エストさんの「消えた世界と月と少女」の感想

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ゲームをクリアした人むけのレビューです。

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伝奇×ホラー×SF×サスペンス。あとはちょっとミステリも。短めのボリュームながらプロットや世界観、伏線の作り込み、種明かしの意外性の演出には気が遣われており、ライトな伝奇モノを楽しむには良い作品かもしれません。しかし短いボリュームに余りに壮大な設定群を詰め込んだせいで風呂敷の拡げ方とたたみ方は結構雑な印象を受けました。時間をかけて見せ方を変えればまた違ったのでしょうが、正直なんか話が薄っぺらくなっちゃった感が強かったです。設定と世界観はすごく良く出来ていたので惜しい気持ちになる一作でした。

杏子→美衣奈→つばめ→瑠衣→TRUEにて攻略。

あらすじとOPムービーを視聴して即決で予約を入れた本作。とにかく販促が上手くて伝奇感モリモリのあらすじと雰囲気にワクワクさせられ期待に震えると同時に、シナリオ重視タイプのブランドとしてはあまり実績もなくライターさんも非公表、さらに延期と地雷を踏みぬく覚悟もしながらの購入でした。傑作か地雷のどっちかだろうなと予測していたところ、蓋を開けてみればまぁ無難に面白かったです。(メーカーさんには失礼な感想ですが)
バラまいた伏線も一応綺麗に回収しましたし、結末も予想だにしない壮大な仕掛けだったので答え合わせ部分は楽しめました。難題編に突入してからは不満点も多かったのですが、仕掛けのインパクトが予想外に強く、終わってみれば悪くない作品であったかなと。以下ネタバレ多めかつ不満点多めではありますがツラツラと感想を…

〇あまりに壮大過ぎた設定群
・最初にプレイした杏子√で特に強く感じたのですが、言葉だけであまりに壮大な設定を語りだすので現実感に乏しく物語に入り込みにくいなと感じました。「宇宙空間を漂い星に災厄を振りまく「セレネ」の被害を防ぐため、君たちには生贄になってもらわなくてはならないのだ!」→「な、なんだってー!」みたいな感じで頭に入ってこず設定が薄っぺらく感じられます。後半になればセレネが生まれた理由とか背景設定が出てくるので違和感は薄れるのですが、超常を扱う伝奇系で話だけで進めるのは正直キツイかなと。理詰めの仮説や実際に現象で前振りを作ったりすればもっと読みやすかったように思えます。(その点共通の瑠衣が語る竹取物語の仮説らへんは見せ方も上手くスッと設定が頭に入ってきました。)

・続いてキャラの扱い方。公式サイトで30人以上のキャラ達の人物相関図が作られていたりと、ちょっとミステリ方面での期待も寄せていたのですが、実際にメインで動くキャラは10人ちょいで他のキャラは登場回数1回もザラという状態に。キャラ設定を壮大に作り込むのは良いのですが処理しきれなかったのかなぁという印象が強かったです。久美ちゃんとかいかにも重要そうな雰囲気を醸し出して話に絡まないキャラもいましたし。
メインヒロインの描き方に関しても個別√が設定ありきの展開なので掘り下げが物足りないかなと。最後まで読むと設定上仕方ないのは分かるのですが、個別が恋人展開→死亡のワンパターンでボリュームも少ないためキャラの内面があんまり分からなかったです。特に杏子√の兄妹関係とかつばめ√の姉妹関係に関しては一切の前振りなく和解するので「ふーん」って感じですし、その後無慈悲にお涙頂戴展開的に死亡するのが分かりきってしまっているのもあって物語が薄っぺらかったかなと。実はクローン妹にすぎない杏子を白八が庇うシーンとか熱い展開は結構あるのに凄いサラッと終わって「兄さんとの絆は本物だ!」みたいになるので勿体ないなぁと思うシーンが多かったです。(というか個別のボリューム少なすぎたかなと)

・最後に伏線や設定の整合性面。サラッと読んだ感じではありますが、これだけ規模のデカい仕掛けを仕込みながら設定の整合性に致命的な矛盾は生じていなかったと思います。細かな伏線含め結構な数の伏線がありましたが上手く処理できており素直に凄いなと感じました。唯一気になったのは杏子√ラストでカグヤが山小屋で死亡していたというシーン、誠司とカグヤの認識がズレているという伏線の必要性がイマイチ分かりませんし未処理な気がしますがまぁ細かい事はいいやということで。概ね良好だったと思います。
しかしここでもボリュームの少なさ故か曖昧にボカシてぶん投げられた設定がそれなりにあったのも事実で、瑠衣が月面に迷い込んだ理由とかアキラナオキが反乱した理由とか、帝があっさり寝返った理由とか描写が足りないところも多かったかなという印象です。特に帝関連の話とかは滅茶苦茶重要だと思うのですが、今までオリジナルの友達ズ虐殺しておいて最終√だけあっさり「内心では最初から息子の味方をしてもよかった」みたいな見せ方は反則じゃないかなと。何を考えてるのかサッパリ分かりませんでした。

〇無理やりハッピーエンド
残る不満点というか、賛否別れそうな点はやはり終わり方でしょう。まず未来√ですがこっちは正直言って展開が何でもありの状態になってしまっていたのであまり語ることも…。何故か裏切る十二単に弱すぎる五伴緒、月面王にアッサリなっちゃう主人公…。
タイトル的にもTRUEは過去√なのでしょうが、こちらも私はあまり好きにはなれませんでした。本作の一番の見どころはループに見せかけた時間構造と、過疎った田舎に見せかけた場面トリックにあると思うのですが、インパクトが強い設定な反面もはやハッピーエンドの余地がない絶望的な設定でもあると思うんですよね。実は助けようとした対象がとっくの昔に死んでるんですからハッピーエンドにはどう足掻いても辿り着けません。となるとここから説得的にハッピーエンドを描くのは至難の技となるわけですが、時間遡行はあらかじめ伏線もあったのでまだ良いですがカグヤ復活はやりすぎたかなと。ビターエンドぐらいが丁度良いように思いました。

〇総評
不満点も多かったのは確かですが、それでも本作のメイントリックの壮大さは一見の価値ありだと思いますし、描写が所々足りてないのは事実ですが逆を言えばスマートな構造で読みやすい作品だったと思います。ライトな伝奇モノとしては十分及第点をあげられるクオリティだったんじゃないかなと。ブランド単位としては久しぶりの作品発表だったようですが、今となっては真面目に伝奇モノを作るブランドさんもかなり減ってしまってますし、今後も同路線での作品発表を期待して終わりたいと思います。

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