比翼れんりさんの「言の葉舞い散る夏の風鈴」の感想

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私にもいつかできるかな 願いをこめたエチュード 耳を澄まして
シルキーズプラスDOLCEのデビュー作となった「景の海のアペイリア」に続く新作です。シナリオは前作同様、範乃秋晴さん。前作の非日常ものとはベクトルが違うものの、ヒロインたちとひとつの目標に向かうという大まかな格子は引き継がれているのかなと思います。(あと攻める下ネタも) どちらというと同ライターさんの「あの晴れわたる空より高く」に雰囲気としては近く、ロケットを声優劇に置き換えた、王道部活青春ものという印象を受けました。

導入からストーリーはシンプルで、表舞台から一歩引いたプロ声優詞葉と出会い、そこから声優に憧れる仰子やゆう、自分の出来ることを見つけた奏と共にひとつのゴールである声優グランプリを目指す、というわかりやすい流れですね。声優グランプリの課題である3つの台本に従って、各々が主役を務めることになり、個別ルートとして詞葉以外の3人にそれぞれ分岐する至って簡単な展開です。

仰子はあまりないタイプのくすはらゆいさんで新鮮でしたが、常識のないお嬢様キャラが基本的に受け付けないので、いくらか強キャラといっても、正ヒロインとしては厳しかったですね。ゆうと同じく素人寄りの演技をする当初の彼女ですが、そもそもの芝居がかった言動が、表現にストッパーをかけているのかなと思いました。そこに通りががりの声優のアドバイスや幼なじみのアシストがあって、良さが引き出されるようになる本番に繋がりました。気になるのはやはり終盤、二転三転する場面転換。詞葉のアクシデント(?)は詞葉らしいといえばらしいので、誰も突っ込みが入っていないのかなと理解しますが、どうしても引っ掛かるのは真子。すべてを悟っているようなピンチヒッターから仰子の演技を引き出した流れがあまりにも淀みなさすぎて逆に不自然さがあります。エピローグで真子が登場しないのも疑問。

ゆうは棒読みもいいところの素人でしたが、だんだん成長していく部分が見られ、見ていて楽しいヒロインです。遥そらさんらしく、アホっぽいけど真面目さを備えたキャラクターに対する声のあて方も上手くハマっていたように感じます。ゆうはエッチなことが好きだけど、そこに素直になれない時に出会った"裏名義こころん"のとおかげで、声優に憧れを持つというのが、彼女らしい特長でしょうか。エロゲで「声優もの」をやるにあたって、逆手にとるような話の繋ぎ方で、これはおもしろいなと思いました。前述のとおり、主人公との恋も通して成長が見られるのはルートとして良かったのですが、緊張で演技がままらない時の「切っ掛け」が"裏名義こころん"のまま変わらず本番を迎えたのはちょっと一辺倒にも感じました。最終的には詞葉のアシストで乗り切るわけですが、ゆうが目指す"その先"はどうなったのか、がエピローグでは捉えきれず、FDを前提にしているのかなと見えてしまい、そこは残念。

奏は上の2人と違って、素人ながら声優への適正があって、要は挫折する要素がないヒロイン。年下というのもあって控えめながら、主人公たちと日常を楽しんでいく姿は癒しを与えるようでした。わりとカメレオンな秋野花さんを起用したのもおもしろく、様々なタイプこなすあたりも声優ゲーらしくいいですね。個別ルートの映画を見終わったあとのやり取りなんかは笑いました。ストーリーとして、順調に課題台本をこなしていきますが、最後の場面で詞葉と意見がぶつかります。普段はおとなしい奏がここまで自分を曲げないとは。足が生まれつき不自由な彼女と課題の中の彼女とがリンクしてくわけで、これは他のルートよりも読み手を引き込むシナリオでした。詞葉との激突ののち、詞葉の想いを汲みながらも大会当日朝でも決着つかず、ぶっつけ本番なるわけですが、そこからのオチまでがちょっと物足りないかなと思いました。感覚的な部分かもしれませんが、持つ少し外堀を埋めながらエンディングにじわじわ近づいていくとおもしろかったなと思います。ただ、このルートで思わず泣いたくらいに良かったシーンは、エンディング後の奏のモノローグ。実際には踏み出せないかもしれないけれど、確かに「夢への一歩」を踏み出したと言えるもので、このダメ押しもあって、奏ルートについては、上の2ルートとは大きく水をあける印象を受けました。

詞葉ルートは、3人のルート攻略後に解放され、それぞれの課題シナリオを完遂した以降の時点から始まります。各ルートで疑問に思っていた部分が、詞葉ルートでほぼ解消されたので、伏線の張り方としては上手くいったのかなと思います。終章のストーリーは、声優部の活動を通して、詞葉がプロへの復帰を目指す、というもので、わかってはいたけれど上手く繋がっている展開です。ルート全体の印象は良く、満足したシナリオでありますが、これは詞葉の行動力のせいかもしれませんが、いくらか強引に物事が進んでいるようにも見え、当初他の声優部員が置き去りにされているのが残念。演劇部も途中から消えているし。しかしながら、オーディションに駆け付けるなど、詞葉の与えた影響はやっぱり大きかったわけで、そこから「夏の卒業式」に繋がっていくところが泣きの頂上でしたね。"声優"がどこまで"演劇"に入ってくるのかは難しいなと思いますが、ラストの「夏の卒業式」は泣かせに来ている製作者の意図が感じ取れました。エンディング後のその先まで描かれなかったのも、「サクラ」とリンクする部分があり、未来は読者に託されたのかな、とも思います。

同様に「サクラ」の台本と重なっていたのは、エンディング曲でしょうね。他の3人はインストで流れ、詞葉だけがボーカルがあります。歌詞がまるっきり台本と同じで、非常に仕込みを感じます。まさに詞葉のための歌であるのかなと。余韻を作る意味でもいい演出だったように感じました。オープニングを含めて薬師るりさんの詞曲がバチっとハマった感じです。

絵も良かったですね。ひなたもも先生の単独原画は初めて?というくらいですが、作品の雰囲気に合ったキャラデザで、一枚絵も崩れることなく、集合絵が特にバランス良くいいですね。

コンプ後の感想としては、前作アペイリアよりは好きだったお話です。このライターさんの青春ものは好きだなと再び思いました。「はれたか」のようなシリアスっぽさや爆発力はないものの、落ち着いた世界観もこれはこれでいいですね。

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