比翼れんりさんの「Pieces/渡り鳥のソムニウム」の感想

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この夢 刻んで繋ぐ 世界の果てに いつかきみを手放すなら
Whirlpoolの2年ぶりのフルプライス新作です。引き続き看板原画とシナリオの顔ぶれは変わりませんでしたが、作風はコメディ全開のハイテンション魔女モノから一転、シリアスまで含まれた真面目な洋風学園モノになりました。異世界ではあるも、魔法や魔物などの非日常要素はなく、強いていえばキーは天使。これが作品全体のポイントになっていく構成でしたね。

共通ルートは主人公と紬くらいしか居なかった相関図(サブも居るには居るが…)にヒロインたちが加わっていく顔見せが主になります。特に結愛が強敵でしたね。結愛の悪夢を引き寄せてしまうことが、この先大きな意味を持つことになるわけで、その説明を兼ねてか、ひとつ悪夢の解決に奔走するイベントがあります。転換点とまではいかずとも、ここから夢を通した各ルートに分岐していくイメージかなと思いました。

非常にパワーのある後輩キャラであるありす。子守唄に固執する側面や家族の話題を忌避しているような側面が、揺らぎを感じさせて、また意味深なキャラクターになっているなと思います。これはどのルートでもそうなのですが、個別ルートを2部構成にしているのが、ことありすルートに関しては上手くいっているように見えます。子守唄を歌うまでに至るのが前半で、そこから一気に伏線を回収していく後半。双子姉妹のワードがちらついたところで、入れ替わりなんかも予想できましたが、わりとシンプルな展開でしたね。ただ、母親を救う結果になる橋渡しを主人公の能力で担っているのが設定を活かしたと感じました。夢の中で繋がる"もうひとりのありす"の存在もおもしろく、さしずめ"鏡の国"にいる彼女と姉まりあと互いにシンクロしながら、紐解きがされていくのが終盤の見せ場だなと思いました。

4人ヒロインがいれば、必ずひとりはこういうタイプのヒロインがいるなと思う深織。まあ寝てばかりいるからか、あまりお姉さんっぽさは感じませんけれど。ただ、その「寝る」ことが、深織の個別ルートはもとより、作品全体の物語に関わるファクターでした。夢が大きな意味を持つストーリーなだけに、彼女がどこまで表舞台に出てくるかが疑問でもあり、楽しみな点ではありましたが、どちらかというと裏方の重要人物であり、想像以上の役割でした。元々、天使という存在をちらつかせたいたわりには、大きく話が動いていかないなと思っていましたが、このルートでは、悪夢らしく獏が登場したり、頻発する地震や、なぜ深織が眠り姫と化していたのか等、実は作品の根が深くまであることを案じました。彼女自身を救うエンディングは、個別ルートですので、これでいいと思うのですが、代わりに眠りにつくことになる結愛のことを含めて、新たな伏線を仕込んだ部分も多く、すべてが解決というわけではないようです。

特にルートロックはないようですが、紬と結愛に関しては、やはり物語の核になるヒロインであり、個別ルートもそれを表したものになっているように思います。この2人が作中の好きなキャラクターのツートップでもあるわけなのですが、特に紬の絶妙な幼なじみ感というか、距離感がいいですね。共通や他のルートでも存在感があります。そんな彼女の個別ルートの前半は、人形劇に取り組んでいく姿に注目。実はその人形劇が後々活きてくるとは思わなかったのですが。そもそも夢や眠りを題材にしているのが作品としての傾向ですが、紬の場合に焦点になるのは予知夢。これがとても意味深なアシストになっており、やっとというべきか、上2人のルートでは直接は出てこなかった"天使"の影が見えてきます。結論として、個別ルートだから当然ですが、紬と添い遂げるエンディングになり、結愛は消えてしまいます。このルートをプレイすることにより、なんとなくの予想は立ちましたが、あくまでも結愛ルートとその先へと続くトリガーとも感じられました。紬ルート単体では完結はしないので、純粋に紬といちゃこらしたかっただけに、複雑な気持ちになるルートでした。

結愛のことは個別ルートとTRUEルートの2つで語られます。個別ルートでは、結愛が何故館に閉じこもり気質になっているか、学園に通っていないかを中心に、彼女にまつわる欠けたピースが埋まっていきます。元々主人公をはじめ、各ヒロインたちとの交流を持ちはじめたからか、外に出る行為のハードルが下がっているのが、深層に踏み込むきっかけになっており、いい展開のさせ方だなと思いました。主人公のなかば強引な"おっせかい"が、正直どうかなと思いましたが、停滞している部分を打開させ、結愛を学園に通わせるうえでの障害を取り払うには、この強引さが必要だっただろうと推察します。これ以外に大きく物語が動くことはなく、あくまでも結愛の過去を示した上で、疑問を抱かせながらTRUEへ繋げるための中継点なのでしょうね。

結愛ルートを引き継ぐ形のTRUEルート。天使の眠りによって世界が保たれていたというのは、おとぎ話ではなく事実だったこと、夢に夢を重ねた場所から"現実"に戻ることが真相として語られていきます。最後の日までのモラトリアムがわかってはいても、寂寥感というか虚無感というか、そういったものを感じさせてエンディングに向かっているんだなと思わせるのが上手いなと。最後までメインヒロインは結愛なのですが、TRUEになっても、夢の世界でも現実に戻っても各ヒロインやサブキャラクターたちとの繋がりや少なからず取り上げる部分があり、とても丁寧に感じます。TRUEがきちんとTRUEの機能を果たしているので作品の全体像がハッキリしていいのですが、強いて言うならば、主人公が消えてしまうように見えて、最終的には綺麗なエンディングというのが、そのワンクッションは要らない方が好きでしたね。何にせよ、ここ数作の中では、間違いなく、よく構成されたシナリオに思いました。

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