morufaさんの「アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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トム氏らしいよく練られた世界観は相変わらず素晴らしかったが、伏線の未回収や説得力不足などがチラホラ
■作品傾向タグ■


学生主人公・学園・寮・ファンタジー(タイムリープ)


■作品構成■


物語中盤までは選択肢はあるがほぼ一本道、その後は順番にヒロインとの関係を受け入れるか
物語を継続させるかを選ぶフラグ折型で進行していく形となる

大まかな内容としては、クローズドサークルな世界の中で引き起こされる狂気に対し、
主人公とヒロイン達があらゆる手を尽くして対抗していき、主人公が掲げる

「誰も犠牲者を出さずに事件を終結させる」

という目標に向けて頑張る姿が描かれる、という具合で物語りは進行していく


■作品内容評価(良かった点)■


トム氏らしい世界観の構築と風呂敷の広げるスピード、伏線のばら撒き方と撒いた後の隠し方など、
QUINCE SOFT発の『もののあはれは彩の頃。』でも見られた物語の展開技術は今作でも
圧巻の一言では済ませないほど、高次元な仕上がりに収まっていた

特に序盤の「クローズドサークル」「現代文明の常識が通用しない」「黒いサンタ」
「町中に現れる謎の壁画」など不穏なキーワードをじわじわと展開させていき、
場面場面でミスリードを引き起こさせるような描写を逐一入れていく流れは
トム氏お得意の手法ではあるが、それは今作でも非常に効果的に働いていたと感じた

設定単品だけとってみるとものによっては、「記憶喪失の主人公」や「ループ」といった
場合によっては毛嫌いされてしまいそうなジャンルのオンパレードではあったものの、
既視感を気にさせないようなシリアスとコメディの緩急の付け方も当代きっての技術力といえる
素晴らしい按配に仕上がっていた

特に1周目の事件の発生までに日常描写を多く展開したことで最初の事件発生時の
空気感をより高めることに成功していた点や、途中一度サクヤルートっぽく終わりそうな展開を
間に挟んだ点など、全体的に物語の雰囲気を一段階上へと引き上げる施策があちらこちらに
散りばめられており、気がつく気がつかないは別にして非常に没入感を得やすくしてくれていた点は
非常に評価が高い


■作品内容評価(悪かった点)■


総じて完成度が高いせいもあってか、幾つかの伏線回収不足が逆に目立つ結果となった

まず大本の設定として最後まで明かされなかった題材がいくつかあり

・能力付与に使われた林檎の正体
・ラジオパーソナリティー、リラの正体
・男三人で必死に盗んだ大量のラッパが犯人一人?によって奪還される違和感
・町を覆うオーロラは何の素材で出来ているのか
・物が直ぐ溶けるほどのオンネトーの強酸性の正体
・クリスマス当日にドラッグ服用者が現れる理由

と、ざっと思いつくだけでもコレだけ、明確な描写が無く終わってしまった設定が存在する

クリスマス当日にドラッグを服用した学生が現れるというのは、最後の審判を再現するに
あたっての「享楽に耽る人々」を再現したかったためという理由である程度納得は出来るし、
ラッパの件もこの件だけ大人の協力者が手伝ったといわれれば渋々納得は出来るが、
その他の、特に林檎に関係する設定が完全に謎なのが非常に気になる


またループ物につき物の「受け入れがたい悲劇を回避したい」という主人公の原動力となる
エピソードとして、アポカリプスの惨劇具合がイマイチ伝わってこず、どうも必死さが伝わって
こなかった点は気になった

ただコレに関しては読者目線だからこそ感じる不満感で、我々読者の目にはユネの能力の代償による
弱体化は目に見えているが故ということもあって、こういったユネの身の回りの、言ってしまえば
"必死に頑張っているヒロインに比べて"という部分の主人公の必死さの描写の欠如は寧ろ
当たり前だと言え、その点については私も不満は一切ない

では何が問題であったのかといわれると、それは事件の描写を

「重要施設の爆破だけ」

という点でまとめてしまい、それ以上に事件現場の凄惨さを描写しなかった点にあるといえる
一応最初の事件発生時にクリスマスツリーの近くで体が燃えている人にバケツで
水をかけてあげたりという描写があったが、詳しい描写はそれっきりで叫び声や悲鳴も上がらず、
被害者達の必死さが情景として全く浮かんでこない描写展開は流石に不味かったと感じる


■総評■


本来であれば割りと気になって仕方がないと思ってしまう回収し忘れの伏線が多かったが、
全体的な完成度の高さと没入感や読後感の良さでいい具合に相殺された一作だったように思う

実際に読んでいる最中は、ここでは書いてはいないがいろいろなことを想起させてくれる
刺激的なセンテンスフローで、何気ない描写でも一々考えさせられて全く飽きが来ないで最後まで
読了できたのは久々な体験であったように思う

特に個人的にお気に入りの構成は、絵画に全く知識がない私のような人でも知っているピカソが
あの町では全く認知されていないという伏線を意外と重要な設定として最後まで引っ張り続けた点と
謎の壁画を初めて主人公が眼にしたときの描写で、後者の場面は久々に鳥肌が立ついい体験が
出来た

彩の頃の琥珀の目の色を使ったトリックの時もそうであったが、目の前で思いっきり、堂々と伏線と
ヒントをばら撒かれているのに正解に辿り着けなかった問題の答えが明かされる時の、あのなんとも
言えない体験を味わせてくれるので、トム氏の作品は個人的にかなり気に入っている

きゃべつそふとに関しては前作がわりとひどかったので完全にトム氏に助けてもらった形になるが、
今後このクオリティを維持できるのであれば是非とも応援していきたい

次回作も期待している

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