Ichijo@Landscapeさんの「アメイジング・グレイス -What color is your attribute?-」の感想

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**ネタバレ注意**

ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

「美術」「キリスト教」等非常によく調べて活かしている作品。取材量が凄まじく、本作でしか味わえないものがあると感じました
本ブランドの過去作は未プレイ。

本作ライター冬茜トムさんの作品は以下をプレイ済。
・もののあはれは彩の頃。

クリア順……はわざわざ言うほどの分岐もないですが、
キリエ編の前にサブ(リリィ先生とか)をやりました。

前作「もののあはれは彩の頃。」(さいころ)にも触れていますので、
本作及び前作未プレイの方は、本感想を読まずに戻ること推奨。


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全体的な良かったこと悪かったこと等としては、前作さいころとほぼ同じかなと。
取材量の面でかなり稀有なライターだという印象です。

本作の楽しみ方としては、
「超面白い!! 続き気になる」系と言うよりは(そういう方も多いみたいですが)
学園生活と終末の謎解きをまったり楽しむ感じなのかなと思います。

前作と比べると、前作の方が盛り上がりがあって好きですが、
本作の方がまとまっているのかなと思います。



◆シナリオ
良かった点、悪かった点、気になったことの順で書いていきます。
(上手くまとまらなかったので、「気になったこと」偏重です)
基本的に前作通りです。


<良かった点>
・凄まじい取材量・知識量と、それを以って構成される世界観が圧巻。
・伏線とミスリードと伏線回収が非常にシンプルかつ丁寧
 (「他にも伏線あったような……」といったもやもやした気持ちになりにくい)

この2点に尽きますね。
これに対するネガティブも以下で語っていきますが、
この2点をここまでしっかり書いてくれるライターもそういないでしょう。

ぶっちゃけ、ぼかぁ美術史にまったく興味がなく(暗記系苦手なのです)、
作中のアトリビュートとか絵画作品解釈(本ゲームへの暗喩)とか
全部左耳から右耳へ素通りしていったのですが……(おかげで全然考察できてない)

すなわち、私がその知識の是非を問うのにふさわしくない立場ではあるのですが、
きっちり調べてしっかり裏打ちされた設定を作ってくれている、
と感じて安心してプレイすることができました。

サブカルって、見せたいものがキャラだったりする影響で
雑な取材で作られてしまう作品多いですからね……


他に細かい良い点としては、
薬物に傾倒してしまう芸術家や「破壊の美学」について描写があった点ですね。

ミューズの正作用のミスリードのために語られた、
「薬物使用者の作品の素晴らしさ」。

創作やったことのある人なら一度は考えたことがあると思うのですが、
「もし今の自分が薬物を使ったら、一体どんな作品が創れるんだろう?」。

これを想像することは、決して否定されるべきではないと思うのです。
想像した上で「人として、今の自分で最高のものを創る」とすることが尊いと思うし、
「たとえ人として終わりを迎えようと、最高のものを創ることのみが至高だ」
という選択もまた美しいと考えるためです。

同様のニュアンスで考えたとき、
ギドウの「破壊の美学」は決して誤りでないし、
その美学をきっちり書いてくれた本作は価値があると思っています。

本作で「破壊の美学」側のギドウが敗れたのは、
それが借り物の美学であったこと、そしてそれを阻止しようとする者の方が強かった、
というただそれだけのことでしょう。
(「破壊の美学」が勝利する物語もまた、結構好みです)



<悪かった点>
・悪役がしょぼい
・盛り上がりに欠ける

悪役のしょぼさは前作でも指摘しましたが、今作でもそうでしたね。
というか、むしろ「完全な悪役を作らない」側へシフトした感じですかね。

ワタラセ氏死亡しちゃってるし、
ギドウは借り物の美学ありきの悪役ですし(「破壊の美学」を語るギドウ君は好きでした)
リリィ先生は普段のキャラは隙だらけだし悪役としての根深い思想を持っているわけでもなく。
もう少しえぐみのある悪役が欲しかったなぁという印象。
リラもアポカリプスについては観測者でしかないしね(だからたちが悪いとも言う)。


さらに言うなら、キリエ・コトハアフターで明らかになった
アポカリプスの影響度も残念。

街無事じゃねーか!!?? っていう。
えぇ……何のためにループしてたんだっけ……。
街を半端に破壊して、本当にギドウは満足できたんですかね?

以下でも書きますが、ヒロインルートが不要だったとさえ思っており、
ヒロインエンドは死亡エンド(一縷の希望は罠でしたエンド)を期待してました。
ループしない(=諦める)ということは、ハッピーエンドになっちゃ駄目でしょと。

人は死なない、街は破壊されない、
これのどこが破壊の美学やねん、もっと気張ってくれギドウ。



「・盛り上がりに欠ける」について
本作は脱落形式というか、一章一殺というか、
一本の木(トゥルー)に対し、枝(ヒロイン√)へ途中分岐する形式となっています。

しかし、ヒロイン√は実質シナリオがない。
トゥルーにイチャラブをくっつけただけで、独自の広がりがない。
イチャラブに価値を見出さない私としては、本当に何もないシナリオでした。
(まぁこれは自分の問題なんですが)

前作ではこの点特に問題を感じませんでした。
各ヒロイン編(第弐面)ではそれぞれの盛り上がりがあったためです。

ヒロイン√で謎解きが出せないなら、アクションや
ヒロイン√固有イベントでカバーして欲しかったです。

伝わるかどうかわかりませんが、昨今の劇場版名探偵コナンの逆張り的な感じですかね。
コナンでは、謎解きはほどほどに、アクションで盛り上がりを作っています(だよね?)。
ゲームで謎解きを先にやってしまうと面白くないので、
先出しの盛り上がり(ヒロイン√)はアクションで作って、
最後に(トゥルー)謎解きで締める、みたいな。

トゥルーと同じことやってヒロインとイチャラブして
今の自分に満足してハッピーエンドを迎えるって、甘すぎやしませんか。
ループをやめて諦めるなら、別の困難に打ち勝ってハッピーエンドを迎えてほしかったです。
それがないなら諦めた代償としてバッド(orメリバ)あるのみですよ。
それさえないなら、ヒロイン√は不要だったと思います。


また、トゥルーの周回も緊張感がなく、
それぞれのキャラにスポットを当てるために、
各周回にイベント(伏線)を細切れにして配置している感があって、
薄味になっていてちょっと残念でした。



細かい悪い点を挙げると、
世界観構成が非常に細やかで圧倒されますが、
部分的に後付けが弱いところが散見されます。

というか、よくできているからこそ「ここ惜しいな」という点も目立っているかなと。
まぁ悪いというほどでないかもしれません。



<気になる点>
以下、気になる点について。
ただの雑記です。


<気になる点:物語の構成について>
序盤で予想していた点としては以下。
(チラ裏な内容ですが残しておきたいので許して)
・サクヤが記憶を保持していること(青りんごを食べていること)
 まぁこれは誰でもわかりますね。
・サクヤのパートナーはギドウ
 チェスの相手をしていたという下りから、根拠なく予想。ワタラセ氏じゃひねりがないし。
 シュウがパートナー説も考えてたけど、青リンゴ食べているのに記憶保持できていないので排除。
 (後々、ミューズで記憶保持の前提が崩れるけども)
・シュウのループの外側を回るループがある
 じゃないと冒頭の「頭の中に響く声」が説明できない。
 2つのループのトリガーが同時に引かれるとは予想してなかったけど……。
・シュウのループではアポカリプスを止められない、外側のループで止める
・その後亜空間のユネを助ける
 (シュウループ→アポカリプス回避可能ループ→ユネ救助の三層構造を期待していた)

細部に根拠がなかったり間違っていたりはあるものの、
概ね予想の範疇だったので意外性には欠けていたというのが実感です。



<気になる点:リラの正体について>
キリエの名前を出している以上、
商店街の怪しい店の店主で間違いないでしょう。

ただ、「みんなも顔を知っている」というのは、
「商店街で見たことがある」というよりは
「『時を巡るアンナ』で見たことがある」(授業で見るから)ということかと。

「(血縁関係のため)若い頃はシスターリリィと瓜二つだったため、
リリィを見たことがある人はリラの姿を知っているとも解釈できる」と予想できますが、
上記明確に語られているわけではないので、これは穿ちすぎかな。



<気になる点:ご都合主義について>
終盤の黄金のリンゴなど、いわゆるご都合主義的な展開が見られましたが、
個人的にはあまり気にならなかったです。

本作は「ハッピーエンドを迎えるための(主人公の意図した)ループもの」であるわけで
この構造が明らかになった時点で、デウスエクスマキナでハッピーエンドになる、
と明示されているにも等しいと考えるからです。

まして、タイトルが「アメイジング・グレイス」なので、
ご都合主義であるべき作品、と言えるでしょう。



<気になる点:壁画について>
無文字社会のトリックは、本作で一番驚き、ぞくっときたシーンでした。
この手のトンデモトリックはベタというか王道ではありますが、
本作ライターはこれを扱うのが本当に上手い。
ハト時計等、物語上の価値がわからないガジェットは出てきましたが、
まさかこれのための伏線だったとは……。

ピカソの泣く女とかで完全にミスリードされていました。

ただひとつ重大かつ残念な点としては、
トンデモトリックの動機が不十分に感じた点です。
トンデモトリックにはトンデモな動機があってほしいのですよね。

本作ではトリックを用意した人(街管理者たち)と
トリックを活用した人(リンカ)が異なります。

トリックの活用とは、メッセージが読める人の選別及び誘導です。
しかし、トリックを用意した動機は当然この選別等ではありません。
芸術家たちの表現手段を制限することで、彼らの能力を伸ばすためです。
つまりこのトリックがリンカに上手く利用された形になりますが、
トリックの動機がちょっとこじつけっぽいというか、
「言われてみればそうかも」という風にしか感じられませんでした。

もっとキチガイっぽい理由でも良かったんじゃないかなぁと思いました。



◆キャラ
ギドウとキリエが好きでした。

ギドウは物語のあのポジションにありながら裏表がなく、
キリエはあのノリでありながら裏表豊富という。

また、正直ユネは好きになれませんでした。
前作みさきもそうですが、胡散臭すぎて……。
ユネ隊長とか、ほのぼの全振りシナリオなら割と好きだったかも。

サクヤもあまり……。
薬漬けにしたり酔っぱらって甘えてきたり、
美少女だから許されてるだけでしょ? みたいな気持ちが湧いてしまう。
うぅ、すまない、石を投げないで……。

コトハは相談相手として安心感ありまくりだけど、キャラとして好きかと言われると……。

ところでリンカは、
外でシュウとそれなりに良い関係(恋愛感情はどうでもいいけど)にあったり、
トゥルーエンド後にギドウとくっついたりすると、嬉しい。
友達以上の男の相棒?パートナー?がいてほしい。
できれば肉体関(ここでメモは途切れている)



◆キャスト
キリエ役の桜田紅さんが一番良かった。
エロゲ的なかわいらしい声かどうかは私にはわかりませんが、
汚い演技含む演技の幅が広く、空気感を作るのも上手かった印象。
ユネ・サクヤアフターのPR動画撮影中のノリノリ具合も非常に良かった。
ソフ特典のドラマCDでも妙な(褒め言葉です)演技してて面白かったです。
今後にも期待です。

あとどうでもいいですけど、
撮影中のユネの棒演技も結構好きでした。

対して、リリィ先生役の桜上水琥珀さんはかなり厳しい。
途中で慣れたしこのキャラはこうでなくっちゃという気持ちになりはしましたが、
演技も滑舌もかなり悪い。
エロゲ業界とはいえ声優過多なこのご時世に、どこから連れてきたんだこの人……。

全体的な印象としては、リリィ除きいい感じの演技でした。
ただ、エロシーンを軽く聞いた感じエロゲは未経験なのかな?とか、
全体的に経験浅めなのかな?とかは思いました。

結果、ウサさんが引っ張る感じのキャスティングなのかなという印象でした。
(と思ったら、エロゲ出てる人は割と出てる……のか?)



◆絵
キャラ萌えゲーの類だし、立ち絵はまぁこんなもんかなと思ってましたが、
一枚絵がとにかくひどい。

キャラを可愛く見せようとしているためか変な構図の絵ばかりで、
なんのための一枚絵なのか、状況、そもそもこの絵誰だっけ(はんこ絵特有のやつ)etc
あまり伝わってこないものばかりでした。

そもそも立ち絵で代用できたようなものも多かった印象です。


ついでに文句を言うと、
ユネのクピド?の絵はなんなんですかね、あれ。
緊張感の欠片もないというか、
アポカリプス回避したくてやってるはずなのに何舐め腐ったことしてるの?っていう。

もしあれが赤りんごの強制イベントだとしたら、
シュウやギドウもやってるわけですよ。
普段のギドウなら確かにやりそうだけど、計画失敗後のギドウですからね。
血涙流さんばかりの心境のギドウがクピドコスやってたら、くそシュールですよ。
さすがシュールレアリスムの体現者!
(あれ? 何が言いたいんだったっけ)


あと、本当に凄くどうでも良いことなのだけど、
女性原画家だと、男性原画家の描く絵に比べて、
乳首が身体の中央に寄りがちなような気がしなくもない。



◆音楽
全体的に作品の雰囲気に合っていて良かった
……とは思うものの、「キャンバスをぶち破れ」の音がしょぼかったせいで、
全体的にチープだったような気がしてきた。

いやいや、そのほかの曲はいい感じですよ?



◆システム
テキスト色が白だと読みづら過ぎたので、黒色にしてプレイしてました。
変更できる機能があった、と見るなら高機能かもしれませんが、
どちらかというとデフォルト色を見やすいものにしてほしかったような。
あるいはメッセージウィンドウの色を変えさせてほしかったような。
まぁ他に文句言っている人があまりいなかったので、
世間には受け入れられているのかもしれませんけど。

それ以外は特に問題なし。



◆総評
あれこれ言いましたが、完成度や面白さは非常に高い作品かと思います。

冬茜トムさん企画作品で秋→冬ときたので、次は春かな? などと妄想しつつ、
次回作を期待しています。


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◆余談1
この町にふるさと納税する方法を教えてください。
(現実の足寄町は、野菜などが返礼品になるみたいです)

◆余談2
以前旅行で本作の舞台に行ったことある(らしき)ことが、
ゲームプレイ後に発覚しました。
オンネトー、見覚えがあるようなないような……うーん、うーん。

◆余談3
無文字社会のトリックとかが琴線に触れた人は、
綾辻行人の館シリーズ(「時計館の殺人」とか)を読むと良いかと(ミステリ小説ですが)。
できれば館シリーズの頭から読んでほしい気持ちはありますが(一部登場人物が共通)
基本的に単発の物語なので、シリーズ途中から読んでもOKです。

◆余談4
あれだけネタにしておいてリリィ先生のエロシーン無いのには笑いましたw
おうおう、新人声優かなんか知らんけど、
ハードなエロシーンぶっこんでエロゲ声優として成長させてやれよ(最低かよ)



 

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