dr.takさんの「あした出逢った少女」の感想

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ドグラ・マグラの影響を色濃く受けた奇作
発売以来何度もプレイした作品だが、まだ評価していなかったこともあり、せっかくなので長文を。
よく「人を選ぶ」という言葉が使われるが、本作はまさにそのような作品であり、
評価が分かれるのも致し方ないように思われる。

まず、呉氏がドグラ・マグラ信者なのは、ペンネームや他作品からもわかる通りである。
例えばペンネームはドグラ・マグラの登場人物である呉一郎から取っているのは一目瞭然であり、
同著書で呉一郎の婚約者として登場するモヨコは「水夏」の中で猫の名前として出てくる。
また、同じドグラ・マグラ信者で有名な大槻ケンヂのファンでもあるようで、
「Clear」ではオーケンの曲のタイトルである「ヌイグルマー」というあだ名の教師が登場したり、
オーケン独特の「ゴンヌズバー」などという表現を使ったりしている。

このような影響は、この「あし少」でも存分に発揮されている。
例を挙げると……
・主人公が記憶喪失状態で物語が進行
・冬香の書いている小説の始まり方がドグラ・マグラに類似
・何が現実なのかわからなくなるような物語構成
・脳髄、精神病などといったドグラ・マグラを連想させるような単語多数
・ヒロイン達の家の苗字が橘高(筋肉少女帯のギタリスト)
などがある。

以上のように、呉氏の他作品と比較してもドグラ・マグラ色が濃く出ており、推理物ということを考えると、
三大奇書のひとつであり、探偵小説でもあるドグラ・マグラへのオマージュ的作品と言えるのではないだろうか。

さて、そのような本作だが、シナリオに関するいちばんの特徴としては、
現実とそれ以外の部分(過去とは明記しない)との境界が非常に曖昧であるということである。
この物語を幻想的なものにしているファクターとして、
・主人公が自らの状態を理解していないこと
・過去と現在の時間軸を上手くミックスさせていること
・時折挿入される主人公の夢や、第三者の日記などによって真実がぼやけてくること
・研究所などといった現実的には異質なものの存在
などが挙げられる。

故に、ただぼんやりテキストを眺めていても、物語の全容が全く掴めないため、
何も考えずにプレイした場合は最後に後味の悪さだけが残るかもしれない。
また、一般的な推理物を期待してプレイした場合においても、
突飛な展開や、ある種反則的な結末に鼻白むことになるかもしれない。
しかし、この物語の世界観の根底が奇書と呼ばれる類のものにあることを考えると、
いかにも呉氏らしい作品として納得することができる。

音楽なども、霜月はるか女史の「夏の羽音」や、その他BGMなども世界観にマッチしており、
シナリオだけでなく総合的にも好きな作品なのだが、ゲームとしてはやや不満も。
というのも、ヒロインの攻略順が特に決まっていないということ。
ヒロイン個別の順番に関しては、好きなように攻略できても良いと思うが、
この作品の場合、せめてトゥルーだけは最後固定にしておいた方が良い。
自分は初回プレイ時、たまたまヒロインの襲われる順、つまりトゥルーを最後に攻略したが、
もし逆に最初にトゥルーエンドを見てしまった場合、面白さが半減してしまいかねない。
この点だけが不満点として残るが、それ以外の面では十分満足。

最初に書いたように、人を選ぶ癖の強い作品であることは間違いないが、
呉氏の「水夏」「何処あの」「Clear」などが好きな人は本作も気に入るのではないだろうか。

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