているのですから、少しはプレイヤーを主人公と同調させる配慮が欲しかったですね。置いてけぼりを食らう場面が、佳織関係を中心にいくつかありましたし。全体としてはまとまっているんですが、いま一歩押している場所が暖簾なんですよね。芯を衝いてほしい。


◆SLGパート評◆
 アイデアが沢山詰まったシステムです。ただし、粗さは否めないので注意。アイデアを詰め込みすぎたのが原因だと思いますけど、かなり自由度に欠けており、爽快感や緊張感は殆どないと言えましょう。とくに後半や2周目は、作業化の様相を呈してきます。
 たとえば、部隊数が少ない点や建築(内政)の意味がほとんどない点。個々のシステムの出来不出来にムラがありすぎるといったところでしょうか。

 それはさておき、3vs3の戦闘システムのバランスは、なるほどなかなか考えられているなと思いました。経験値が限定されているので、無茶苦茶なユニットは作りようがない。これは、まあアリなんじゃないかな。それに加え、汎用キャラにボイスをつけていることには好印象。丁寧なつくりを伺わせます。
 ただし、一本道のシナリオの弊害か、部分的にタクティカルな一面はあっても、マップを生かした広い視野での戦術性は完全に失われている。街中と道でドンパチやっていいけど、山とか川とかは入れませんよ……といった『大戦略―永遠のアセリア風―』1周目はこれでいいんですけど、問題はそれ以降。アリスソフトみたいな中毒性は、このゲームにはないです。
 こちらはAVGと比べるとちょっと評価が短くなりましたが、早めにまとめに入っておきます。先に書いたとおり、アイデア自体は相当豊富だったと思いますけれど、いかんせん作りこみが甘い気がします。「SLGパートは必然的にAVGパート主導で機能する」ため、一本道のシナリオに乗っかった作業をこなしている感が否めない。とくに2周目以降はそれが顕著になる体たらくです。

 でも、プレイヤーには様々なタイプがいらっしゃいまして、このシステムを面白いと言う人もいれば、面白くないと言う人もいる。やや後者に立ち位置のある私としましては、SLGにおける評価の甘さを痛感した一作でした。ただ、繰り返しますように、私自身の評価は「エロゲにおけるシステム評価ではない」ということです。ちょっと厳しいかもしれませんけど、ゲーム界全体的には中の上といったあたりでしょうか。あくまでも「エロゲとしては」よろしいんですけどね。


◆総評◆
 このゲームは各カテゴリに差がありすぎます。システム、シナリオ、絵、サウンドの4つを順位として表すなら、

   システム→シナリオ・サウンド→絵

としたいところです。とくに絵が……ちょっとこれは見れたものではありません。同人レベル。パッケージのアセリアは「うまいなー」と思ってたんですけども、蓋を開けてみると立ち絵も気に入らない。リテイクして欲しかったですね。

 全体を俯瞰すると相当レベルは高いのに、個々の評価となると、とたんに山あり谷ありに……。ほんと惜しい作品ですね。次回作に期待するとしましょう。
 ただ、前作『風と大地のページェント』がそう話題にならなかったことを考えますと、これがザウスレーベルから出て世に広まり、ついにコンシューマ化にまで至ったのは、あるいはちょっとした奇跡だったように思います。



【雑談】
 一応点数は“エロゲ”としてつけることに。ややこしいですけどね。永遠神剣聖賢のボイスが某人なのは、笑わせていただきました。ともかく『永遠神剣第2章』に期待するとしましょう。

Atoraさんの「永遠のアセリア -The Spirit of Eternity Sword-」の感想へのレス

初めまして。読解力が足らないのか、少し解らないところがありましたのでご質問させて下さい。

「エロゲとしては」という括りを否定的にみているAtoraさんですが、結局のところ点数を“エロゲ”としてつけることにしたのは、このサイトが「エロゲー」批評空間だからでしょうか(…まぁ現在は一部のコンシューマー作品も何故か統合されて、美少女ゲーム批評空間ともいうべきサイトになっていますが)。
それとも、過去にAtoraさんが付けた点数との整合性が取れなくなるから、という理由でしょうか。


また、やや厳しめなAVGパートの評と

>僕自身の評価は“エロゲにおいてのシステム評価ではない”ということ。ちょっと厳しいかもしれませんけど、全体的には中の上といったあたりでしょうか

というSLGパート評から推測するに、この「永遠のアセリア」を”エロゲとして”ではなく、家庭用と同列に見た場合の点数を付けるとすると、Atoraさんの採点方式ですと【凡作70・69・65・60・59・55・50】のあたりに当て嵌まる、ということになるのでしょうか。


「永遠のアセリア」は各所で評価が高く、以前から気になる作品でした。
今回Atoraさんは80点を付けておられますが、実のところはあまり面白くなかったのかな…と思ったので。

アセリアの感想そのものへのレスではなく申し訳ありませんが、お答え頂けたら幸いです。
2006年10月18日01時26分14秒
レス大変興味深く拝読させていただきました。質問形式なので今回はそれにお答えする形をとらせていただきます。


 最初の質問ですが、これは非常に難しい。前者とも言えますし、後者とも言えます。ただ、今回は後者のほうに含みを持たせて、点数を入れさせてもらってます。もちろん、これは“エロゲー批評空間”という場所の性格を考慮しているつもりです。点数ってのはもっと独善的で構わないと自覚はしているのですが、どうも性分みたいです。
 この作品は、感想を書いた後に点数化に相当悩んだんですけど、「だいたいこのくらいではないか?」と考えてつけているので、あるいは-5点くらいはあるかもしれません。なぜマイナスだけかと言いますと、僕の中では80点が上限(エロゲとしても)だったんです、この作品は。

 2つ目の質問に関しましては、貴評のとおりですね。個人的に『コンシューマではシステムを、18禁ではシナリオを』という土台をもとにしています。FF10-2を引き合いに出しましたけど、当たり前の話、PCゲーと比べて家庭用はプレイヤーの年齢層が低くなりがちですから、家庭用のほうは、メーカーも“読む”ことよりも“遊ぶ”ことのほうに注力しているんじゃないかな、と考えております。
 もう10年以上も前ですが、僕が家庭用に手を出した時、シナリオの評価とかあまり考えてなかったです。いや、幼かったからとかそういう問題じゃなく、今でも当時プレイした作品をリプレイする事がたまにあるんですが、シナリオには、とやかく言えませんね。

 あと、必ずしも、アセリアが面白くなかったというわけではありません。“エロゲとしては”いいんですよ、あくまでも。ただ、家庭用も入れて点数を出せば、どうしてもシステム面(SLGパート)ではヒケをとってしまう。点数にすれば下がってしまいますね・・・。もし点数にするなら・・・70点くらいでしょうかね~。
 ただ、全部が全部コンシューマにもってきて評価することなど土台不可能ですんで・・・・・・。エロゲとして評価したほうが、過去プレイした作品やこれからプレイする作品を点数化するひとつの指標になると思うんです。僕は、鍵、月、葉いずれの畑にも属しておりませぬゆえ、雑食となりがちです。だから、この作品を基準に点数をつけるなんてことはしていない・・・いや、できないわけでして。“点数化”は、かなり曖昧で便宜的なものと捉えてくださったほうが、ありがたいのかもしれません。


 まあなんだかんだ言いましたけれども、評価は家庭用も考えた評価ですが、点数はエロゲーとして(今のところ)つけてます。でも、その枠を取っ払ってごっちゃにしたほうが、エロゲーのシステムのレベルを底上げできるんじゃないかなー、と思いまして、前置きをふって考察させていただきました。

 甚だ、言葉足らずで誤解を招くような批評で申し訳ありませんでした。この場を借りてお詫びします。

 何か分かりにくいところございましたら、よろしくお願いします。

2006年10月18日09時58分37秒
稚拙な質問に大変丁寧なレスをして頂き、ありがとうございました。

確かに、点数というのは作品を評価をする上での一つの目安でしかない。回答が一つしかない類のテストではないのですから、当たり前のことですよね。お恥ずかしい話、私なんぞは採点を直感によるランク付けのようなものに委ねていますから、尚信憑性が薄い訳で。
しかし、私のような採点者がいても、ある程度データ数が集まってくると、作品ごとのおおよその点数(平均値・中央値)が固まってきますし、それが(割と)万人の意見というそれなりの事由をもって、一つの参考になります(あくまで参考ですが)。
だからこそ、その点数、もとい評価がより信頼性を持つように。そして、エロゲーのステージを一つ上げる為にも、Atoraさんが提唱する評価包括論(仮)は意味があるな、と思います。

>質の低下は、ユーザーが忌避しようとすれば、自ずと進行は食い止められる。逆に、メーカーに面白いものを作らせるにはユーザーが求めていく必要がある・・・。

は的を射ていると。

が、現時点ではたとえ多少の認知度が上がろうとも、やはりエロゲーとコンシューマでは市場の大きさが違い過ぎますし、それに依拠する、開発力をはじめとしたメーカーの様々な力には歴然とした差があるのは間違いない訳で、一緒くたにするのは厳しすぎる(ことRPGやSLG等の「遊べる」ゲームに関しては)。
だからこそAtoraさんも

>点数はエロゲーとして(今のところ)つけてます。

としているのだと、勝手に推測した次第です。


これは私見なのですが、現在のエロゲーの多くがAVG・ノベルタイプの作品である点から、大勢としての「ユーザーがメーカーに求める面白いもの」がシステムとはいい難い気がするんです(勿論、システムに求める人もいるのは、アリスソフトやソフトハウスキャラ、エウシュリーなどのメーカーの存在が証明してくれます。他、”REVELLION”への落胆なんかは象徴的ですね)。

なので、エロゲーのシステムのレベルを引き上げる為には、ひいては将来的に家庭用と同列に見るためには、ユーザーがそこを求めていかなければ難しいのではないかと思います。難しいなぁ…。


以下、なんだか取り留めが無くなりそうなので、ここまでしておきます。それこそ「何を以ってシステム(及びゲーム)と呼ぶか」なんてそこかしこで議論がされていますしね。というか、そもそもアセリアの感想本体じゃないところに食いついて済みません。

感想とレス、とても面白かったです。お付き合いいただきありがとうございました。
そして、論点がずれていたらホントにごめんなさいです。
2006年10月18日23時36分24秒

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