nezumoさんの「金色ラブリッチェ」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

これ以降の文章にはゲームの内容に関する重要な情報が書かれています。まだゲームをクリアしていない人がみるとゲームの面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。

妃玲奈との距離感について
ゴールデンタイムこと理亜√は文句なしに好きだし、シルヴィ√の追加エピローグとextraの演出も本当に好き。
ただこれらはメッセージ的にも余韻としても非常に完成されているので、最高である以外の言葉が出ない。
ということで、一番好きな個別√かつ距離感の移り変わりが面白いなと思った玲奈√について掘り下げていきたい。

玲奈√の要点は、初めて身体を重ねるシーンがお香の力によってもたらされたものであり、
なおかつその後の央路の告白に対して良い返事を返さず引き延ばしているということ。
そして付き合い始めた後でも付き合い方ややっていることが大して変わらないということ。
これは央路と玲奈が今まで良い友達関係として、それ以上のことはあまりよく考えていなかったことの裏付けであり、
同時にこれから先付き合い始めてもお互いに対する認識がそれほど変化しないことを意味しているように思う。

ちなみに玲奈√を3つに分けるとして、2人の関係を友達か恋人か、そしてバランスがとれているかどうかで表現してみると、

①お香の力で身体を重ねるまでの関係(友達→友達以上恋人未満 バランス→アンバランス)
②告白してから付き合い始めるまでの関係(友達以上恋人未満 アンバランス→バランス)
③付き合い始めてから(友達であり恋人 バランス)

この微妙で絶妙な変化が丁寧に描かれているのが玲奈√が大好きな理由だ。


良い友達関係とはどういうものかと言えば、隣にいても気を遣わない、パーソナルスペースを殆ど気にしなくて済むような関係。
しかし恋愛とちょっと違うのは、相手のことを必要以上に気にかけたり、先のことなど考えないで好き勝手なことができる点。
恋愛になれば必要以上に気を遣ってしまうのはあるだろうし、もし結婚を視野に入れたお付き合いをするならば、
嫌われないようにと努力したり、相手が望んでいないようなことまで悩みとして抱え込んでしまったり、
友達として付き合うのとはまた違った、新しい心理的な壁が立ちはだかってくるように思う。

勿論恋愛することは悪いことではないのだが、ずっと友達と認識して付き合ってきた人間が自分に恋愛感情を抱いていると言われると、
今までの自分たちではいられなくなっちゃうだろうなとか、恋愛の悪いところばっか気にしてしまって、普段通りに気楽に付き合える関係ではなくなってしまう。
結果的にそれが杞憂に終わったとして、恋愛を経験せず今まで過ごしてきた玲奈のような人間には、余計にそれを強く感じるだけの理由が付きまとってくる。
誰とでも仲良くできる人間だからこそ、意外とこういうところに疎い。

友達以上恋人未満という、一番気を遣わない(気を遣わせない)理想の関係を大切にしたい。
玲奈にとっても央路にとってもそれは同じであり、好きは好きでも友達として、という関係だからこそ気楽に付き合っていけるわけで。
そこに2人が付き合っているという事実が積み重なってしまったら、たとえ意識せずともそれが重圧としてのしかかってくることを気にしているように見受けられた。
ただ玲奈の側も膝枕しながら央路を泣かせるみたいな、明らかに付き合ってんじゃねこいつらって思わせるようなことを平気でやってのけてしまうという、
本気で恋愛ってものをしたことがない弊害というか、健全男子を勘違いさせるだけの十分な何かがあったことは事実だが。


仲が良く最高の友達としての関係をぶち壊す出来事が、身体が熱くほてってくると噂のお香が部屋に充満する事件である。
これは既成事実を作ってしまうためのイベントなんだろうなと自分は認識しているが、
それが結果的に友達発恋愛行きの最高の始まりになっているというのだから面白い。
絢華とも似たようなことをしておきながら恋愛に発展しない事実が、今までの積み重ねの有無という意味でも対比的に表現されている。
作中の言い方を借りると、友達以上恋人未満として釣り合いが取れていたバランスがここで恋愛に傾き始めた、というのが正しいのだろうか。

友達という関係はそれ以上でもそれ以下でもないし、それは恋愛も同じ。
しかし友達以上恋人未満という本人たちも自覚していなかったであろう特殊な関係は、些細な出来事でどちらにも転ぶことができる。
おそらく身体を重ねるまでは、少なくとも玲奈に関しては央路と付き合う未来など想像もできなかったことだろう。
(誰とでも仲良くできる生き方と合わせて央路は友達という認識が強く、恋愛行きの想定がなかったため)

もっとも央路の方は玲奈の膝の上で泣いたあたりから玲奈のことが好きだったらしいが、
関係が崩れるのを恐れて一歩が踏み出せなかったことを考えると結局は玲奈と同様である。
自分としてはこのイベントがなければ2人は付き合い始めなかったと思うし、
自分たちの距離感についてよく考えるようなきっかけも得られなかったんじゃないかと思う。


ここからまた実際に付き合い始めるまでにひと悶着あるわけで。
妊娠してたら付き合ってパパになるだとか、本当に妊娠してないかどうか実は結構気にしてたりとか、
そういう中途半端な関係にお互いにモヤモヤしつつも、どこか楽しんでいるような感じ。

ただ恋愛に到達してないってことはお互いにしっかり線引きしてるみたいで、
例えばフェラは良くても実際に身体を重ねるのはダメだとか、キスまでは許されるだとか。
このあたりは恋愛関係と友達関係を両方ともお試し感覚でやりながら、2人の関係の落ち着き所を探っているような印象を受けた。
上手く保たれていたはずのバランスがあやふやな今だから、バランスを取るためにどうすればいいかというのを真剣に考える大切な機会になっている。

まあこういうところにいかにも特殊な距離感を持った2人の恋愛の形という独自性が出ていて、
付き合うか付き合わないかという白か黒かの判断をせずに、グレーの色をどんどん白に近づけていくような恋愛を展開しているのは流石である。
こういう手探りしつつ悩み抜いて決める恋愛こそ、友達として一定以上心が通じ合った2人でしか成し得ないやり方だろうし。
言い方を変えると、今までの友達関係と身体の繋がりを、この先の理想的な関係作りに上手く昇華できるか、ってところだろうか。


晴れて付き合い始めたとして、2人の関係は大して変わることはない。
心の距離は身体を重ねる前と比較しても、実は微妙に近づいただけだったりするんだと思う。
そもそもお香事件の時から2人でバランスの取り方を試行錯誤してきたし、勿論友達関係としても十分に時間を積み重ねてきている。
確かに恋愛はしてるけど、恋愛しているという感覚が特別あるわけでもない。
そういう自然な距離感に自分の恋人がいるということを、友達の延長線上としての恋人という関係に2人は落ち着いた。
これでも適当に恋愛しているわけではないし、すぐに別れるというわけでもない。
そこが2人でしっかり考えて結論を出した先にあるこの恋愛のポイントでもある。
今まで積み重ねてきた友達としての関係、これから積み重ねていく恋人としての関係、そこが上手に混ざっていて、なおかつバランスが取れている。

玲奈「でも初めての共同作業が大掃除かよ~」
央路「そう言われると微妙だが」
央路「俺たちらしくない?」
玲奈「かーもね」

この一連のやり取りが特に好き。
2人の自然な関係が表現されているのは勿論、普通に考えたら恋人の部屋に入るのもひとつのイベントとしてカウントしてもいいとは思うのだが、
既に部屋に入り浸って当たり前という認識が浸透しているから、こんなことがサラッと言えてしまう。

考えていたほど現実は変わらなかった。
恋愛感情が芽生えてしまうと何かが変わってしまうと危惧していたのは2人ともだが、結局そんなものはなくなってしまうくらい2人は仲が良かったのだと思う。
結局は2人とも気楽にいられる相方と一緒にいたいだけなのだから、恋人になって変わったことは正式に身体を重ねるようになったことくらいか。
「カッコいいところを見せてほしい」なんて玲奈は言ってたが、これも後付けの理由に過ぎないのだろう。
央路が今までカッコよく金色に生きようとしてきた人間だということを玲奈はよく分かっているだろうし、
そもそも全くカッコよくなかったからって、2人の関係が途切れてしまうわけではない。
生きてる間に一度はカッコいいところを見せるという約束をしただけで、カッコいいところを見せなければ別れるというわけではないのだから。


隣にいて支えてくるのが当たり前だけど、時々隣にいてくれることに感謝してしまうような関係。
当たり前の幸せに感謝するっていうのとはちょっと違うかもしれないけど、それだけ相手が自分の人生の一部のように捉えていて、
それでいてお互いに相手のことをキッチリ分かっているから、変なところでかち合うこともない。
あくまでも気楽に隣に置いておくことができて、それでいて何故か自然と心の拠り所になっているような状態。

理亜は中庸な人間になるのはそれはそれで難しいと表現していたが、確かにここまでバランスの取れた距離感が築かれることはそうそうないと思う。
(少し意味合いが違うかもしれないが)
恋愛を恋愛だと気張らないような絶妙な距離感が、見ているこっちも幸せになるし、羨ましくもなる。

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